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そのあと、私が家に部屋が決まったことを連絡して、母と佳純さんが話しをした。佳純さんの説明の後、電話を変わったら母にこう言われた。
『丹亜、良かったわね。猫17匹との生活ですって~。私もできればもう何匹かと生活したいわ』
「お母さん、お父さんが泣くからやめてね。でもいいのかな」
『そうねえ。だけど花咲家の事情もあることだし、お言葉に甘えましょ。引っ越しの日を決めたら手伝いに行くわよ』
「よろしくお願いします」
『少しは片付けているの』
「もちろんやってたよ。もともと置いてある物は少ないし、ベッドはないから大きいのはテレビと冷蔵庫ぐらいかな」
そう母と話していたら、花咲君の声が割り込んできた。
「冷蔵庫ってどれくらいなの? なんなら俺が車出すよ」
「えっ? 免許持っているの」
「一応ね。猫たちもいるし、取っておくに越したことないからさ」
『どうしたの、丹亜』
「えーと、花咲君が荷物を運ぶために車を出してくれるって言っているの」
『・・・それならそうしてもらいなさい。冷蔵庫はそちらのうちには必要ないでしょ。家にもって帰るわ』
「テレビは?」
『お部屋を見せてもらってから考えなさい』
「それもそっか」
『じゃあ、日を決めたら連絡してね。大家さんには私から連絡しておくわ』
「ありがとう、お母さん」
電話を切った後、私が使う部屋に案内された。2階の部屋で佳純さんの部屋の隣の空き部屋だった。8畳はあるそうだ。フローリングの床にクローゼットもあった。・・・けど、なんでベッドがあるんだろう。他には何もないけど。
「この部屋はね、母方の従姉がこっちの大学にいた時に使っていたのよ。戻る時にベッドは要らないと置いていかれたの。よかったら使ってね」
そう佳純さんが説明してくれた。
そのあと夕食を一緒にと佳純さんが言うので、一緒に食べることになった。何故か花咲君が用意をしている間に佳純さんと子猫の世話をしにいったの。
佳純さんは私が子猫の世話をするのを目を丸くして見ていた。チビ達の排泄を済ませた後、ミルクを与えていく。一生懸命に乳首に吸い付いているのが可愛くてしょうがない。
「本当に慣れているのね。俊哉よりも頼りになるわ」
「そんなことないですよ。花咲君もいい手際をしてましたよ」
「ああ、うん、そうね」
なんか佳純さんの表情が浮かないように見える。子猫にミルクをあげながら、心ここにあらずというか・・・。
「ねえ、藤山さん。改めて聞くけど、本当にいいの」
「えーと、何がでしょうか」
「だから、この家に住むことよ。こちらがお願いしておいてなんだけど、猫のためとはいえ俊哉と暮らすわけでしょ。同期とはいえ、異性と暮らすのは嫌なんじゃないかと思ったのよ」
佳純さんの言葉にう~ん、と考える。あの恥ずかしい妄想は置いておくとしても、確かに異性と暮らすなんて、お昼前まで考えてなかったよな~。
「あとね、藤山さんから見て俊哉ってどうかしら」
「えっ? どうとは・・・」
「だから恋愛の対象かどうかよ」
「恋愛の対象ですか・・・」
私のことよりも、そもそも私は花咲君のタイプではないだろう。花咲君がよく構っていた女の子達は、小さくてふわっとしたかわいい感じの子だった。私みたいに背が高くてガリの細で貧ぬーは彼のタイプから一番遠い事だろう。
「私よりも花咲君のタイプじゃないでしょう」
「あら、そんなことないと思うわ。藤山さんはキレイだもの」
「いえいえ、そんなことないですよー。まあ、でもいまは、恋愛のことは考えるつもりはなかったから、花咲君のことを対象にするつもりはないですね」
私の返事に佳純さんは黙ってしまった。もしかして、弟のことを対象外と言われて気分を害してのだろうか。
「そう、わかったわ。それなら二人で生活をしていくうえで、面倒が起きないようにルールを話し合って決めることを勧めるわ」
「ルールですか」
「ええ。藤山さんには気持ち良く過ごして欲しいもの。猫のことは気にかけて欲しいけど、だからって縛られては欲しくはないからね」
「そうですね。分かりました」
子猫のお世話が終わって母屋に戻ると、まだ夕食は出来上がっていないからお風呂に入ることを勧められた。着替えも佳純さんのものを貸してくれると言われたけど断った。代わりに夕食作りを手伝うと言ったけど、花咲君の様子を見ていたら邪魔にしかならないのが分かって諦めた。
おとなしくリビングで佳純さんと話をしていた。話題は私の部屋がどんなものかということだった。私の部屋に置いてあるものは、少ないと思う。服も冬服が上下5着ずつ。最初は3着ずつだったら、友人に少ないと怒られた。夏服の方が多くて7着ずつだ。靴はスニーカーが2足。パンプスなんか持っていない。というか、合わせるような服がない。
そんなことを話したら、佳純さんの部屋に連れていかれた。佳純さんは服飾の仕事をしているそうで、佳純さんがもう着ない服をいくつか体に当てられた。着替えさせられそうになった時に、花咲君の「出来たよー。冷めないうちに食べようよ」という声で、台所に戻れてホッとしたのは内緒だ。




