私とあの人の勝負
何度も涙を流した。
何度もあの時のことを後悔した。
だけど時間は戻らない。
一方通行でしか流れない。
私は、あの人を過去に置き去りにして、未来へ進むしかできない。
そんなの嫌だと言って、待ち構えているものすべてを投げ出せたら、どれほど楽だろう。
けれど、それはできない。
私には託された物があり。
願われた事がある。
それを果たすまでは、あなたの元にはいけない。
でもそれを果たせたら。
これは私とあの人の勝負。
決して交わらない平行線上の物語。
互いに想いあっているのに、だからこそ平行線しか歩けなかった二人の物語。
最後の時、あの人は私に「生きて」と言った。
そして自分の代わりに「使命を果たして」とも、言った。
私はそれに首を振った。
だって、あの人と一緒に、終わりたかったから。
あの人がいない人生に続きなんてない。
だから、いつまでも、死の国までも一緒にいたかった。
けれど、あの人は「生きて」と続けた。
私に生き続けてほしいから。
私の事を愛してるから。
生きてさえいれば、私を生につなぎとめてくれる何かが、誰かが現れるかもしれないから。
そんな物ないよ。
そんな人いないよ。
私はあの人の事しか考えない。
あの人と一緒にいる事しか考えられない。
心変わりなんてしない。
あの人がいない未来を生きていくつもりはない。
けれど、あの人はただ笑って悲しそうにするだけ。
なら、勝負をしよう。
このまま共に死んでも私の愛の強さは証明できない。
ならあの人の願いを叶えて、その上であの人と共にいる事を選ぶ。
これは私とあの人の、平行線上の勝負。
互いに譲れない想いをかけた。
互いを想い続ける、愛の物語。
私は託された使命を果たすために、未来を駆け抜ける。
この道の先が、あの人に続いていると信じて。