7.救出
四人を乗せた車は隆の運転で道沿いの街灯が点きだしていた中を走っていた。車中では隆が先ほどまであったことを説明してた。
隆「んでダイナマイトで吹っ飛ばしてやってその後はひたすら撃ち進んで来たんだけど階段の近くまでは効いてなかったみたいで結構ゾンビがいたんだよ。突破は無理そうだったからまたダイナマイトの出番で、吹き飛ばした後一樹に会ったって訳。」
一樹「危うく俺まで巻き添え食らうとこだったじゃねぇか!」
隆「まぁそぉ怒るなって、そんな事より一階にいた奴等は本当に一樹一人でやったのか?」
正志「そぉなんですよ一人でゾンビの群れに走って行ったと思ったら次の瞬間にはそこにいたゾンビ共を全員やっつけてまた次にって感じで凄かったんですよ!何度かやばい時もあったんですけど木刀を手にしてからがまたすごいのなんのって。」
正志は初めておもちゃを貰った子供のような顔で唾が飛ぶのも構わず説明した。
一樹「無我夢中でよく覚えてないんだけどな。」
隆「昔っからそぉゆう事あるよなお前は。んでそん時正志は何してたの?」
正志「いや、あの、一樹さんが危なくなった時援護したんですがゾンビに全く当たらなくて...すいません。あっそうだ一樹さんこれ落としたままだったんで拾っておきました。」
正志は一樹に空のマガジンを三つ一樹に渡した。
一樹「悪い、助かるよ。」
隆「まぁあやまる事ねぇよ正志がいなかったら俺等だってここにいないんだからな。」
一樹「そぉだ今回こぉなったのはこいつのせいなんだからな。」
一樹はそぉ言うと運転席の後ろ側を軽く蹴った。
隆「だってよぉ、もし間に合わなかったらみんなやられちまったかもしんないだろ?だからさぁ...」
梨乃「すいません、私が悪いんです。私がいなければみなさんは危険な目にあわなかったのに...」
隆「梨乃、そんな事言うなよ。あの時はあれでよかったんだ、みんな無事だしそんな事思ってる奴なんかいないよ。」
一樹「い〜や不満大有りだね!」
正志「うん、その通りだね。」
二人は隆が運転席から伸ばした手を助手席に座る梨乃の肩に置いてフォローしているのを見て言った。
隆「お前等よくそんな酷い事言えるな!梨乃がどんな思いをしてきたかわかってんのか。」
一樹「その事に対してじゃぁねぇよ!その人がどんな辛い思いをしてきたのは見ればわかる。ただ一つだけ気に入らない事があんだよ!」
隆「気に入らないってなんだよ?」
一樹「違和感なく梨乃って呼び捨てにしてることだよ!こっちは名前もなぁんも知らねぇのにさぁ。」
隆はえっ?とゆう表情をして梨乃を横目で見て顔を赤らめた。
正志「さり気なく肩にまで触れていましたぜ親分。」
一樹と正志は細めた目で隆を見ながら言い、隆は慌てて自己紹介をした。
隆「え〜っとこちらは多古 梨乃さん24才で一樹と同じ今日が誕生日で、警察官で俺等とタメだ。」
梨乃「宜しくお願いします。あのさっきはすいません、お怪我ありませんか?」
後ろに振り向き会釈をしながら一樹に言った。
一樹「大丈夫だよ、ちょっとビックリしたけど防弾チョッキ着てたしね。それにどうせ死ぬなら君みたいに可愛い子に殺される方が幸せだしね。誕生日も同じだしなんか運命とかだったりして。」
隆が軽く咳払いをして話しの間に割って入るように続けた。
隆「こいつがさっき話した岡村 一樹それとこっちの青と白の囚人服っぽい服着てるのが江田 正志18才高三だ。」
正志「囚人は酷いですよぉバイト中にこんなことあって着替えるの忘れてたんですからぁ。」
隆「ここにくるまでにずいぶん偉くなったもんだな最初はびびりまくって震えてたお子様だったのにな。」
さっきの仕返しと言わんばかりに正志をからかった。
正志「隆さんだって俺が危ない時ボロボロ泣いて正志死なないでくれ〜って叫んでたじゃないですかぁ。」
隆「そんな事言ってねぇだろこのやろ!」
正志「へへ〜んだ、こっちこれるもんならおいで〜だ。」
正志は隆に舌を出してからかっていて隆は後ろを振り向いて正志を睨んでペットボトルやタバコを投げつけていた。
一樹「前ちゃんと見ろ、何かあってからじゃ遅いんだぞ!正志もそのぐらいにしとけ。」
隆「うぉっと!」
隆は正志とやりあってると車は蛇行運転になっていたが一樹の一言で前を向き体勢を持ち直した。
一樹「全くこいつらはこんな時なのに緊張感ってもんがないよなぁ。」
一樹が大きく溜息をついて言うとそれに笑っていた梨乃が言った。
梨乃「でも良かったまたこうして笑えるなんて思ってもいなかったもの。隆さん、一樹さん、正志さん、本当に感謝してます。」
一樹「いいんだよ、人間一期一会だ。あと俺等はもう仲間だからこれからは助けられてもお礼を言う事なんてないよ。それと俺も梨乃って呼んでいいかな?俺もさん付けじゃ落ち着かないしな。」
正志「自分だけ抜け駆けはないよぉ、ねぇ梨乃〜。ってか俺ん時はそんな事言わなかったじゃないですかぁ!じゃぁ俺も今度から一樹って呼ぼぉ。」
正志が助手席に座る梨乃に近づきながら言った。
一樹「お前はダメだ。」
正志「え〜なんで俺だけダメなのぉ。」
一樹「男には先輩後輩とか上下関係ってのがあるんだよ。」
正志「そんなぁ〜。」
一樹は正志に厳しい先輩風を吹かし、正志は残念そうに口を尖らせて落ち込んだ。
梨乃「正志君良いよ、梨乃って呼んでも。」
正志「マジ?いいの?」
梨乃「ねぇいいでしょ?一樹。」
一樹「全くしょぉがねぇな。」
一樹は頭を軽く掻き笑いながら言った。
隆「なぁんか俺だけ仲間外れにしてない?どこ行くのも運転手って損だよなぁ。」
梨乃「そんな事ないよ。隆には一番感謝してるのよ。」
隆「おっ...おい正志、道はまだまっすぐか?」
隆は恥ずかしさを隠すため前を向いたまま正志に言った。
正志「そぉですねまだまっすぐ行って下さい。そうすると左側にガソリンスタンドがあるんでそこを右に曲がってください。」
隆「了解!」
四人を乗せた車は目的地に向かい走っていた。日は大分落ちあと少しで夜になろうとしていた。現在18:40
正志「次を左に行ったら右側に見えるんですが。どうしましょう比較的裏道なので奴等は少ないですけど、どうやって家に入りましょう。」
一樹「バリケード作られてても何とか入り込めるだろう、二階とかから。」
正志「そぉ...ですよね。」
一樹「なんか言いたそうだな?なんかマズイ事でもあるのか?」
隆「左曲がったぞ。そろそろか?」
正志「左に見えるのが僕の家です。」
隆「左って壁しか見えねぇぞ?」
正志「それウチの塀です。」
隆「えっ!?結構先まで続いてるぞこの塀。」
その塀は長くおよそ100m以上はあり高さは4mをはあった。
正志「多分正面玄関も、裏口も開かないと思うんで塀を乗り越えるしかないんですけど、どうしましょう。」
隆は驚きを隠せないのか黙っていた。
正志「一応裏口行って見ますか?」
車は裏口に着き車を停めると一樹が飛び出し近くにいたゾンビを木刀で頭を叩きつけ絶命させた。
一樹「よし、いいだろうここにはもういないみたいだ。」
一樹は辺りを見渡すと合図を送り車からみんなが降りてきた。
正志「やっぱり開いてない。どぉしよう。」
一樹「この扉はどうやって鍵かけてるんだ?」
正志「ここの鍵は裏から閂をかけてあるだけなので中に入れれば簡単に開けれるんですけど。」
一樹「わかった。」
一樹は急に車に向かって走り出しそのまま車の屋根まで駆け上がるとそのまま塀に一歩、二歩、三歩とかけあがり意とも簡単に4mはあるだろう塀によじ登り中が安全なのを確認すると向こう側へと消えた。
その時ゴトゴトと音が鳴りその後ゆっくりと裏口が開き一樹が手招きをしていた。
隆「今更だがあいつ本当に人間離れしてるよなぁ。」
正志「僕だってもうこんな事じゃ驚きませんよ。」
唯一始めてみた梨乃は目を丸くし一樹が駆け上がり越えていった場所と裏口にいる一樹を交互に見ていた。
隆「梨乃!入るぞ。」
梨乃「はっ、はい。」
四人は正志の家に入るとまた同じように裏口を閉め奥に進んだ。
隆「こりゃすっげ〜広いな!道場って儲かるんだなぁ。」
正志「僕は経営は良く分からないんですが結構代々伝わってきている土地らしいですよ。でも父が倒れてからは門下生が少なくなってしまったので、経営やばいのかな?」
正志は軽く苦笑いをして母屋に向かい歩いていた。
一樹「親父さんは病気か何かで?」
正志「それが分からないんです、去年から体調を崩し始めどこの病院へ行こうが原因が分からないの一言でした。」
一樹「そうか、余計な事を聞いて悪かった。」
正志「いいんです気にしないでください。あっ見えました、あそこです。」
正志が指差すところに辿り着いたそこには一般家庭の4個分ぐらいの二階建てで瓦屋根の母屋が建っていた。
一樹「やっぱりぜんぶ鍵が閉まっててバリケードをしてるみたいだな。正志なんとかならないか?」
正志「ちょっと呼んでみますね、お〜い!母さ〜ん!莉奈〜!」
正志は何度か呼んでみるが何も反応を示さなかった。
正志「あれ?おかしいな?必ずあそこに誰かしらいるんだけどなぁ。」
隆「まさか思いたくないがもう...」
正志「そんな事ないですよ!どこか違う部屋にいるんですって、きっと...」
すると窓から何かがこちらを隠れながら覗く物がいた。
女の子「やっぱお兄ちゃんだ!お母さ〜ん、お兄ちゃんが帰ってきたよぉ。」
それは正志の妹であった。
正志「莉奈!良かった無事か?」
莉奈「うんみんな大丈夫だよ。今お母さんが鍵開けに下りたよ。」
少しして中に明かりが付き玄関のバリケードを崩しているのかガラガラと激しい音を鳴らし玄関は開きそこには純和風な感じの和服を着た女性がいた。
正志の母「正志...」
正志の母は駆け寄って正志に抱きつくと涙を零し力強く抱きしめた。
正志「ちょっ母さん痛いって、ほらみんなも見てるし。」
正志の母はゆっくり正志から離れるとみんなの存在を知り急いで涙を拭い顔を赤くしていた。
正志の母「私ったらみなさんの前でなんて事を。」
一樹「いいんですよ、親が子を思う気持ちは当たり前の事なんですから。良かったら中に入っても?」
正志の母「ありがとうございます。どうぞお入りください、みなさんの事を主人もお待ちしていますから。」
正志「父さんが?まぁみんな上がってください。」
3人は家に入るとその広さに圧倒された。敷居を跨ぐとそこには古いのではなく赴きがありこんな時でも清掃も行き届いていた。
隆「玄関が普通の家と変わらない広さだぞこりゃ。」
梨乃「でも正志君おぼっちゃまには見えないわよね。」
隆「最近の高校生なんてあんなもんだよ、髪染めてピアスなんてしてない方がおかしいくらいじゃないか。」
梨乃「やっぱそぉなんだねぇ、補導される子もそんな感じの子多いからなんか複雑。」
一樹「今の世の中真面目な奴の方が殺人をしたりしてるから一概には何とも言えないがな。」
階段を上がり廊下を進み一樹が正志の母に聞こえないように言った。
一樹「中にいる噛まれた奴が少しでも怪しい行動を取ったら躊躇するなよ!」
隆「わかった。」
正志「はい。」
正志の母「みなさんここです、中に入ってくつろいでいて下さい、今お風呂の支度とお茶をお持ちしますので。」
一樹「お構いなく。」
三人は部屋に入るとそこには先程窓から覗いていた女の子が立っていた。
莉奈「お兄ちゃんおかえりぃ。」
急に抱きつくと正志はその勢いで隆を巻き込み倒れてしまった。
正志「痛ぇ、コラ莉奈!早くどけ!」
莉奈「やだよぉだ!すんごい心配したんだからね。」
莉奈は短いスカートを履いていたが仰向けに倒れる正志の上にまたがっていた。
隆「痛たたた、コラコラじゃれるなら向こうでやってきなさいお嬢ちゃん。パンツも見えてんぞ。」
莉奈「大丈夫だよおじさん、別に見られたって減るもんじゃないしね。」
隆「おじさん!?」
隆は腰を抑えながら立ち上がり一樹を見てがっくりと肩を落とした。
正志「バカ!お前隆さんに何て事言うんだよ。」
一樹「莉奈ちゃんだっけ?申し訳ないんだがおじさん達お兄ちゃんに話しがあるから離してもらえないかな。」
すると一樹を見た莉奈は急にスカートを抑えて立ち上がった。
莉奈「始めまして、江田 莉奈です。16歳高一です。彼氏はいません。お兄さんは彼女ますか?」
一樹「いないけど。」
莉奈「じゃぁ私と付き合ってください。」
四人は口を開けたまま呆然としてしまった。
正志「お前さっきからなんなんだよ!みんなに失礼だろ!」
莉奈「なんかビビッってきちゃったんだもん。」
正志「ビビッじゃねぇよ全くみなさんすいませんこんな妹で。」
梨乃「いいんじゃない、素直ないい子で。」
隆「一樹はお兄さんで、俺はおじさん...」
唯一隆だけ落ち込んでいた。
五人はテーブルを前に座り休むことにした。莉奈は一樹の隣に座り異様なまでにくっついていた。
正志「こちらが一樹さんで、こちらが隆さんで、こちらの女性が梨乃さんだ。失礼がないようにしろよ。」
莉奈「一樹さんって言うんだ。みなさん莉奈です、よろしくお願いします。おじさん達とお兄ちゃんってどぉやって知り合ったの?」
隆「またおじさんって...」
梨乃「私だってあの子からしたらおばさんなんだから気にしないの。」
莉奈「警察官のお姉さん、梨乃さんでしたっけ?おじさんと付き合ってるの?」
梨乃「えっ?付き合ってないわよ、それがどうしたの?」
莉奈「もし付き合ってたら梨乃お姉さんとおじさんとじゃ釣り合わないなぁって思って。」
隆は尚も余計に落ち込んだ。
隆「やっぱ俺だけおじさん...生まれてこなきゃ良かった...」
梨乃「そんな事ないよ隆、ほら元気出してってよしよし。」
梨乃は隆の頭を子供のように撫で元気付けていた。
正志「莉奈〜!お前さっきから隆さんに恨みでもあるのか?」
莉奈「別に、普通だよぉ〜。」
一樹「さてそんな事より莉奈ちゃんに聞きたいことがあるんだが。」
莉奈「そんな、莉奈って呼んでください。」
一樹「じゃぁ莉奈に聞きたい事があるんだけどいいかな?」
莉奈「何でも聞いてください。」
一樹「まずお父さんはどこに?」
莉奈「具合が悪いので隣の部屋で横になってます。」
一樹「そうか、あと怪我をした人がいるみたいだがその人はどこに?となりか?」
莉奈「なんか具合悪くなったからって横になってくるって言ってました。」
一樹「わかったありがとう、梨乃はここに莉奈と待っててくれ。」
梨乃「わかった、気をつけて。」
一樹「隆!顔上げろ!行くぞ。正志、隣の部屋に行くぞ、案内頼む。」
正志「わかりました、行きましょう。」
莉奈「何?私も一樹さんと行く〜!」
一樹達に着いて行こうとする莉奈を力ずくで梨乃を抑えた。
梨乃「女は黙って男の言う事を聞くものよ。まぁ時と場合によるけどね。」
三人は部屋を出て手にはコルト・ガバメントを手に隣の部屋に向かった。