第14話:砦の戦い
パンダール王国軍が、南の砦へ向け王都を出てから二日目。
全軍は再び南へと出発した。
そして、日が南に昇る頃には、峡谷に挟まれた砦が遠めに見えてきた。
南の砦の前は、開けた平野になっており、さらには、幅が狭いながらも、急流の川が流れ、砦への侵入を遮っている。せめてもの救いは、その川にボロボロだが辛うじて橋が架かっているという事だ。
「あの黒いのは何だ?」
先頭を進軍する第一部隊の兵から、口々に声が聞こえた。
兵たちが指差す川の手前の平野に、黒い塊が蠢いているのが見える。その蠢く様は、まるで菓子にたかるアリのようであった。
「うろたえるな。あれが砦を守る魔物であろう。報告によれば、狼の姿をした魔物だという」
第一部隊を率いるグゼット=オーアは、馬の歩を進めながら、自らの部隊にそう説明した。
先陣を切る第一部隊は、全軍の最初にあの魔物と戦う事になる。兵士たちの表情は、魔物の姿を見て、やや緊張の色を濃くしているかのようであった。
やがて、王国軍は魔物の群れに目前まで迫ったところで、進軍を止めた。
第一部隊は、すでに魔物との戦闘範囲に入っている。
黒い狼の群れは、ぐるぐると低い唸り声をあげて、オーアたちを睨み付けていた。
臨戦態勢である。
いよいよだ、とオーアは表情を引き締め、彼の率いる部隊へと向き直った。
「これより、我ら第一部隊200人は、魔物との緒戦に臨む! 魔王と戦うパンダール王国の命運は、この一戦で決まるという事を肝に銘じよ!」
おう! という勇ましい声がオーアに返る。オーアはニヤリと笑って、さらに声を張り上げた。
「それから、後軍には女王陛下も控えていらっしゃる! ここで手柄を立て、活躍が陛下の耳に入れば、褒美は思いのままだ! 戦って、生き残って、陛下にいいトコ見せようぜ!」
ワーッと、兵士達の、より一層の歓声が沸く。
俗な言い回しであるが、戦を目前にした兵士たちには、効果てき面である。固かった兵士たちの表情も、幾分和らぎ、程よく闘志がのっているように見える。何より、この遠征に女王が参戦しているのが大きい。オーアは上手くキュビィの名を使い、士気を高めたのだった。
戦闘準備は整った、と言わんばかりに、オーアは大槍を構え、馬上の体勢を低くした。
指揮官のその姿に、兵士たちに緊張が走る。生唾を飲み込む音が聞こえてきそうだ。
全軍のほぼ全員にとって、この戦いは初陣である。しん、と静まり返る。空気が張り詰め、緊張感が広がった。
オーアはすぅ、と息を吸い込むと、大声で叫ぶ。
「突撃だ! 我に続け!」
わあ、という兵士の声が平野に響き、堰を切ったように皆一斉に突撃を開始した。
馬に乗っているのは、オーアだけであるため、彼の麾下は全速力で走り、部隊の将を追う。
「おおりゃああ!」
オーアは単騎で敵の只中へ突っ込むと、得物の大槍で黒く巨大な狼を薙ぎ散らした。数頭の狼が宙に舞う。
そして、オーアの周りは、やられた狼の悲鳴と、これから襲いかかる狼の声の叫びとで、瞬く間に戦場にふさわしい舞台音楽に包まれた。
次々に飛びかかる黒狼。それを、当たるを幸いとばかりに大槍で叩き落していく。
「オーア様に続け!」
ようやく配下の兵士たちが追いつき、オーアの突入で穴になった所めがけて殺到する。あたかも、黒い塊に、楔が打ち込まれたかのような格好だ。
そして、オーアの兵らもまた、精鋭である。各々の得物で、散々に魔物を蹴散らす。
「進め! 足を止めるな! 突き破れ!」
オーアの怒号は、戦場の轟音にかき消されることもなく響いた。そうしながら、先頭に立って魔物の山へと斬り進んでいく。彼は生まれついての軍人であった。
そして、オーアの側に、もう一人、鬼神のごとき働きを見せるものがいた。
その男は並外れた巨躯の持ち主で、両手の巨大なオノを、まるで重さを感じさせないかのように、自在に振り回し、狼の骸を量産していった。
冒険者最強の剛の者と謳われるロック=パタである。
パタは顔色ひとつ変えず、あたかもそれが日常であるかのように、平然と敵を蹴散らしていく。
「やるではないか。お前、名は?」
次から次へと襲いかかる狼を切り伏せつつ、横目にオーアが問う。
「ロック=パタ」
パタは自らの指揮官に、二コリともせず答えた。
「始まったようですね」
交戦状態に入った第一部隊から、第二部隊を隔て、やや離れた所に位置する第三部隊。
宰相レイモンド=オルフェンは、傍らの女王キュビィ=パンダールに、そう声をかけた。
キュビィは、うむ、とだけ言って、金色の髪を風になびかせ、遠く土埃に煙る方を見ている。その横顔から、昨夜の弱気が嘘のような、毅然たる眼差しがうかがえる。
昨夜の落ち込んだ様子から、どうなる事かと思ったが、一夜明けたキュビィは元の女王の顔に戻っていた。身に着けている白銀の甲冑が、さらに彼女の印象を引き締めたものにしている。
だが、とレイモンドは思う。
おそらく、キュビィは無理をしている。女王としての責務を果たすため、13歳の少女は戦場の重圧に、必死で耐えているのだ。
ただでさえ色の白いキュビィは、その顔を今日は一段と白く透き通ったものにしていると、レイモンドには見えた。
「まずは作戦通り、オーア様が突入したようですね。後に続く兵たちも、健闘しています」
フラム=ボアンが、目を細めて遠くを見やっている。
「フラム、君には戦っている様子が見えるのか?」
レイモンドの目には、戦闘に入っている第一部隊は、点にしか見えない。ましてや、土埃がもうもうとしており、その僅かな点すら霞んでいる。
「ええ。私、目はいいんです。森で育ったからでしょうか」
フラムは少しはにかんだ様にそう答えた。
レイモンドは関心したようにフラムを見る。目はいい、というが、類まれな端整な顔立ちに、天才的な剣の腕。目『も』いい、と言うのが正確な所だろう。
「ともかく、まずは旗色良し、と言った所ですね」
レイモンドはそうまとめて、キュビィを見やる。
しかし、それを聞いても、キュビィの顔は変わらない。美しく潤む緑色の瞳は、まっすぐに死闘が行われているであろう場所を見つめていた。
しかし、第一部隊の快進撃も、長くは続かなかった。
もともと1000はいるであろう魔物の中へ200の兵で飛び込んだのである。どれだけ蹴散らしても、立て続けに襲いかかる魔物の攻勢に、次第に突入の勢いは衰えていった。
オーアは相変わらず、先陣から兵士を叱咤激励するも、兵士たちは一人、また一人と魔物の牙に倒れていった。
狼の壁へと楔のごとく打ち込まれた第一部隊。
突進力が弱まれば、両側からの挟撃にさらされ、じりじりと、徐々に錐のように先細っていく。
「まずいですね。……第一部隊は消耗し始めています」
後方の第三部隊で、フラムは不安そうに言った。
それを聞いたキュビィは、即座に決断する。
「レイ、第三部隊を前進させよ。第二部隊の横へ付け、いつでも第一部隊の援護に入れる距離まで近づくのだ」
レイモンドも賛成であった。キュビィへの危険は増すが、みすみすオーアを見殺しにする訳にはいかない。
(しかし……)
援護できる距離、と言うと、戦っている様子が目視できてしまう。恐らく、味方の兵が死傷する様まで、ハッキリと確認できてしまうだろう。
戦況を見るには良いが、そんな生々しい様子を、キュビィに見せても良いものだろうか……。
レイモンドはそう考えると、即断できなかった。
そんなレイモンドの迷いが顔に出ていたのだろう、鋭くキュビィの声が飛ぶ。
「愚か者! わらわの事を気にして、全軍を危険にさらす気か!」
その声に、レイモンドはハッとした。まるで横っ面を叩かれたかのような感覚である。
キュビィの顔は、真剣にレイモンドを見つめていた。悲痛なまでの決意が、その瞳に現れている。
レイモンドは、それでようやく腹を決めた。この少女の健気な気持ちを無にはできない。
(やれやれ、あなたには敵いません……)
レイモンドは心の中でつぶやくと、すぐさま部隊に指令を出す。
「第三部隊、前進!」
レイモンドの号令に、第三部隊は移動を開始した。
「おい、ジイさん! いつまで指くわえて見てんだよ! 第一部隊が全滅しちまうよ!」
一方、第二部隊。
皆が恐れるマスター・シバにそう食ってかかるのは、怖いもの知らずのグレイとククリであった。あまりに無礼な二人の物言いに、周りで見ている兵たちも気が気ではない。
第二部隊150人は、第一部隊のすぐ後方に控え、いまだ戦闘には参加していなかった。
「まだだ。第一部隊は必ず魔物の群れを突破して、砦への道を作る。ワシらは、そこへ一気になだれ込み、砦へ到達するのだ」
シバは、グレイとククリに気を悪くする風もなく、静かにそう言った。
「けどさあ……」
グレイからしてみれば、仲間が魔物にやられていくのを、ただ黙って見ている事など到底我慢できない。だが、指揮権は当然シバにある。シバが首を縦に振らない以上、部隊は動かない。
「言っておくが、早まった真似はするなよ。もし勝手な行動にでたら、ワシはお前たちを斬らねばならん」
グレイとククリが単独行動をしないよう、シバはそう言って釘を刺す。
穏やかな表情のシバだが、二人を見る眼光には、思わず息を呑む程の凄みがあった。
「わ、分かってるさ」
さすがのグレイも、百戦錬磨のシバに睨まれては、それ以上、食い下がる事もできず、口をつぐんだ。しかしその表情は相変わらず納得していない。
シバはそんなグレイを見て、フッと笑う。
「まあ、見ておれ。戦には、機というものがある。今ワシらが砦の前の魔物と戦ったら、必ず混戦になる。そうすれば、両部隊が消耗するのは必至。あくまでワシらの目的は砦を攻略する事にあるのだからな」
言われなくても、グレイはこの作戦を理解している。
だが、味方の奮戦を見るに付け、グレイはもどかしさに奥歯をギリギリと噛みしめるのだった。
戦闘開始からおよそ一時間。
第一部隊のオーアはまだ粘って前進を続けていた。
オーアの槍を持つ手は魔物の返り血で滑り、敵の牙や爪に幾度ともなく甲冑を貫かれ、あちこちから、鮮血が流れていた。さらに、馬は既に魔物の餌食となっており、自らの足で前へ前へと突き進んでいた。
連続する戦いに息は切れ、体中の筋肉の感覚が薄れてきている。だが、それでも前進を止めず、敵を切り伏せ、ひたすら砦を目指す。
「今こそ根性を見せろ! 陛下はお前たちに最高の褒美を約束してくれている! オレたち人間が、魔物なんかに屈服しないって事を見せ付けてやれ!」
生き残っている兵士たちも疲労困憊だが、オーアの声に、おお! と応える。いまだ士気は失われていない。
だが、200いた兵数は半分近くにまでなっていた。それでも、人間としての意地と、賞金と、女王から贈られるであろう栄誉が、彼らを支えていた。
そんな時、一際大きな影がオーアの眼前に現れた。
「人間風情が、大層な言い草だな」
「!?」
オーアは死地にありながら、驚きのあまり、思わず槍の構えを下げた。
目の前には、二本足で立ち、手には剣を握るおぞましい狼の姿があった。あまつさえ、人語を話している。
「言葉を……しゃべっている?」
「フフ、言葉を話す魔物は初めて見るか。おろかな人間め、細々と辺境で生きておれば良いものを。俺様が、皆殺しにしてくれるわ!」
狼男は、しわがれた不気味な声でそう言うと、いきなり手にした剣でオーアに斬りかかった。
慌ててオーアは槍でその攻撃を防ぐ。
ギン、という、けたたましい音がオーアの鼓膜を必要以上に揺らした。今まで味わった事のない、強烈な打ち込みである。
一時間も全力で戦い続けたオーアは、さすがに疲労している。本来の力が出ない分、相手の力に押し込まれていた。
「ぐ……」
「ほお、俺様の剣を防ぐとはな」
言いざま、狼男はくるりと身体を翻すと、再び横なぎに斬りつけてきた。
これも間一髪で、オーアは槍で受ける……が、あまりの衝撃に、体勢が横に流され、崩れた。
この隙を突いて、狼男は返す刀で袈裟懸けに剣を叩き込む。
「ぐあ!!」
オーアの肩から鮮血が飛んだ。身をよじって避けようとしたが、間に合わず、右肩を斬りつけられたのである。
激痛のあまり、オーアは槍から右手を離し、左手だけで槍を持っている格好になった。魔物の剣技は凄まじい。次に来る一撃は片手では防げないだろう。
ならば! と、オーアは力の残った左手で、残りの体力を振り絞り、渾身の突きを繰り出した。
しかし、普段の半分の威力もない王城最強の突きは、あっさりと狼男の剣にはね返された。
「ああ!」
「なんと脆弱な。人間とは脆いものよな……」
あざけるように言う狼男。そして、瞬時に剣を振りかぶる。
「フハハ、死ね!」
「しまっ……!」
オーアの額めがけて、狼男の剣が振り下ろされる。左手の槍は間に合わない。
大量の血しぶきが辺りに飛び散った。
そして、ドサリ、と地面から無感情な音がする。
…………。
意識は……ある。
「オーア様、大丈夫ですか!?」
オーアは閉じていた目を開いた。目の前には、背後から剣を突きたてられた狼男が、口から血の泡を吐いて転がっているところだった。
すんでの所で、助けられたようである。
「あ、ああ。助かった。……お前は、確か……」
「は、王国兵士、ガルシュと申します」
オーアは痛む右肩が気になってか、かつて自分を東の洞窟探検に向かわせる原因となった、この男の名を思い出せなかった。
ガルシュは、狼男の背に足をかけ、刺さった自らの剣を引き抜いている。
「そうか……助かった。礼を言う」
オーアはそう言って愛用の大槍を何のためらいも無く投げ捨てると、腰の剣を抜き、左手に持った。右肩の傷は深く、片手で槍は扱えないため、剣に切り替えたのだ。
そんな二人の背後から、大柄な男が近づいてきた。
「下がって。敵が来る」
そう短く言うのは、全身を魔物の返り血で真っ赤にしているロック=パタである。
「ロック=パタか。……下がりはせん。オレはまだ戦える。右側を援護してくれ」
オーアは右肩の傷を、左手と口を使って器用に布で縛ると、痛みを堪えてパタに言った。
パタはうなずくと、オーアの右側に回り、二丁オノを構え、敵の襲撃に備えた。
だが、周りを幾重にも囲んだ狼達は、ぐるぐると威嚇するのみで、いつまで経っても襲い掛かってくる気配がない。戦意が落ちている事は明らかであった。
「……どうしたことだ?」
魔物の様子がおかしい事に気付いたガルシュが、怪訝そうな声をあげた。
「もしかしたら、あのしゃべる魔物がこいつらに指示を出していたのかも知れんな」
オーアは肩の痛みに顔をしかめながら言った。
「恐らく、この機会を、シバ師範は見逃すまい」
オーアはそう言って、口の端をわずかに上げるのだった。
「第二部隊、突撃!」
狼達の動きが鈍ったのを、第二部隊のマスター・シバが見逃すはずは無かった。
シバは掛け声と共に、第一部隊の開けた穴から敵の群れに突入すると、一気に砦へと駆け抜けた。
第一部隊が砦までの魔物の群れを左右に切り裂く。そしてその隙間を抜けて後続の第二部隊が一気に砦まで迫り、落城させる。
これが今回の策。寡兵でもって砦を落とす、電撃作戦であった。
狼の群れを抜ける途中、第二部隊の先頭を走るシバと、シバのために通り道を確保するオーアとがすれ違ったが、そこに言葉は必要なかった。お互いの目で、健闘を称え、そして健闘を祈ったのである。
「さあ、第一部隊の奮闘を無駄にするな! 総力を挙げて砦を落とすぞ!」
第二部隊は、シバの声に気力をみなぎらせ、まっしぐらに砦を目指した。
そして、部隊は砦の前の川に差し掛かる。
川には、大きくはあるが、くたびれた橋が架かっていた。橋から砦まで魔物の姿はない。
「この橋は古いが、つくりは頑丈だ。心配せずに突っ切れ!」
シバは先頭に立ち、橋を渡り始めた。兵士達もそれに続く。
橋は幅が広いとはいえ、150人が一度には渡れない。隊列が自然と細長く伸びた。
こういう場面で気をつけるべき事を、シバは心得ている。
「小僧共!敵の伏兵があるかも知れん。左右に分かれて警戒しろ!」
シバはすぐ後ろを走っているグレイとククリに指示を飛ばす。
それを聞いたグレイとククリの顔は、まるで遊びに行く子供のように、嬉しそうな声を上げる。
「へへ、待ちに待った出番だぜ!」
シバの予想通り、橋を渡った所で、左右の峡谷の死角から、狼の群れが飛び出してきた。その数、50程と見える。狭い進入路を活かした敵の罠であった。
「魔物の分際で小賢しい!」
狼の群れは、まずは先頭を走るシバに襲い掛かった。
シバは抜く手も見せずに、両手の剣を振り抜く。瞬間、衝撃波のような剣風が起こったかと思うと、十数匹の狼が、紙くずの様に吹き飛んだ。
「す、すげえ。たった一振りで……」
思わずグレイもククリも感嘆する。
そんな二人に、シバは注意を促した。
「感心しとる場合じゃなかろう。伏兵を食い止めるのだ」
そうだった、とシバに遅れながらも、グレイとククリは左右に分かれ、迫り来る狼の群れと対峙する。
偵察の時は、狼と戦う事を禁じられていたグレイとククリは、その鬱憤を晴らすかのように、生き生きと剣を振るった。
もとより冒険者としての腕は確かだった二人だが、訓練所でのシバの教えの元、その力はさらに磨きがかかっていた。
身のこなし、そして剣速など、二人は黒い狼たちを圧倒し、見る見る内に死骸の山を築いていく。
シバは、そんな二人の戦いぶりに目を細め、安心したように声を張り上げる。
「お前達は、伏兵をここで食い止めろ! ワシは本隊と、今のうちに砦を攻める!」
シバはそう言い残すと、後から続いてきた兵士を率いて、砦へと駆けていった。
「ちょっとジイさん! たったの二人でこの狼、全部を相手すんのかよ!?」
狼に挟撃される中、二人が取り残される格好となり、ククリがたまらず不満を言う。
「一人で30くらいは軽いと言ってただろう? 根性みせろよ、ククリ!」
グレイは狼を蹴散らしながら、楽しそうな声で、ククリに言った。
「ちぇっ、それを言うなら、100匹やっつけるって言ったグレイが全部倒してくれよ!」
二人は、冗談を飛ばす気楽さで、禍々しい魔物の群れを、次々と切り伏せていった。