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希望と不安

「スィーニ、一緒に行きましょー!」


そう言いこちら側に走ってくる赤髪の少女、ダリーヌ=クロシェント。受験時に緊張し足がすくんでしまった私を言葉という魔法で押してくれた恩人。そして、嬉しい事にクラスが一緒です!


私たちは1ー2と書かれた教室に入っていく。すると、黒板には席順が書かれており残念ながら席が離れてしまった。


「ダリーヌちゃん、離れちゃった……」


不安が押し寄せてきて涙目になる。そんな私に彼女は安心させるように優しい柔らかい声で言う。


「大丈夫。離れてもクラスは一緒だよ。それに新しい友達もスィーニならできるよ」 


彼女はちょっと待っててといい荷物を置いて戻ってくる。


「HR始まるまで話そう!」

「うんっ!」


雑談をしているとワイワイしていた教室の空気がガラッと変わり、教室にいた生徒たちの視線は一人の男子生徒に向けられる。その男子生徒は座席を確認し席に座る。


「もしかしてあの方はステラ=セレーネでは?」

「えぇ、きっとそうですわ」

「アレが噂のステラ=セレーネか」


周りではコソコソと彼を見ながら話をしていた。でも私にはその理由が分からなくダリーヌちゃんに尋ねる。


「ねぇダリーヌちゃん、何で皆んなあの人のこと見てるの?」


私は小声でダリーヌちゃんに尋ねる。するとダリーヌちゃんは驚いた顔をしながら答えてくれる。


「彼のこと知らないの?結構有名なんだけど…」

「うん…」

「彼はステラ=セレーネ。入試でほぼ満点の成績を叩き出して現時点での首席」

「えっ、それ本当…?」

「えぇ」

「えっ、だってここの入試って結構難しかったよね…?

ここの学園名門校だし…」

「えぇ、難しいわよ。でも本当らしいよ」

「と言うかスィーニ、貴方ちゃんと入学式うけてた?彼新入生代表のスピーチしてたわよ。」

「実はちょっと違うことに気をとられてて…」

「まったく」


ダリーヌちゃんは呆れた顔で言うけれど、私にとっては大事な入学式よりも大切なことなのだ。




────入学式始まる40分前




「あ、あの」

「どうかしましたか?お嬢様」


赤色のベストと裏の色が同じく赤色の燕尾服を着ている上級生の執事さんに声をかける。彼は私の案内役の人である。


「お、落とし物をしてしまいまして…」

「はぁ、何を落としになられたのですか?」


彼は溜め息をつく。表情に出ている訳でないが彼の溜め息で私には分かってしまった。今までも何回も同じものを見てきたのだ。


「す、すみません。す、すぐ戻ってくるので待っても、貰えますか?」 


私は彼の顔を見る勇気も何処からかくる恐怖に勝つことも出来ず彼が返事を聞かず落としてしまったであろう場所に走っていく。背後からは舌打ちの音が聞こえた気がした。


(ここら辺だとは思うんだけどなぁ……)


少しの花壇と白いベンチがある場所に来ていた。

私は母から貰った大事な少し透明がかった青色の花が付いているヘアピンを探し始める。


周りからはイヤな目で見られているのは分かっている。誰もが一度はこちら側を見ているのも、小さく罵倒しているのも分かっている。でも、これは母がくれた大事なお守り。無くしたままにはしたくない。


誰かに手伝って欲しい。見ているのではなく、バカにするのではなく手を差し伸べて欲しい。知ってる。誰も助けてはくれはしない。唯一助けてくれたダリーヌちゃんはここにはいない。


私は泣きそうになるのを必死に抑えヘアピンを探す。すると1人の男子生徒がこちら側に来ているのが分かった。でも、どうせ私を助けてなんかくれない。私は見えてないフリをしながら探す。


しかし、彼は私の方に近づいてくる。


「あの、探し物ですか?」


私より少し大きい淡い瞳をしている彼は言う。

私は耳を疑った。

しかし、声を掛けてくれたという事実が私に疑うという選択肢を消す。文句も、罵倒も、嘲笑も私の遠くでやって誰も声はかけない。そんな私に声を掛けてくれた彼。私は素直に言う。


「あ、えーと、ヘアピンを落としてしまって」

「お手伝いしますよ」

「あ、いえ、そんな…」

「お嬢様の制服が汚れてしまうような事はさせられませんよ。」

「ありがとうございます」

「クスッ、珍しいお嬢様ですね。ところでどんなヘアピンなのですか?」 

「す、少し透明がかった青色の花が付いているヘアピンで」

「わかりました。少しだけここでお待ち下さい」


彼はそういい白いベンチの周りを調べ始めた。

私は唖然として彼の行動をただ眺めていた。


「このヘアピンですか?」


彼は私が探し求めていたヘアピンわわ持ってそう告げた。

嬉し涙が溢れそうになるのを必死に抑えてお辞儀をしながらお礼を言う。


「は、はい!ありがとうございます!」


そして、彼は不思議そうな顔をしながら私を伺っていたのでヘアピンわわ探していた理由をいいもう一度頭を下げてお礼を言う。


すると彼は頭を上げてくださいと必死に言うのでそっと頭を上げる。彼の柔らかい表情に恐怖を抱かずホッとする。


が、私は上級生の執事さんを待たせてしまっているのを思い出し慌てて去ろうとした。またも、ここまでして貰ったのに名乗らずに去るのはどうかな?と思い慌てて名乗る。


「では、本当にありがとうございました。失礼しま…

あっ!名乗り遅れていました。スィーニ=ヴェレッドと申します。」


すると彼を慌てたように


「すみません。こちらこそ遅くなりました。ソルーレ=テルフィーラと申します。」


と言った。




♦︎♦︎♦︎




回想をしていると、教師であろう1人の女性が教室に入ってきた。ダリーヌちゃんを含め席を立っていた人たちは皆んな慌てて席に着く。


「じゃぁ、HR始めまーす」


ラフな格好をした女性が教壇に上がる。


「1ー2組の担任になるペスカ=トラーチェでーす。ペスカ先生って呼んでくれると嬉しいなぁー、!これから宜しくねー」


(こんな先生もいるんだなぁ)


厳しめの先生が多いイメージがあったので緩んだ感じのペスカ先生が担任で少し安心する。


「早速なんだけどプリントと生徒証を配布するよー」


すると、QRコードが書かれているプリントと自分の写真が載っている生徒証が渡される。


「はーい、注目。プリントのQRコードは試験の結果とかー、私たちとの連絡用として使うのでーしっかり読み込んでアプリ入れておいてねー。あと、その生徒証ーはこの学園内の施設を利用する時に使うから常に持っていてねー」


「もう一つ重要なお知らせでーす。1週間後1日だけバトラー科との交流会がありまーす」


ペスカ先生の話に教室内がざわつく。


「はーい、静かにねー。皆んなが心配しているのは1日だけって事かなー?ちょっと語弊があってね、上級生も含める交流会が1日だっけって事でーす。」

「あの、少し良いですか?ペスカ先生」

「えっと…」

「ゲルブ=ヒュールンです」 

「ごめんね、まだ覚えられていなくて。ゲルブくん何か質問?」

「はい。交流会にはノービレ科の上級生の方々も参加されるんですか?」


気の弱そうな彼はペスカ先生に質問する。


「参加されますよー。ふふふ」


上級生との交流会。

とても貴重な機会だ。


が、私にとっては不安しかない。

だって上級生って怖いイメージしかない。


チラッとダリーヌちゃんの方を見るとキラキラしていた。



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