20
同じような豪華な寝台に寝かされているロザリアはまるで寝ているだけのようにしか、ルウィーシアには見えなかった。
しかし、触れるその肌は冷たく、血の気が感じられなかった。吐息も鼓動も感じられず、人形のようだった。ルウィーシアはそれを何度も確かめて、その横で泣いて、一夜を過ごした。
翌朝、エンデが様子を見に行けば、泣いてすがりついていた昨夜の最後に比べると幾分か落ち着き、椅子に座ってじっとロザリアを見ていた。
「寝ているだけみたいよね。でも何度も確かめたわ。彼女は死んでいるのね」
淡々と事実を述べるルウィーシアの横顔はひどく憔悴していた。
「ポートマンもそうだったのね?」
「ああ」
「中身が、エンデの、……流された親友?」
「そうだ」
「出来すぎね」
「そうだな」
「貴女の親友は生きていたのね」
「いや、死んでいたさ」
ルウィーシアはエンデを見た。エンデは窓から外を眺めていた。口は真一文字になり、表情は険しかった。
「あいつは確かにヴィントさ。でもヴィントっていうのは、あの身体とあの魂でヴィントなんだ。だから、私の知っているヴィントは死んでしまったんだと思う」
「今のヴィントは嫌いなの?」
「いいや。なんだかんだ、やっぱりヴィントだからな。好きだよ。いいやつさ。昔に比べ良い性格になっていたけど」
「でも、違うのね」
「ああ。でもそれでもいいよ。親友をなくしたお前にこういうのはひどいかもしれないけど」
「本当に。不公平だわ」
ルウィーシアは思ったまま言った。思った事を言えるのはエンデが初めてだった。ロザリアにもすべて思ったまま言えなかった。エンデは最初からルウィーシアの汚れを知っている。隠すことは何もなかった。涙が出てきた。
エンデはルウィーシアに近付き、背中を撫でた。
「しばらくここで休もう。どのみち出港は二ヶ月後だ。心の整理が終わって、ちょうど良い頃に冒険を再開しよう」
「……あの島に行けば、ロザリアに会えるの?」
「かも知れない。まだわからない。そもそも行けるかわからない。それでも行くか?」
「行くわ……だってそれしかないもの」
「……そうか」
窓からは柔らかい風が吹いていた。
二ヶ月の間、三人は様々な話をした。
主にエンデとヴィントによるレアンの話だったが、ヴィントはロナの事もよく知っているようで、ルウィーシアとヴィントでロナの話をすることがあった。様々な土地の話がされる度に、エンデは「行きたくなる」と言い、ヴィントとルウィーシアに止められた。
ポートマン邸にいる間、ヴィントは主にポートマンの肉体を使っていた。主であり、王城を含めたあらゆる機関に呼ばれることが多かったのもあるが、ルウィーシアを気遣っているのもあった。しかし、定期的にロザリアを動かしてはいた。ルウィーシアはそれを嫌がった。ヴィントはロザリアの肉体を使うことを申し訳なさそうにした。
「そうじゃないと、この子の身体が朽ちてしまうし、島に行く為にロザリアとしての立場も必要なんだ」
ルウィーシアは決して穏やかになることはなかったが、それでも少しずつ落ち着きを取り戻していった。




