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猫の・・・同居人  作者: 山之上 舞花
第一章 部屋探しで見つけたものは
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花咲君の言葉に憮然としたけど、今はブーリン様へのご奉仕を優先させることにした。ゆっくりと櫛を首元からしっぽへと梳いていく。背中から左わき腹へ。それから右わき腹の方。頭のてっぺんを少し強めに押し当てて、グリグリとマッサージするようにしてから背中の方へと滑らせる。気持ちがいいのかブーリン様の目が細まった。


「ブーリン様、横にさせて頂きますね。お腹の方をやらせて頂きますよ」


そう言って、ブーリン様に手を掛けて横に倒し左前足を持ち上げた。


「ではいきますね」

「ブハッ」


顎の下からお腹の毛を梳いていく。時々抜け毛を櫛から取り去るのも忘れない。いつの間にか隣で胡坐を掻いて座っている花咲君が、身体を二つに折り曲げるようにして、声を出さないように「クックッ」と笑っているのが気になったけど、彼のことは無視することにした。


そっとブーリン様を転がして、今度は右前足を持ち上げて梳いていく。ほぐされた毛が滑らかな手触りへと変わった。櫛で梳くのをやめて、今度は身体を撫ぜていく。

ブーリン様は軽く頭を上げると私のことを見てきたけど、もっと撫ぜろと云うように頭を戻しクテンと力を抜いてくれた。毛並みを堪能しながら、耳元や顎の下をくすぐる様に掻いていった。しばらくそうしていたらブーリン様は満足したらしく頭を上げた。私はブーリン様から手を離した。ブーリン様は起き上がるとどこかへ行ってしまったの。


その姿を見送っていたら、背中の腰の辺りを押された。後ろを振り向くと・・・!


なに~! このちびっこは~。生後1か月半・・ううん2ヶ月くらいかもしれない。淡い茶色の茶トラの子が頭をグリグリ擦り付けていた。私が振り向いたら「ミーア」と高い声で鳴いた。


「可愛い~♡」


左手を出したらフンフンと匂いを嗅いだあと、私の指先を舐めてきた。触ろうと手を伸ばしたら、手を避けて逃げていった。子猫から視線を外すと、トテトテ近づいてくる。また私の左手に懐いてきた。子猫の方を向いたら、慌てて離れて行く。また、視線を外したら寄ってきて、今度は、前足でチョイチョイと左指で遊びだした。


これは本気で遊んで欲しいのだと思い、体ごと子猫の方をむこうとしたら、右手にスベスベしたものが触れてきた。そちらを見るとこちらには成猫が頭をこすりつけてきていた。


この子はとても可愛い顔をしていた。目が大きめで・・・模様についてはなんて説明したらいいのかな? 頭のてっぺんから背中にかけては、真っ黒なビロードのように光沢がある毛をしていた。だけど、顔の目の周りは茶色い毛と黒い毛が微妙に交じりあった色をしている。それなのに人間の眉毛の辺りに、丸く黒い毛が生えている。例えるなら平安時代の麿眉。

それから鼻の周りから口元を越して、お腹と四肢は真っ白ときている。面白いことに両耳の下は茶色の毛に覆われていた。ああ、そうあった。もう一つ忘れちゃいけないのが、左の鼻の横に少しだけ黒茶色の毛があって、見ようによってはほくろの様に見えた。あと、身体の横の色は、黒と白と茶色の毛が混ざって生えているの。


人懐っこく私の手に頭をこすりつけられて、困ってしまう。チビちゃんと遊びたいけど、この子にも毛梳きをしてあげたい。


困って花咲君を見たら、いつの間にか彼も毛梳きを始めていた。それも彼がしているのは、ロシアンブルー似の美猫のマイ様。うらやましくて睨むように見てしまう。


そうしたら、麿眉さまがまた右手に触れてきた。そうか、毛梳きがして欲しいのかと思い櫛を持ちあげたら、途端にお座りをしてくれた。そっと頭を撫ぜると真っ黒な部分がスベスベしていて気持ちがいい。耳の下の茶色の毛はフワフワしていて、触り心地の良さにニマニマしてきてしまう。残念なのは体の横の三色混ざった部分。ここだけなんか手触りが悪いの。お腹や顎の下の白いところはサラサラしているのに、こちらはザラザラしているのよ。


麿眉さまの身体を触りながら、櫛を動かして毛梳きをしていたら、何かが背中にガシッとくっついた。そのまま重みが背中を上へと移動していく。というか・・・。


「痛っ。痛い、爪が~」

「あー、こら、ミーア登るな」


花咲君が私のところに来て、背中を登っていた子を捕まえてくれた。そうしたら「ミーア」と不満そうに鳴いたの。


「子猫の爪って細くて鋭いから、血が出てるかな?」


・・・おい! その言葉と共に人の服をめくろうとするな~。


「大丈夫だよ。子猫だからそんなに重みはないから、食い込んでないから」

「経験者は語るなのかな? でも、背中じゃ見えないだろう。小さな傷と侮っちゃダメだよ~。ほ~ら~、見るだけだっから~。抵抗すると全部脱がせるけど~、いっいのかな~?」


まるで歌うような節回しで言った花咲君。私の後ろにいるから表情は見えないけど、絶対さっきと同じにニヤニヤ笑っているのだろう。


私は服を押さえるのをやめて背中の方の裾をめくって、花咲君に見せた。


「あれ~、もう抵抗しないんだ~」


少し残念そうな花咲君の声が聞こえてきた。


クッソ~。絶対こいつの性格は猫だ。面白い事好きのチェシャ猫ヤロウ~め~!



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