表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の・・・同居人  作者: 山之上 舞花
第一章 部屋探しで見つけたものは
1/19

猫好きの方にとって、萌え萌えになる様に頑張ります。

 その張り紙を見つけたのは偶然だった。


『 急募! 

 同居人求む!

 条件 猫の世話が出来る方 

 委細 面談にて!』


 張り出されていたのは、素敵な一軒家の門の横の壁。

 私はしばらくその紙を見つめていた。


 どうしよう。すごく気になる。なんといっても猫と生活できるというのがうれしい。

 でも、この紙には肝心なことが抜けている。連絡先が書いてない。

 ということは、この家に直接尋ねるしかないのだろうか。


 しばらく門の前で固まっていたら、不意に声を掛けられた。


「あれ~、藤山さんじゃないの。こんなところでどうしたの」

「えっ。は、花咲君? 花咲君こそどうしてここに?」


 声を掛けてきた人を見て驚いた。彼、花咲俊哉(はなさきとしや)君は我が大学の有名人だ。爽やかなイケメンで、男女ともにモテていた。

 私が彼と知り合ったのは、去年取った講義のうち3つが彼と重なったから。


「俺?この近くが家なんだけど」

「そうなんだ。偶然だね」


 そう言いながら、私の視線は張り紙に戻っていた。


「もしかして部屋を探しているの」


 私が見ているものに気がついたからか、花咲君が訊いてきた。


「そうなの。ひどいよね。まさか3年から学部の移動があるなんて思わないじゃない」


 そう、私がさっきから張り紙に見入っていたのは、私が通っていた大学の学部が、区内から区外に移動になったからなの。おかげで部屋を探さなければならなくなったのよ。これが、入学した時に分かっていたのなら、文句はない。それが去年の夏期休暇が終わったら、突然告げられたのだ。翌年の4月から移動になると。確かに区内のキャンパスは建物が老朽化してきていた。だからってこれはないよね。


「そうか、部屋をね。・・・ところで藤山さんは猫が好きなの」

「猫? もちろん好きよ。実家には私と同い年の子と8歳の子ともうすぐ1歳になる子がいるのよ」

「同い年って20歳? すごいなあ~。猫も室内飼いならそれくらいは長生きする子もいるよね」

「そうね」


 と答えたものの、ん? となる。花咲君も猫に詳しいの?


「ここで立ち話もなんだから、家に入らない?」


 そう言って彼は張り紙の家の門を開けたのだった。


「どうぞ」

「ええっ~!」


 門を押さえて振り返った彼に大声をあげた私は悪くないよね?



 彼について家の中に入った。玄関は普通の純日本家屋という感じだった。靴を脱いでついて行くと廊下も座敷も普通の感じで猫がいるように見えなかった。廊下を曲がって突き当りに扉があった。けど、その手前の台所に彼は入っていった。


「藤山さん、何か飲む?」

「えーと、お構いなく?」

「何で疑問形なの。それじゃあお茶でいいね」


 そう言って花咲君は手慣れた様子で、急須にお茶の葉を入れてお湯を注ぎ、湯呑に注いでいた。私は席を勧められて椅子に座った。その私の前に湯呑が置かれたのよ。


「ところでさ、確認なんだけど、藤山さんはこっちのキャンパスに通うことになるから、部屋を探しているでいいの」

「う・・・うん。そうなのよ」

「で、見つかったの?」

「ううん、まだ」


 そう答えたら花咲君は顎に手を当てて考えだした。しばらくしたら、顔を上げて私の顔を見てきた。


「藤山さんはあの張り紙をみてどう思ったの」

「えーと、もし猫と同居できるのなら、うれしいなぁ~って、思ったのね」


 私の答えにフッと花咲君が笑った。その笑顔に不覚にもドキリとした。


「じゃあさ、猫の世話をするのは嫌じゃないんだね」

「もちろんよ。目が明くかどうかの赤ちゃん猫の、お世話もしたことがあるのよ」


 そう言ったら、花咲君は椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がって言った。


「本当に? じゃあさ、悪いんだけどちょっと手伝ってよ」

「えーと、いいけど」


 私が言い終わる前に花咲君はテーブルを回って私のそばにくると、私の右手首を掴んで歩き出した。


「ちょっと、花咲くん」

「いやー、助かった。ほんと、どうしようかと思っていたんだ。拾い主の姉貴は急な転勤で明後日にはいなくなるし、子猫の面倒なんて、俺一人でどうしていいか困っていたんだ」


 そのまま、さっき見えた扉を通り、もう一つ扉を通って別の部屋に行った。


「うわぁ~!」


 その部屋に入って目に飛び込んできた様子に驚いた。そこは猫天国(ニャンコパラダイス)だった。部屋の中のあっちこっちに猫がいる。毛の長い子から、短い子。三毛にトラに斑にブチ。もちろん真っ白と真っ黒な子もいる。えっ?もしかしてブルーグレーのあの毛並みは、まさかのロシアンブルーなの?


 つい見とれて足を止めたら、花咲君に手を引っ張られて、次の部屋へ。そこにも猫たちがいた。その部屋を抜けて、もう一つ別の部屋に行った。そこはエアコンをつけてあって、ついでに加湿器も動いていた。テーブルの上にケージのようなものがあり、その中に箱がおいてある。花咲君は部屋の扉をしっかり閉めると、テーブルのそばに行った。ケージをどかすと中の箱を私のそばに持ってきたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ