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続きをお待ちいただいていた皆様!
本当に遅くなりました。
こちらも連載再開です。
出来れば、毎週更新を目指します。
よろしくお願いいたします。
花咲君と佳純さんに『持ってきた荷物を片付けてね』と言われたので、お言葉に甘えて片付けるのに集中させてもらった。なので、気がついた時には5時を過ぎていた。慌てて1階に降りたら、花咲君が夕食を作ろうとしていた。
「ごめん。私も手伝うよ」
「え~、まだ片付いてないんじゃないの。俺がやるから片付けておいでよ」
「片付けはほとんど終わったから」
「じゃあ、休んでて。疲れたでしょ」
「それは花咲君も同じでしょ」
「俺なら大丈夫だよ」
「でも、あの、さっき持ってきたもので・・・」
そう言いながら冷蔵庫に近づいて、足を止めた。そばに着た花咲君の顔を見る。花咲君は「ん?」と軽く首をかしげた。
「ごめん。食材の片付け・・・」
「ああ。そんなこと気にしなくていいのに」
「でも・・・」
「それよりさ、藤山さんが言いたかったのってこれでしょ。もしかしてタンドリーチキン?」
花咲君が保存袋に入っているものを出してきた。それは木曜日に下味をつけて冷蔵庫に仕舞っておいたものだった。
「藤山さんも料理するんだね」
「あ~、その・・・」
う~ん。あれを料理をするになるのだろうか。何かに集中するとよく食事をすることを忘れる私に、友人達が心配して教えてくれたものだ。肉や魚に下味をつけておき、ただ焼くだけ。それも電子レンジで火を通せばいいとか、オーブン機能で焼くだけとかという、簡単注釈付きのレシピだった。つけ合わせにはいろいろな野菜を買ってくるより、野菜炒め用を買ってこいとまで書かれていたし・・・。
これを料理するって言っていいのだろうか?
「違うの?」
イヤ、ね、なんで目を覗き込むように見てくるのよ。・・・というか近い!
私が一歩下がったら花咲君も一歩近づいてきた。もう一歩下がったら花咲君もまた一歩近づいてくる。
「花咲君、何で近づいてくるの?」
「藤山さんこそなんで逃げるの?」
もう3歩下がったら何かが太腿に当たった。見るとテーブルだった。そちらを見た隙に手を掴まれた。
「ねえ、藤山さん」
首をかしげて目を覗き込むように花咲君が近づいてくる。花咲君の顔のドアップに私は上体を逸らすようにしたら、腰にも手が回ってきた。と思ったらグッと彼のほうに引き寄せられた。
「危ないよ、藤山さん。後ろを見ずに下がっちゃ。怪我するかもしれないじゃん」
・・・いや、これはあなたのせいでしょう。
と、言いたいけど、言えなかった。花咲君は私をちゃんと立たせると、手を離した。
「それで? これは焼くの揚げるの?」
「えーと、確か・・・あっ!」
私は情けない顔で花咲君を見た。と思う。
「教えてもらったレシピ・・・おいてきちゃった」
私の表情が情けなかったからか、花咲君が「プッ」と、吹き出した。私が睨んだら花咲君は笑いながら言ってくれた。
「それじゃあ、適当に続きを作らせてもらうね」
「でも、それじゃあ悪いじゃない」
「いやいや。これが最善の策でしょう」
「でも」
「でもじゃなくてさ。うん」
といってまた花咲君は笑い出した。
「何を笑っているのよ、俊哉」
そこに佳純さんが顔を出した。私達を見て怪訝そうな顔をしている。
「いや、何でもないよ。姉さん」
「何でもないわけがないでしょう」
「あの、佳純さん。私が下ごしらえをしたタンドリーチキンのレシピを忘れてきて、それで続きを花咲君が作ってくれると言ってくれただけで・・・」
佳純さんは花咲君のことを見てから私に訊いてきた。
「藤山さんは料理を作る人なの?」
なんで佳純さんも聞くかな?
「えーと、レシピがあれば何とか」
そう答えたら佳純さんが花咲君の肩を叩いた。
「俊哉、食事はあんたが作りなさい」
「もちろんそうするつもりだよ」
「え~! 交代にしようよ」
佳純さんと花咲君は同時に私の事を見てきた。
「「ここは素直に俊哉(俺)に任せなさい!」」
流石姉弟。息がぴったりです。・・・じゃなくて、と口を開こうとしたら二人が目を細めて見てきた。
「「何か文句ある?」」
「いえ、ないです」
美形には勝てませんです。はい。
このあと、花咲君に台所から追い出された。『ここを手伝うのなら、猫の世話でもして来い!』だって。
なので佳純さんと連れ立って離れに行ったのよ。
お猫様たちは、入ってきた佳純さんに甘えるように寄ってきた。うん。ご飯をくれる人に懐くのは、基本だよね。わかっていますとも。・・・寄ってきてくれないのが、別に寂しくなんかないやい。
佳純さんが成猫たちのご飯を用意する間に、私は子猫たちの世話にはいった。ミーミー、ピーピーと鳴く声も、可愛くて仕方がない。私が2匹目の子にミルクをあげているところで、佳純さんも来た。
この子たちは離乳がすんだら、貰い手を探すと佳純さんが言っていた。きっと、祖父母のネットワークと父母のネットワークと佳純さんのネットワークがあるのだろう。猫好きはいつの間にか繋がるもんね。
お世話を終えて母屋に戻ると、ちょうど花咲君は料理を作り終えていた。夕食は私の漬けおきタンドリーチキンと、粉ふき芋、ニンジンの甘辛煮かしら? 他にお味噌汁、お漬物が並んだのよ。
・・・ぐぬっ。やはり花咲君は私より女子力が高い気がするの。




