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続いて、ロザリアを寝かせようとした。最後の最後まで、ルウィーシアは泣いてしがみついた。
「ねぇ、本当は生きているかも知れない。お願い、ヴィント、ロザリアの中にいていいから、彼女として生きて」
しかし、願いも空しく、ポートマンはぴくりとも動かなかった。
「どうしてよ! 会えるって言ったじゃない! 何もないじゃない! 何が宝島よ!」
ルウィーシアはここまで来てしまったことを嘆いた。
島を出れば、宝島に行けば、もしかしたらロザリアと合流して、ロナよりも楽しい日々が待っていて、自分を悩ませる苦痛から解放されるのだと信じていた。それだと言うのに、ロザリアとの再会は悲劇で、島で待っていたのは二度目の別離だった。
穴に寝かされる美しいロザリアの姿に胸が引き裂かれそうだった。
「好きよ。好きなの、ロザリア。お願い、目を開けて。あなたが好きだったのよ」
ルウィーシアは墓の外からロザリアの手を握って、頬にすり付けて泣いた。
そのときだった。
蝋人形のように冷たく動かなかった手がぎこちなく動き――、
ルウィーシアの顔を力強く掴んだ。
爪痕が残る程の力で掴まれるも、ルウィーシアには何が起こったか理解出来なかった。
それは見ているエンデと船長も同じだった。太陽が出てきたというのに、辺りは急に寒くなっていくようだった。
ロザリアの上体が起こされた。それの動きは緩慢で、手同様にぎこちなかったが、ロザリアの身体は確かに動いていた。
「ヴィント、なのか……?」
エンデが聞くが、ロザリアはそちらには目もくれず、掴んでいるルウィーシアをものすごい形相で睨み据えていた。燃えるような強い視線がルウィーシアを突き刺す。エンデはこれはヴィントではないと本能的に察した。
ロザリアの口が開いた。
「よくもそんなことを言えたわね……」
「な、に……」
「あなたが私を殺したんじゃない……父とあなたが、私を見捨てて、殺したんじゃない……」
ルウィーシアは息を飲んだ。
「あんたなんか親友なものか……! この……裏切り者!」
その言葉はルウィーシアの身体にぶつかり、胸に深く突き刺さった。ルウィーシアの顔を掴んでいた手がだらんと落ちて、離れていった。それ以上、ロザリアが動くことはなかった。
呆然とする三人を朝日が照らした。島はやはり静かだった。耳が痛くなるほどの静寂に、先ほどの女の声は幻聴のようにも思えた。
しかし、確かにルウィーシアの頬には血が滲むほどの爪痕が残され、綺麗に寝かせていたはずのロザリアの手と身体は中途半端に墓穴から出ていた。全てが白日の下に晒されたのであった。
ルウィーシアは絶叫した。
ルウィーシアはすべてを思い出した。




