青春だな
小学生の頃、とても痩せていた男の子を
「骨くん」と呼んでからかっていた。
『〇〇君って骨みたいにガリガリだよね(笑)』
そのとき、彼はどんな顔をしていたのだろう。
ー高校2年生の夏ー
今日、地区大会の決勝で、私たち野球部は負け
た。先輩たちはこの試合が引退試合だった。
私は、選手たちとは離れたところで、1人泣いてい
た。マネージャーなんかが、一緒に泣いていてはいけ
ないと思ったからだ。
だから、誰も来ないと思っていたところに、人影
が近づいて来て驚き、顔を上げた。
その人影は、相手チームのピッチャーだった。
「相手のピッチャーが何の用ですか。からかいに来た
のなら、さっさと罵倒して帰ってください!」
私は、相手の顔を睨みつけながら言った。
「………はははっ、相変わらずだな、、(小声)
強気なマネージャーだね〜。」
そのピッチャーは笑いながら言った。
私は、笑われたことにカッとなりさらに睨みつけ
た。
「おぉー怖い怖い。………俺の顔をそんなに睨みつけ
ても、わかんないのか??」
そのピッチャーは、私に問いかけた。
「ふんっ……!あなたみたいな強いピッチャー、今ま
で見たことなかったわよ。どこ中なの」
「お前と同じ中学だよ。本当に思い出せないのか?ま
あ、俺もあの時とは変わって、相当男前になったから
な〜。強気な恵ちゃん♪」
……あっ!私は、いつも小学生の時、私のことを強
気なけいちゃんと呼んでいた子がいたことを思い出し
た。
「………っ!!もしかして………骨くん??」
「………んー、まあ、そうだけど…。
まだそれで覚えられてんの?!ちょっと流石にショ
ックだな〜。」
「ふふふ(笑)」
「……やっと笑った。」
「あっ………!」
私は、いつの間にか涙が止まっていたことに気づ
いた。
「強気なけいちゃんは、いつもみんなを元気にす
るんだよ、マネージャーでも、みんなの仲間なんだか
ら。」
………っ!私は思っていたことを、指摘されて言葉に詰まった。
「………でも、私は実際に試合に出たわけじゃない
し、選手はもっと悔しいから、私なんか……」
「そーんなわけないじゃんっ!」
私はいきなり頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。
「俺も、選手もみんな君を必要としているよ。ほら」
「おーいマネージャー?どこだー?今からみんなで、
反省会するぞー。」
「………ね?」
私は、そう言った彼の笑顔に目を奪われた。
「………俺もってどういうこと?」
「あ、気づいた?
………俺さー、小学校の時からかわれてたけど、お前
にまで『骨くん』って言われたのめっちゃショック
で、それからどうしたら男らしくなれるか考えて、野
球始めたんだ。で、高校でやっとピッチャーに選ばれ
たわけ。」
「………っ!そうだったんだ……ごめんね。あの時は
私も………。」
私は、彼がショックを受けていたことに今更ながら
気づき、申し訳なく思った。
「あーーー!いや、責めるためにいったんじゃなく
て、お前がきっかけで頑張ったってこと、意味わか
る?」
私は、よく意味がわからず首をかしげた。
「ん〜〜〜っ//。
……えーっと、俺さ、
……あの時からずっとお前が好きだったんだ。
今も。
だから、今日の試合は絶対勝つって決めてたん
だ。」
「えっ………/////。……本当に⁇全然知らなかっ
た。」
そんな風に、からかっていた時から思われていたな
んて。
「はぁーーーーー。だろーな。だって、今日会わなき
ゃ言うつもりなかったし。
………でも、本気だから。」
彼は今までにみたことがないくらい真剣な顔をして
いた。
もし、
私も今日会わなかったら、彼とは二度と会うことはな
かっただろう。
私は、返事をしようとした。
……だって、返事は決まっていたから。
「あっ!ちょっとまって!返事は今しないで。
だって、オッケーな自信ないし。
……だから、俺が甲子園で優勝したら、返事聞かせ
て?
……と言うか、絶対するから。」
………私は、彼の自信に満ちた表情に何も言えず、
そのまま彼の目を見つめ返した。
「おーいマネージャー?早く行くぞー」
「……はぁーい!今行きます!」
私は何も言わずに、そのまま彼に背中を向けて走り
出した。
「絶対優勝するから、みてて!!」
彼が後ろで叫んだ声が聞こえた。
・
・
・
・
その夏、無名の高校が甲子園で優勝した。
特に、ピッチャーは大注目を浴び、2年生で来年も
期待される選手としてテレビで報道された。
そして、私は………。
END?