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猫の・・・同居人  作者: 山之上 舞花
第二章 同居の前なのに
12/19

目が覚めたら部屋の中はまだ暗かった。いつもの癖で右を向いて寝ていたから、仰向けになるように寝返りを打った。


そして目に入ってきた人影にギクリとした。


「おはよ、藤山さん。本当に目を覚ますんだな」


花咲君が苦笑を滲ませた声で言ってきた。意味がわからなくて何度か瞬きを繰り返した。それから寝ているのもなんなので、体を起こそうとしたら花咲君に止められた。


「もう少し寝ていなよ。いくら子猫たちのことが気になるからって、睡眠時間が少なすぎだろ」


掛け布団を押さえられて身動きが出来ない。


・・・というか、なんでこの体勢? 誰かに見られたら拙い体勢でないの。


と、思っていたら、花咲君の雰囲気が変わった。


「あれ~。もしかして覚えてないの? 昨夜のこと。あんなに楽しんだのに」


そう言って花咲君は布団の上から体重をかけてきた。


「ねえ、本当に覚えてないの?」


顔を覗き込むように見てきたけど、近いし、それよりも重い~。圧迫されて布団で首が絞まって息が出来ない。


「く・・・」

「ん? く?」

「くるしい~」

「あっ。ごめん」


あっさりと花咲君は私の上から退いてくれた。

私は身体を起こし、ゼ―ハー、ゼ―ハーと少し大げさに呼吸をした。


「ごめん、藤山さん。そんな苦しかったんだ」


花咲君は隣に座り背中をさすってくれたけど、苦しかったのは喉なんだけど。それよりもと、呼吸を整えながら昨夜のことを思い出そうとした。


・・・おかしい。ルールの話をした後、私の荷物の話をしたことまでは覚えている。花咲君の車に乗りそうな荷物だとも言ったような・・・。けど、その後がサッパリ思い出せない。

・・・聞きたくないけど、確認はした方がいいよね。これから一緒に暮らすのに・・・いや、その前から迷惑をかけているってどうなのよ。


「えーと、花咲君。昨夜は私、迷惑を掛けなかった?」


そう言ったら花咲君が目に見えて肩を落として、俯いてしまった。その様子に私は焦ってしまった。薄暗闇の中でも、自分の服が昼間着ていたものと違うのは分かるもの。とんだ粗相をしでかしたのではないかと、恐々と花咲君に聞いてみる。


「あの・・・ごめん。もしかしなくても凄い迷惑をかけたんだよね。服を着替えるくらい酷い状態だったんでしょ」


私の言葉に花咲君は顔を上げた。さっきよりも明るくなってきたから、花咲君の表情が見えた。なんで驚いた顔をしているのだろう。そして、なぜに落胆の表情になるの?


「なんでこの状況でそっちの心配なわけ。普通もっと別のことを考えるだろう!」


花咲君は言っているうちに怒りが湧いてきたようで、語尾がきつい言い方になった。

・・・なんで怒るわけ? 私なんかした? あ~。なんかしたから怒っているんだよね。


「その、ごめんなさい」

「違うだろ。なんで貞操の危機とか思わないんだよ!」


あっ! そっちか。・・・でも、こんなガリで貧ぬーを抱いたって、楽しくないでしょうに。

・・・って、これは言っちゃいけないやつよね。それなら・・・。


「えーと、花咲君はそんなことしないよね」

「おい、それってどういう意味だよ。俺も男なんだけど。姉貴がいるからって意味なら、藤山さんがこの家にくる頃には居ないだろ」

「じゃなくて花咲君って、よく困っている子を助けていたでしょ。それなら女の子が酔いつぶれたからって、同意もなくそんなことはしないんじゃないかと思って。そんな人でなしな噂はきかなかったし」


そう私が言ったら、すごく複雑な顔をされてしまった。・・・何か言い間違えたのかな?


「えーと、ご」

「謝るのはなしで! 藤山さんは何も悪くないから! というかさ~、揶揄っているって分かってよー」


花咲君が降参というような感じに両手をあげてそう言ってきた。

・・・って、揶揄っていたのかい。


「おい」

「うん。ごめん」


そう言って花咲君は頭を下げたのでした。顔を上げると真面目な顔で訊いてきた。


「本当に覚えてないの、昨夜のこと」

「あー、そのね、佳純さんがルールを決めたらって言ったでしょ。そのあと、私の部屋の荷物の話になったわよね。そこまでは覚えているんだけど・・・」


それを聞いた花咲君は溜め息を吐き出した。


「ごめんな。姉貴があのあともう2杯飲ませてたから、そのせいだな」

「え~、あのあとまだ飲んだの私」

「多分ワインを4杯」

「今までで初かも、そこまで飲んだのは」

「本当に弱かったんだな。すまない」

「あー、もういいよ。それより私はなんで服を着替えているの」


そう言ったら花咲君が昨日のことを話してくれた。


私は始終ニコニコとワインを飲みながら話をしていたそうだ。顔は赤いけど受け答えをちゃんとしていたとかで、そこまで酔っているとは二人は思わなかったそうだ。話しも弾んでいつの間にか10時近くになったので、どうせなら泊まっていってということになり、佳純さんが服を貸してくれたということだ。

それに、10時と夜中の2時の子猫たちへのミルクやりに私も起きてきて、花咲君と一緒にあげたとか・・・。今朝も6時にミルクをやるのを起きると言っていたから、花咲君は私の様子を見がてら、朝は自分だけでやると伝えようとして、部屋にきたら私が目を覚ましたということらしい。



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