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猫の・・・同居人  作者: 山之上 舞花
第一章 部屋探しで見つけたものは
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箱の中を覗いて、中にいる子達に目を丸くした。


「うわぁ~、小さいね。5匹もいるんだ」


箱の中には目が明くかどうかの子猫たち。箱を動かしたことでなのか、それとも人の気配で目を覚ましたのか、ピーピー、ミーミー、鳴きだした。


「俺、今までこんな小さい子猫の面倒なんて見たことがなかったんだよ。5匹もいっぺんに面倒を見れないだろう。本当にどうしようかと思ったんだ」

「えーと、とにかくまずは子猫にミルクをあげましょうか」


そう言ったら花咲君は猫用の哺乳瓶を用意し始めた。私ももちろん手伝った。猫の世話をしながら、彼の話を聞いていた。


ここはもともと祖父母の家だったそうで、猫好きだった祖父が猫のために離れを改装したとか。それなのに、転勤で世話を孫に任せてこの家にはいないらしい。両親も今は海外に転勤して日本にはいなくて・・・。兄弟は頼りになる5歳上の姉がいるけど、さっきも言った急な転勤で明後日にはいなくなるそうだ。


これを子猫たちにミルクを飲ませながら聞いていた。目が明くかどうかの子猫は乳首に吸い付いて、お腹がいっぱいになるとぽんぽこのまん丸のお腹になった。その子のお尻に濡れティッシュを当てて軽く刺激をしてやる。上手く排泄出来てスッキリしたのか、手の平の上でモゾモゾ動く。手の平に納まる小さな体。もう少し抱いていたいけど、次の子のお世話をしないとね。手の中の子を置いて次の子を持ち上げて・・・。


をしたら、花咲君が目を丸くして見ていた。



「本当に慣れているんだね」


子猫たちのお世話を終えて本館?の台所に戻ったらそう言われた。


「まあ、たまたまね。うちの母も捨て猫が見捨てられなくて、よく拾ってきていたから」

「じゃあ、子猫の世話もしょっちゅうしていたの」

「う~ん、そんなに私はしてないよ。一度3日違いで乳飲み子猫を計8匹保護したことがあって、流石に母だけじゃ手が回らないから私も手伝ったけどね」


花咲君がその言葉に目を輝かせると、私にガバッという効果音がつきそうな勢いで、頭を下げた。


「お願いだ、藤山さん。ここに一緒に暮らして俺を助けてくれないか」


その言葉に心臓がドキドキした。言っている意味は違うとは分かっているけど、プロポーズを連想させる言葉に顔に熱が集まってくるのが分かる。顔を上げた花咲君は不思議そうに私のことを見つめてきた。


「えーと、その、ここに住まわせてもらえるのなら助かるけど、あの、いいの?」

「もちろん。そのために張り紙を出したんだし」

「じゃ、じゃあ、あの、家賃とか、部屋とかは・・・」

「あー、そうだよね。・・・そうだな、姉貴も藤山さんならいいというだろうけど・・・。とりあえず、同居のためのルールでも決めておく?」


花咲君の提案に私は目をぱちくりと瞬きをしたのでした。


そのあと、また離れの方に行って、猫たちのお世話をすることになったの。離れは2階建てで、猫のために全室フローリングでログハウスを連想させる作りだった。本館?とつながる扉以外にも玄関がちゃんとあった。吹き抜けのそこは、もちろん猫のことを考えて緩やかに猫用階段が取り付けられていた。部屋の高い所にはキャットウォークもあるし、もちろんキャットタワーも完備されている。・・・というかわざわざキャットタワーを中央の柱に据えつけなくてもいいだろう。


1階の部屋は全部で6区画に別れていた。というのも、この建物は6角形の変則的な建てられ方をしているんだって。猫のための家だから各部屋を隔てる扉は、さっき子猫がいた台所の部屋だけについているだけなんだって。さっきも母屋からの扉を抜けたあと、ただ部屋を通り抜けたんだよね。


改めての猫たちとの対面には緊張をした。私は猫に嫌われたことは滅多にない。嫌われたことはないけど、中々懐いて貰えない時もあったから。懐いて貰えなかった時には、少し落ち込んだりした。

私の母は動物に好かれる人だった。どれだけ吠える犬でも、母と5分も対峙すれば吠え掛かるのをやめておとなしくなるのだ。


・・・それは今は関係ないか。とにかく嫌われないといいなと思いながら、花咲君のあとをついていく。ここにいる猫は全部で17匹。うち5匹はさっきの赤ちゃんたち。

トイレの位置は台所を除いて1階に6カ所、2階にも6カ所あるそうだ。使っているのは紙の砂。塊を取り除くだけだけど、色が悪くなったり匂いが気になったら全部取り換えるそう。


水のみ場も12個用意されている。ご飯の時間は朝と夕。容器がそれぞれあるそうなの。

あと、1週間に最低1回は毛梳きをするそうなの。特に毛の長い子はこれをしないと大変なことになるらしいの。家の子達はみんな短毛だったからそんなに大変な思いはしなかったけど。


猫たちは最初私のことを「なんだこいつ」という感じに見ていた。

近寄ってくる子はいなかったのだった。



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