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第23話:結界術

 トッシュ=ヴァートは息せき切らせて走った。

 夢中で走ったため、どこへ向かっているのか、方角が定かではない。やたらと森が続く。そして、後ろのアルバートも、苦しそうに息を荒げて、必死で追いかけている。彼には聞きたい事は山ほどある。

 前を走る覆面の男にしても何者なのかは分からない。だが、窮地に追い込まれたヴァートは、とにかく信じてついて行くしかなかった。


「追手は来ているか?」


 覆面男が、振り返った。幸い、追ってくる者の影はない。それを認めると、ようやく男は足を緩め始めた。ヴァートも、アルバートもそれに従う。静かな森の中には、男三人の、荒々しい息だけが聞こえる。


「お前は、誰だ」


 ヴァートは、苦しい息を飲み込み、どうにかそう言った。どうやら助けてくれた、という事は分かったが、事情が理解できない。まさか父トルード=ヴァートを殺した犯人の一味とも思われない。

 男は、覆面を外した。若い男である。


「オレの名は、ヒュー=パイク。冒険者だ」


「冒険者!?」


 ヒューは頷くと、逆にヴァートに聞き返した。


「で、あんた達は?」


 誰だかわからずに助けたのか、と意外に思いつつも、どう答えたものかヴァートは考えた。とりあえず、嘘をつくと、ヒューと名乗る男の心象を悪くする、と思い、ヴァートは当たり障りのない答えを探した。


「我々二人は、王国の関係者だ」


「それは、まあ、見れば分かるがな」


 何か事情があるのだろう、と察したのか、ヒューはそれ以上詮索しなかった。今度はヴァートが、質問をした。


「なぜあの場所にいた。あの場所は冒険者がうろつくような所ではあるまい」


「元宰相トルード=ヴァートって人が今どこにいるかを調べる、という仕事を請けてな。まあ、その依頼はちょっと前に終わらせたんだが、その時気になる事があったもんで、様子を見に行ったら、あの場面に出くわした」


 ヴァートはハッとした。その依頼は自分がフェスに頼んだものだ。フェスは冒険者を使ってトルードの居所を突き止めたに違いない。その冒険者がこのヒュー=パイクだったのだ。

 そうして話をしているうちに、ヒューの仲間の二人が追いついてきた。この二人は先程、屋敷に飛び込んで、室内で王国兵士と戦った者である。


「追ってくる奴らは大体やっつけてやった。ひとまず大丈夫だろう」


 二人はそう言って覆面を外した。少年と言っていいほどの見た目である彼らに、ヴァートは驚いた。剣には疎いヴァートであるが、一瞬にして兵士を叩きのめした彼らの腕前は、凄まじいものだった。冒険者とはそこまで強いのか、とヴァートは改めて目を見張る。


「とりあえず、オレの家へ行こう。せまっ苦しい所だが、兵士の追手は来ないはずだ」


 そう言うヒューの声に同意した一向は、再び移動した。




「オレはククリ。そっちの無愛想なのがグレイ。よろしくな」


 城下の繁華街からかなり外れた郊外。そこにヒュー=パイクの粗末な家がある。

 その家の中で、グレイは後悔していた。何の気なしに手を貸したヒューの気まぐれのために、とんでもない荷物を抱え込んでしまった。

 ククリが呑気に自己紹介をしている相手。

 長い黒髪の男は、身なりからして間違いなく王国の貴族。そして横の金髪の男も、貴族の男が下にも置かない対応をしている事から、只者ではない事が分かる。貴族よりも上の位だとすれば、あとは王族くらいか。


――相手が誰だか分かっているのか?


 グレイはそう、ククリに言ってやりたい。まあ、言ったとしても、ククリの事だから、気にも留めないだろうが。


「まずは、助けて貰った事に感謝する」


 ヴァートと名乗る黒髪の男が、そう言って頭を下げた。言葉ほど尊大な印象は受けない。アルバートと言う隣の金髪も、一緒に礼をした。こちらも、仕草に気品を感じる。グレイは何となく女王キュビィを思い出した。

 そんな中、ヒューの妹サテュアが緊張しながらも、珍客に茶を出している。緊張具合からして、彼女は二人が相当な身分である事に気付いていると見える。

 そんな妹を尻目に、ヒューは、あの屋敷に居合わせた経緯を二人に話はじめた。


 ヒュー=パイクの説明を整理するとこうである。

 パンダールの酒場で、トルードという人物を探し出す仕事を引き受けたヒューは、街で、甲高い声で話す男を見た。その声は、南の砦へ向かう途中、ちょっとした諍いを起こした相手の声に良く似ていた。その時受けた恨みを晴らしてやろう、と、その男の後を追跡した所、偶然にもトルードの家を見つける事が出来たのだと言う。

 酒場の仕事はそこで完了させたものの、どうしても甲高い声の男の事が腹に据えかねて、グレイとククリを伴って再びトルード邸へと足を運んだ所、ヴァートに出くわした。


「あんたが屋敷に入っていく所は見てたからな。中をのぞいたら、必死でおっさんを抱き起こしてるじゃねえか。これは、犯人はあんたじゃない、と思ったね」


 だから見るに見かねて、その後に殺到した兵士たちから、救い出したと、ヒューは結んだ。

 だが、グレイは知っている。ヒューが行動を起こしたのは、義侠心からではなく、身なりのいいヴァートから金の匂いを嗅ぎ取ったからである。助ければ、相応の報酬があるのではないか、というのが、ヴァートを助け出した本当の理由だった。調子のいいヒューに、思わず込み上げる笑いをグレイは堪える。

 話を聞いて、ヴァートは黙っている。何か、ぐるぐると思いを巡らせているようだ。そして、ややあってから、口を開いた。


「念のために聞くが、お前たちが犯人……という訳ではない、な?」


 ヴァートの言葉に、ヒューは、そんな訳無いだろう、と語気を強めた。普通に考えれば、犯人がヴァートを救い出す理由が無い。それに対し、なだめるような口調で、ヴァートは弁明する。


「気を悪くしたら、すまない。実は、私は王城で大臣をしている。そしてこの方は、女王陛下の兄君なのだ。慎重になる事情もわかって欲しい」


 え!? という声が小さな家に響いた。

 おおよそ見当をつけていたグレイは別段驚かない。が、女王の兄がここに居る、という事実に、グレイは不思議と胸が高揚するのを感じていた。もっと言うなら、大荷物を背負い込んでしまった後悔の念など、どこかに吹き飛んでいた。


「でもよ、そこの王子様、甲高い声の奴にそっくりだぜ?」


 ヒューがアルバートを指差している。それならば、なぜ恨みを抱いている者に加勢したのかグレイには疑問であったが、きっと恨みよりも、金の魅力が勝ったのだろう、と解釈した。

 ヒューの疑問に対し、アルバートがかぶりを振って答えた。


「それは、マスター・ウォルサールでしょう。彼が私に化けているんです。ウォルサールは変装を得意としていますから」


 これには、横のヴァートが驚いた。

 

「マスター・ウォルサールは生きているんですか?」


 アルバートは頷いた。

 その辺りの事情を知らないグレイには、何の話だか分からない。とりあえず、ヒューが目の敵にしている相手が、ここにいるアルバートという金髪の男でない事は分かった。

 キョトンとするグレイたちを尻目に、ヴァートの表情が次第に険しくなっていく。ふと、何かを思いついたかのような表情をすると、


「すまないが、もう少し、君らの力を貸してほしい」


 と言って、グレイたちに細かい指示を出した。


「分かった。任せてくれ」


 女王の兄を助ける。他の二人は知らないが、それだけでグレイが動く理由は充分であった。




 冒険者の三人が、家を飛び出していった後、ヒューの家に残ったのはヴァートとアルバート、それからヒューの妹だけである。少し居心地を悪くしている様子のヒューの妹に申し訳なさを感じながらも、ヴァートは目の前のアルバートに確かめておかなくてはならない事があった。


「さて、殿下。マスター・ウォルサールは、二十年前の旧都落城の際、取り残された殿下を助け出し、ジラーフィンへ逃れた。そうですね?」


 アルバートはコクンと頷いた。どうやら謁見の間でウォルサールが話した内容というのは、ある程度事実に即しているようだ。

ヴァートは質問を続けた。


「マスター・ウォルサールに育てられたあなたは、ジラーフィンを出て、ここの王都へ向かった。もちろん、ウォルサールに連れられて」


「マスターから聞いたんですね。……その通りです」


 そこから、アルバートはこれまでの事を話し始めた。


 長らく暮らしてきたジラーフィンの地であるが、アルバートが成長し、長旅に耐えられる、と判断したマスター・ウォルサールは、辺境王都へ行く事に決めた。そして、長い旅路の果てにたどり着いた王都。マスター・ウォルサールはかつての知己だというトルード=ヴァートをたずねた。


「いきなり城へ行っても、信用してもらえないと考えた私達は、トルード殿の元に身を寄せました。でも、その時ちょうど、父上が退位したところだったんです」


 アルバートの言う父とは、言うまでも無く先王レクスの事である。そして、レクス王の退位は、すなわちキュビィの即位を意味する。さらには、トルードは宰相の座を降り、代わりにレイモンドが宰相になった時でもある。

 そんな折にアルバートが名乗り出れば、王国が混乱する、と見たトルードは、アルバートの存在を隠すことにした。彼としては、王国の基盤が固まってから、アルバートの存在を明らかにするつもりだったのだろう。


「私もそれに異存はありませんでした。やっぱり王国の安定が優先ですからね。……でもあの人は……」


 しかし、それに異を唱えたのは、ウォルサールであった。

 アルバート王子を今すぐ王室に戻すよう、常にトルードに迫るようになった。トルードとウォルサールは主従の関係にあっただけに、はじめはトルードも押さえ込んでいたのだが、次第に歯止めが利かなくなっていった。


「マスターは、姿を私そっくりに変えて、南の砦へ攻め込む軍に勝手に加わりました。おそらく、そこで武功を立てて、私を売り込もうとしたのでしょう」


 だが、それは上手くは行かなかったらしい。

 最後の手段として、ウォルサールが選んだ方法。それは、アルバートに扮して、強引に王城へ押しかけ、女王の兄の存在を明らかにする事であった。


「だからわざわざ、あんな無謀な真似を……」


 ヴァートは小さくため息をついた。


「トルード殿を殺めたのも、マスターの手によるものでしょう。私はすぐに地下に隠されたので、直接誰がやったのかまではわかりません……」


 アルバートの顔が悲しみに歪む。

 ヴァートには、大体の実像が掴めてきた。だが、一つだけ、父トルードに関しては、少々ヴァートの見解は違う。


――父は、私を宰相にするべくアルバート殿下を利用しようとしたに違いない。


 だからこそ、ヴァートが宰相代理となった今、その必要が無くなり、アルバートを表舞台に出す事を渋ったのだろう。それがウォルサールの怒りを買い、凶行に走らせた原因の一つではないか。父はそういう人だ。

 そして、そう考えれば、トルードが死の直前に言った言葉にも合点がいく。


「私が間違っていた……か」


 小さくヴァートはつぶやく。最期に、トルードは何を思ったのだろうか。息子に対する懺悔の気持ちだろうか。それともアルバートを利用しようとした事への後悔だろうか。

 ヴァートは父を愛してはいないが、それでもその最期を哀れに思った。宰相という重職にあって長年王国のために働いてきた父。その最期がああいう形では、あまりにも悲惨である。


 そして、父を殺したマスター・ウォルサール。

 無謀とも思える方法でアルバートの存在を知らしめ、今また、主であったはずのトルードを手にかけた。そこまでウォルサールを駆り立てるものとは一体なんだったのだろう。それに、ウォルサールはずっと監禁状態であったはずである。にもかかわらず、トルードを殺す事ができた、という事は、どういう事なのか。


――城に、協力者がいるな


 直接手を下したのは、恐らく屋敷にいた兵士たちであろう。誰かは分からないが、彼らに命令を下した人物がいるはずである。兵士に命を出せるといえば、軍務大臣グゼット=オーアが思い浮かぶが、彼に限ってそんな事は絶対にありえない。大方、監禁中のウォルサールが、監視している兵士に甘言を用いて引き込んだ。そんな所だろう。

 それとは別に、ヴァートには新たに疑問が浮かんでいた。

 謁見の間での証言と、今アルバートから聞いた話から考えると、二人は、ジラーフィンから現王都まで、ほぼ最短距離といっていい道程でたどり着いている。

 なぜ、旧王都の人々が、この王都へ逃れている、という事が分かったのか。隔絶されたジラーフィンに、そんな情報がもたらされるはずは無い。

 謁見の間では気付かなかった疑問が、ヴァートはどうしても気になった。

 

「マスターには確信がありました。なぜなら、魔物が追ってこないのは、この王都をおいて他にないからです」


「その理由は?」


「それはマスターの扱う術にあります。あれは『結界術』というものです。外の世界と、内の世界を分ける術。その術が、この王都には施されているのです」


――結界術?


 あの人の動きを封じる術。

 ヴァートは信じられない物を見るような目で、アルバートを見た。金髪の青年は緑色の瞳を、まっすぐヴァートに向けている。嘘や冗談を言っている目ではない。


「人に使えば、動きを封じる事ができますが、本来は、世界を隔てるための術なのです。この王都は、魔物を寄せ付けない、強力な結界が張ってあります。それをマスターは知っていた」


「まさか、二十年来、この王都に魔王軍が攻めてこない理由というのは……」


「結界の力です。目の大きな網のようなもので、小さな魔物は通してしまいますが、強大な魔、というのはこの王都に入って来られないのです」


「なんと……」


 ヴァートは雷に打たれたような衝撃を感じた。

 二十年間、大規模な魔王軍の侵攻に晒されていない王都。その最大の謎の真相に、今ヴァートは触れている。身体の奥から震えのようなものが走った。


「マスターが言うには、城や街、すべてが結界の役割を果たしているそうです。この王都は巨大な結界発生装置なのだと」


 それが事実だとすれば、とてつもない発見である。もし、この大陸のすみずみまで結界を張り巡らせば、魔物を追い出すことも不可能ではないのではないか。

 ふと、ヴァートは謁見の間でウォルサールが言っていた言葉を思い出した。


「もしや、殿下はその結界術とやらを、ウォルサールから学んでいるのではないですか?」


 王子に成りすましたウォルサールは、ヴァートの『術はマスター・ウォルサールから教わったか』という質問に、そうだ、と答えていた。ウォルサールの話が一定の事実を含んでいるなら、目の前のアルバートが結界術を習得している事も考えられる。

 ヴァートは喉を鳴らして唾を飲み込み、アルバートの答えを待った。アルバートは真意を測りかねたか、少し戸惑ったような表情をしている。


「……はい。マスターの使う術は、すべて扱えますが」


 ヴァートは目を見開いた。


「ならば、この王都のような巨大な結界も作り出せますか?」


「それは……、原理を理解しているので、可能は可能です。でも、街一つを作り出すくらいの大規模な話になりますが……」


「よし!」


 ヴァートは拳を握りしめ、沸き起こる歓喜に思わず声を上げた。

 王の力を持ってすれば、街一つ作り出すことも不可能ではない。何より、王都を除く大陸の都市は、魔物の侵攻で廃墟と化しているはずであり、今後王国が再び版図を広げる上で、都市の再建は絶対に必要になってくる。つまりは巨大な結界を作り出す機会は、これからいくらでもあるはずだ。

 王兄アルバートの存在がとてつもなく重要になった。魔王から大陸を奪還するのに、彼の知識は無くてはならないものになるだろう。


「殿下には必ず国政に参加していただきます。そのためには、ウォルサールの害を除かねばなりません」


 ウォルサールが父を殺したのは、アルバートの存在を隠した事に対する憤りだけではない、とヴァートは見ている。わざわざ姿をアルバートに変え、事の次第を知るトルードを殺した。恐らく、一緒にアルバートも殺そうとしたに違いない。だからこそトルードは貯蔵室にアルバートを隠したのではないか。


――ウォルサールは、自ら王座に就こうとしている

 

 そう考えざるを得ない。

 ヴァートの見解に、アルバートはガタガタと震えだした。


「なんという恐ろしい事でしょう……。と言う事は、妹の身が危ないのではないですか?」


 アルバートの顔は、恐怖に怯えている。

 彼の性質は、気の強いキュビィとは似ていない。どちらかと言えば、優しかった母キャスリーンに似ているであろうか。ヴァートは頭の端でそんな事を思った。

 

「恐らく、我が父トルード殺しの罪を、息子である私になすりつけようというのもウォルサールの陰謀でしょう。兵士が私を捕縛できなかったと奴が知ったら、すぐに陛下を亡きものにしようとするかも知れません……、が既に手は打ちました」


 ヴァートはウォルサールへの対抗策を、既に冒険者三人に伝えていた。彼らはきっと上手くやるであろう。後は、頃合を見計らって城へ出向けばいい。

 そう説明し、ヴァートは心細そうな王子をなだめる。


「あ、あの……お茶のおかわりは如何ですか?」


 深刻な話し合いをする二人に割って入り、ヒューの妹、サテュアはおずおずとそう聞いた。二人の木彫りの杯は既に空であった。


「ああ。頂くとしよう」


 とぽとぽと注がれる茶。その匂いが改めて、ヴァートの鼻をくすぐる。サテュアを見れば、粗末な身なりをしてはいるが、なかなかに愛らしい顔立ちをしている。あまりヒューには似ていない。

 再び茶をすすると、ヴァートはもちろん、不安げだったアルバートの表情も幾分和らいだように感じられる。このタイミングで茶を勧めたのは、サテュアなりの心づかいだったのだろうか。


「サテュア……と言ったな。悪いが、もうしばらくこの家にかくまってもらう。宵には出て行くから、それまでは世話になる」


 ヴァートは、極力穏やかな口調で言った。

 サテュアは戸惑いながらも、わずかに笑顔を見せた。


「では、その間にお召し物を洗いましょう。そのままでは外に出られないでしょうから」


 言われて、ヴァートは自分がトルードの血に染まっている事に気付いた。アルバートにしても、森の木にあちこちを引っ掛けたのか、服のあちこちが破れ、土埃に汚れている。


「いや、洗濯はいい。新しい服を買ってきてくれないか? 私と、殿下の分だ」


 そう言って、ヴァートはサテュアに金貨を渡した。町人の服を買うだけなら、充分すぎる程の金額である。

 サテュアは驚いて、手にある金貨とヴァートの顔を交互に見た。


「釣りは取っておいてくれ。ついでに、お前の服も買うといい」


「でも……」


 遠慮するサテュアを、ヴァートはやや強引に家から追い出した。

 やがて夕刻に帰ってきたサテュアから、妙にこざっぱりとした服を受け取ると、ヴァートとアルバートはそれに着替えた。

 なお、この時ヴァートは、着替えのために衣服を脱いだアルバートの背に、しっかりと傷跡がある事を確認し、ホッと安堵のため息をついたのであった。


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