出会い
ソルーレは馬車に揺られながらこれから通う学園に想いを馳せていた。
全寮制の学園のためどの様な部屋なのか気になる。
ふと意識を戻すと美味しそうなパンの匂いが漂ってきてお腹が空いてくる。その匂いの在り処を探してキョロキョロとしていると馬車をひいている青年がこの街の魅力を説明してくれた。
「この街は芸術に力を入れていましてね、パンとかも色んな形のものがありますよ。お花も色々な種類の物がメアリーガーデンという場所にあります。時間があったらあそこの噴水の所を右に曲がっていくとがあるので行ってみるといいですよ。きっと心が安らぐと思います。」
「そうなんですか。時間があれば行きたいです!」
せっかく来たんだし行ってみたいなぁと思い返事をする。
「そろそろ着きますよ」
青年の声に暖かい空気にウトウトしていた身体を起こし外を覗く。そこには馬車が沢山止まっており2種類の制服姿の生徒と、その執事さんたちが寮へ持っていく荷物の移動を行なっている。白いワイシャツに青色のベスト、表が黒裏が青色の燕尾型のジャケット、白い手袋に黒のパンツ姿はバトラー科でセーラーワンピースでリボンが青色の女性、白いワイシャツとブレザー、黒のパンツ、青のスプライトのネクタイの男性はノービレ科だ。
ついでに俺はバトラー科志望で入学なので勿論彼らと同じ服装をしている。が、バトラー科では行事や正装でなければいけない時だけ燕尾型のジャケットを着て、普段はタキシードを着るらしい。
馬車が止まったので降りる。荷物を降ろすのに青年が手伝ってくれたのだが青年は驚きの表情をしていた。
「あの、馬が軽いなぁとは思っていたのですが荷物ってこれだけですか?」
青年はまさかくる途中落としてしまったのでは?と思った。が、青年がそう思うのは仕方のない事だった。今、降ろした荷物はボストンバックとショートバックのみだったのだ。
周りを見渡してみるともう俺の5倍以上の荷物を抱えている生徒がのほどであった。俺的には寧ろ何を持ってきたらそんな荷物になるんだ?とただただ疑問だった。
今日の予定は9時、今は8時30分なので30分後に入学式が始まる。入学式が行われるホールへ行こうとしたところ制服的にノービレ科であろう女子生徒が周りをキョロキョロして何かを探しているようであった。
気付いてしまったものを知らなかったフリをするのは後々気になるので取り敢えず声を掛けてみることにした。
「あの、探し物ですか?」
「あ、えーと、ヘアピンを落としてしまって」
「お手伝いしますよ」
「あ、いえ、そんな…」
「お嬢様の制服が汚れてしまうような事はさせられませんよ。」
「ありがとうございます」
「クスッ、珍しいお嬢様ですね。ところでどんなヘアピンなのですか?」
「す、少し透明がかった青色の花が付いているヘアピンで」
「わかりました。少しだけここでお待ち下さい」
仕事モードに入って対応し、安心させるために彼女に微笑みかけヘアピンを探し始める。ブラウンの瞳に栗色のふわふわしている髪の彼女はノービレ科の生徒の筈であるのにバトラー科である俺にお礼を言うなんて内心とても驚いていた。
そもそも普通は、探し物などは執事に任せる事が普通であるとネーロに教わった。制服のリボンが青色なので同じ1年生らしいが、今日はノービレ科の1年生の生徒には上級生の執事さんがついている筈だ。彼女の執事さんは何処に行ったのだろうとなどと考えながら近くにある白いベンチの下を覗く。すると、彼女が探していたものであろうヘアピン転がっていた。それを拾い、付いていた汚れを落として彼女に渡す。
「このヘアピンですか?」
「は、はい!ありがとうございます!」
ガバッと効果音が付きそうなくらいのお辞儀をして彼女はお礼を言う。俺は慌てて頭を上げてくださいと言う。すると彼女は母から貰った大切なものなのだと教えてくれた。
「では、本当にありがとうございました。失礼しま…
あっ!名乗り遅れていました。スィーニ=ヴェレッドと申します。」
「すみません。こちらこそ遅くなりました。ソルーレ=テルフィーラと申します。」
スィーニさんは失礼しますと言い去って行った。