第一章 お客様(1)
ものすごく行き当たりばったりで書いてます。どうか優しい目で見てやってください。
誤字脱字の報告お願いします。
年が明けて数日、一月六日は樫屋圭喜の誕生日である。洋菓子店の子どもであるうえに日本ではじめてケーキの宣伝がされた日である一月六日生まれだから名前は圭喜。安易な名前だとは思うが弟妹たちも同じような理由で名前をつけられていた為に圭喜は特にこの名前に対して反抗的な思いは抱いていなかった。
『rigvygmr,tigjtrugc,,xp.rgrguxgbgh,o!』
「はぁ」
『xrj.ggxjfnlkgfkxj,grdklfcgj:.fgckjt:.eg:ngog!』
「ほぉ」
『x.:jgndkfnf,qfe:qfpxfumfg/rfjwxh!!!』
「へー・・・」
ところでコレはなんだろうか。夕飯を終えて自分の部屋に戻ってきた圭喜は自分の寝台に落ちていた人形を拾っただけだった。他には特に何にもしていない。今日が圭喜の誕生日ということ以外は普通の日だ。
それは10㎝程度の大きさの人形だった。
『odfjcnghe;xhmerguer,upoc/e.emxj.brjfgenfgfx,gwezp.fg!!!』
「なんて言ってるんだろ、これ・・・」
圭喜が人形を持ち上げた瞬間、その人形がパッチリと目を開けた。圭喜はそれを地面と顔の角度を垂直にすると目が開く人形だと思った。
目を開いた瞬間、その人形が叫びだすまでは。
『shjdzdnmo,rfrpf.grg,.fo.j.iiugyhsfzbvwdhgxtufmuvtf!!!』
「そういう仕様の人形か・・・?」
圭喜は手にした人形を寝台に落とす程に驚いたが人形は柔らかなかけ布団の上に落ちたため無傷だった。人形は寝台に落ちると驚いたような様子を見せたが小さな体で両手をぶんぶん振り回すその仕草は圭喜を微笑ましくさせるだけだった。
そして今、圭喜は顔を赤くした人形に怒られている。
『jrghx,egfefxgwg.igtgb,hrxfwgrnjnhgcxjvrxxsvk,;feo!!』
「どこかに電池の・・・いたっ」
圭喜が電池の有無を調べようと人形を乱暴に持ち上げると人形は圭喜の指に噛み付いてきた。圭喜が驚いて手を離し自分の噛まれた指を見てみると人差し指の側面から血が出ていた。
「こらっ!」
圭喜は噛まれた方の手とは逆手で小さな人形のさらに小さな額にデコピンをした。すると人形は簡単に後ろに転がってしまった。そして自分の額を押さえて呆然と圭喜を見上げるのだった。その顔はまさに「親父にも殴られたことないのに・・・」といったものだ。
人形の宝石のような濃い紫色、に近い不思議な色の瞳がじわりと潤んでいった。人形は上を向くと涙を落とさないように歯を食いしばって圭喜を睨んできた。
圭喜はそれを見てどうやら自分は酷いことをしてしまったと今更ながらに気がついたようだ。
「ご、ごめんて・・・えーとえーっと・・・あ、おかし食べる?」
圭喜は慌てて自身の持っていたカバンを漁ると丁度そこには可愛くラッピングのされたクッキーが入っていた。それは後輩から誕生日にと頂いたものだが、圭喜としては「くれるのならもう少し情報を集めてから贈っていただきたいものだ」と考えていた一品だった。
「おいしいぞーウチの父さんが朝焼いたやつだし」
まさか圭喜の後輩もお勧めの洋菓子店がクッキーを贈った先輩の実家だとは思っていまい。
しかも圭喜は甘いものが嫌い・・・いや、苦手なのだ。それならお前の実家の酒でも寄越せ。数年同じサークルにいる後輩ならば圭喜の趣向くらい分かっていてくれ。と圭喜は考えていた。
圭喜はクッキーの袋のリボンを取ると動く人形に一枚クッキーを渡した。
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
人形は圭喜を一瞥した後、目の前に出されたクッキーを見た。しかしいつまで待っても人形はクッキーを受け取らなかった。遠慮しているのかお腹がすいていないのか・・・?
圭喜はクッキーを人形の前から遠ざけると自身の口の中へと突っ込んだ。
サクサク・・・ごくん
「げ・・・紅茶味だった」
圭喜は甘いものによく合う紅茶が嫌いだった。後は抹茶とか生クリームとか。
とにもかくにも眉を寄せた圭喜はもう一度人形の方を見た。
人形はぽかんとした顔をしていた。その顔を見て圭喜も目をぱちくりさせた。
「・・・食べたかったの?」
『・・・・・・・・・』
圭喜は紅茶味のクッキーをもう一枚取り出して人形に渡した。
「どうぞ、ほら早くしないと食べるぞ」
まったく思ってもないことを圭喜は平然と人形に向かって言ってのけた。