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その日、ルウィーシアの家にベネットはやってきた。
仕事で三日かけて隣島まで行っていることになっていたが、本当は一日早く戻ってきていた。戻ってこっそりと、いつものようにルウィーシアの元へやってきた。
拒否させぬように幾ばくかの金――ベネットにとってははした金だが――を持って、その一夜はルウィーシアの家で明かすつもりだった。ルウィーシアは嫌々ながらも逆らうことが出来なかった。
事はいつも二階の、今は亡き父と母の寝室で行われていた。母親が健在だった時から同じ場所だった。その部屋は西側の庭と梯子で繋がっており、夜、誰にも目撃されずに部屋に行きたい時は、そこから登っていくのが常だった。その日もいつものように梯子を登り、彼は秘め事に浸ろうとしていた。
その日、ロザリアはそれを目撃してしまった。
一体いつから見られていたのかわからないが、言い逃れの出来ない場面で、ロザリアは二階の吐き出し窓から部屋に入ってきた。
「どういうことよ!」
ルウィーシアの頭は真っ白になった。ベネットも同じだったようで、何か言い訳をしようとしたが、狼狽してまともな言葉にならなかった。
詰め寄るロザリアにベネットは少しでも落ち着かせようと声をかけるが、彼女はどんどん激昂していく。何も言わないルウィーシアにものすごい剣幕で怒鳴った。
「何が親友よ! 汚らわしい! あんたなんて本当に最低よ! 気持ち悪い!」
それは当然の言葉であったが、ルウィーシアには受け入れられる言葉ではなかった。
ロザリアを悲しませない為だったのに、貴女の為を思って、今まで苦痛にも恥辱にもただひたすら黙って耐え続けていたというのに。全てはロザリアの為だったのに。
膨れ上がった憎しみを止めることは出来なかった。これまでの苦しみを更に詰られたようで、胸の内が黒に染まっていくようだった。
気付けばロザリアを突き飛ばしていた。不意のことにロザリアは避けることも声を上げることも出来なかった。入ってきたままで開け放たれていた掃き出し戸から彼女は落ちていった。
我に返ったルウィーシアとベネットは庭を覗いた。
そこにはぐったりとして動かないロザリアの姿があった。
ルウィーシアが叫びそうになったのを押さえたのは、ベネットだった。彼は頭から血を流して動かないロザリアとルウィーシアを見比べた。そして、崩れ落ちるルウィーシアを抱きしめて、必死に言い聞かせた。
「違うぞ、ルウィーシア。ロザリアは旅に出たんだ。君は何も知らない。ロザリアは旅に出たんだ」




