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フィクション 沖縄戦  作者: 冬乃 兎
1/6

1944年

ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶 が公開されます

本来は昨年の公開予定の本作は様々な障害を負い公開が危ぶまれていましたがいよいよ8月25日新宿Ksシネマ公開を皮切りに全国ロードショー

みんなに観て貰いたい、考えてもらいたい、今一度真剣に向き合ってもらいたい

執念のメガホンは何を伝えたかったのか

https://okinawasen.com/

幸運にも事前に作品を観る事が出来たわたしには感謝しか有りません

  全身に巡る倦怠感、そして関節に鈍痛が走る

 強い草と土の臭い、手を伸ばすと指先と手のひらに、きめの細かい土の感触

 意識がはっきりしない

 『頭を打ったのか?』

 身体をよじり仰向けに体位を変えた瞬間、頭上から強い日差しが眼球を刺した

 焦げた空気が火薬の臭いを運んできて咳き込んでしまい慌てて上半身を起こす

 拳を作り開く

 足を動かしてみた

 『ダメージはなさそうだ』

 唐突に悲鳴にも似た女性の叫びが鼓膜を揺さぶった

 「先生!助けて!この娘を助けて!」

 若い娘を膝の上に抱え込んで女性が叫んでいる

 少し目が慣れてきてはいたが状態はここでは判らない

 起き上がり母娘の方へ駆け寄る

 少女の右胸に金属の破片が突き刺さっている

 おそらく動脈を傷つけているはずだ

 慌てて抜いていたら出血死していただろう

 「第三外科壕はすぐそこじゃ、わしらが運ぶ。先生は先に準備しておいてくれや」

 どこから来たのか気がつかなかったが、布団を積んだ荷車を老人たちが押していく

 俺は彼らが目指す方向へ走り出していた


 第三外科壕へはついたが医薬品などと言える代物は殆ど無かった

 わずかなモルヒネと大量の焼酎が薬品棚と思われる棚に並んでいる

 『ヤバいパーティー会場かよ』

 ここにはマスクすら見当たらない

 少女が運ばれてきた

 「皆さんは外に出ていて下さい。お母さん、娘さんはお預かりします」

 他の人達には処置室から出てもらって少女の状態を確認する

 止血をしてから破片を取り除かなければならない

 普通ならこんな外科的処置はお手の物ではあるのだが、いかんせん機材が全くない

 縫合する針も普通の縫い針くらいしか見当たらない

 『こんな糸で大丈夫なのだろうか?』

 困惑するばかりだ

 負傷箇所を一通り確認した後、手が止まった

 『COVID19に感染しているよな…おれ…このまま治療していて良いのか?』

 よぎった不安を首を横に振り打ち消した

 『今、助けないとコロナどころの話じゃ無いだろ!バカ!』 

 自分自身に檄を飛ばし処置にかかった


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