25
ルウィーシアが目を覚ましたのは、揺れる船の中だった。
そこは行きにロザリアが寝かされていた場所だった。ルウィーシアは静かに涙を流した。
今ならしっかりと思い出せる。
あの日、ロザリアを突き飛ばし、死に追いやったのは確かに自分だった。そして、ベネットはそれを庇って、ロザリアを海に流したのだとわかった。今まで記憶がなかったのが嘘のように鮮明に思い出せてしまった。
今思えば、ベネットは共犯として、ロザリアがいなくなって以来、何かと近くにいたのだろう。あの葬儀での涙の意味もわかった。彼は一人で多くの悔いと罪を抱えていた。それは褒められることではないが、少なくともルウィーシアは希望をなくすことなく、『日常』を過ごせていた。
だからといって、何の救いにもならなかった。
ひたすら、旅を後悔していた。記憶のないまま、ロザリアの帰還を夢見ていた頃が懐かしい。ベネットの呪縛の中にいた方がまだ幸せだったのかもしれない。
無味乾燥とした旅の終わりに、自分の愚かさを呪う以外なかった。
「……気分は?」
近くにはエンデがいた。彼女は心配そうにルウィーシアを見ていた。ルウィーシアはその問いには答えず、力なく呟いた。
「……私はどうしたら良かったの?」
「そんなの私にはわからないよ。お前のことをすべて知っているわけじゃないし、『もし』の話は誰にもわからない」
エンデはルウィーシアの髪を撫でて言った。
「だから自分で考えて選択するんだよ」
「そうね。私はしていなかったわ」
ルウィーシアにとって選択肢は多くなかった。
いつも逃げ場を絶たれて、いくら考えても選ばなくてはならない選択肢は決まっていた気がしていた。でも今思うと、そんなことはなかった。きっともっと早くベネットの呪縛から抜け出す方法もあったのだ。
「でもルウィーシアはそれが出来ないわけじゃない。私が知っている、お前は自分で考えて行動出来る人だよ」
エンデはそう言う。ルウィーシアは涙目をエンデに向けた。エンデに自分の罪を打ち明けたかった。
「……エンデ、私、親友を殺していたわ」
「……そうか」
「ベネットのことも、もっと前に彼女か他の人に助けを求めるべきだったし、いくらでも拒否は出来たことを、今更気付いたわ」
その涙はもしかしたら自己憐憫もあったかも知れないが、少なくともルウィーシアは自分の行いのせいで亡くなったロザリアを想った。
ロザリアが好きだった。笑顔が好きだった。からかったときにむくれた顔が好きだった。悔し泣きをしている顔が好きだった。可愛さを使って同年代の男をだまくらかしているときはとても愛らしかったし、それをうち明かすときの悪戯な笑みも好きだった。なによりその目が好きだった。どんな時でも真っ直ぐな目が。
その目に向かって、空しい懺悔を言う。
「私のせいでロザリアは死んでしまったのね」
「……」
それに頷けるほど、エンデは事情を知らなかった。
ルウィーシアは続ける。
「私はどうすればいいかしら。どうしたいのかしら」
「みんなそれを悩み生きているんだ、ルウィーシア」
必死の質問に対する答えはそれだけだった。




