14.病院
この回は少し短くなっています。
午後八時を回りいつもなら人通り少なく静けさの中に佇む建物は今日ばかりは違っていた。
辺りには力なく歩く人であった物は異様な声と共に傷ついた箇所から血を垂らし何かを探し彷徨っていた。
そこから少し離れた所に建物の様子を伺いながら身を隠してる一樹がいた。
一樹は携帯を取り出して見ると一件のメールがあった。
「直美!」
一樹は我を忘れてメールを開くが直美ではなく信だった。
『みんなどこだ?電話繋がらないからダメかもしれないがメールしておく。届いたらメールくれ。』
一樹は信が無事だった事が分かるとホッとし信に返信した。
『みんな無事だ、安全な所に隠れて隆にもメールしてやってくれ。』
メールを送信するとまた辺りを見回しながらゾンビに見つからないように建物へと近づいていった。
あと数十メートルの所にくるとその建物の横に第一総合病院と書かれた看板が見えた。
ガラスで出来た自動ドアの中は明かりはついていて一階のロビー部分見渡せるがそこには数体のゾンビが見えるだけで生存者は見当たらなかった。
一樹は病院の上層を見ると所々部屋の明かりを見るとそこのどこかに直美が居ると信じ、突破するタイミングを伺っていると静寂の中携帯のバイブ音が鳴り響き近くにいる一体のゾンビが振り向き一樹は見つかってしまった。
一樹は両手にコルト・ガバメントを装備すると一気に病院の自動ドアに向かって走りだした。
それに気づいた他のゾンビも足取り重く一樹の進路を妨害するかのように両手を前に出し捕まえようとするが持ち前の身の軽さでゾンビの間をすり抜けていきすぐに自動ドアまで辿り着いた。
機械音と共に自動ドアが開くと中にいたゾンビが気づき一樹に近寄ってきた。
ロビーは結構な広さがあり外からでは数体しか確認出来なかったが中に入ると予想以上の数がいて驚きを隠せなかった一樹は一瞬固まるがすぐ我に返り一樹は振り返ると外に飛び出した。
外にいたゾンビももう数メートルまで近づいてきていた。ロビーにいるゾンビも刻一刻と迫ってきていた。
一樹は両手に持っていたコルト・ガバメントを二丁ともズボンに差し込むと横に走り出し病院の壁に上へと続く配管に手をかけよじ登り始めた。
ゾンビの集団は一樹の登る配管まで来ると手を上に突き出し一樹を掴もうとするが既に届く位置には居なかった。
二階の明かりのついていない窓に辿り着くと中を確認するとそこにはシーツ等が置いてあり人影は確認できなかった。そのまま上に登ろうとしたが下に群がるゾンビが配管を掴み激しく揺さぶり始めていて配管を止めているボルトが抜けてきていた。
このままじゃ落ちてしまうと感じた一樹はそこの窓に手をかけると運良く鍵はかかっておらずすんなりと中に入れた。
同時に丁度一樹が居た位置から配管は折れて落下した。
ズボンに差していたコルト・ガバメントを手に取り部屋の中を探索し安全を確認すると通路に通じるスライド式のドア取っ手を握ると少しだけ開き外の様子を伺った。
すると通路を埋め尽くす程のゾンビがいてドアが動いたのに気づいたゾンビがこちらに向くと一樹と目が合い咄嗟にドアを閉めるが激しい音を立ててドアを叩き始めた。
一樹は取っ手を力一杯握り開かないようにしたが長くは持ちそうになかった。近くに畳まれて置いてあったシーツが目に入り手を伸ばしなんとか手に取る事が出来ると取っ手に巻き横にある棚に縛りつけなんとかその場を凌いだ。
「なんなんだこの数は!?」
一樹は驚愕し直美の安否も不安になったが自分に残された時間がない事を考えると例え生きていなくても限られた時間直美を探す事だけを考えようと決意した。
ドアを叩く音が少し弱まり一樹は携帯を取り出してみるとメールが二通着ていた。
信『一樹どこにいるんだ?隆と直美は返事こねぇし。こっちも色々あって大変だったんだぜ!今そっちに向かってるよ。』
兄貴『一樹無事か?』
一樹はメールを読んでいると突然激しい音が鳴るとドアが外れ隙間から何本もの腕が伸びてきた。
「やっべぇ!」
部屋を見渡すが他に逃げ場はなく窓に向かい外を見るが配管は途中で折れていて手は届きそうになかった。
一樹はおもむろにシーツを手に取りまたしても窓に向かいシーツを捻り先端を小さく縛ると配管を支持するボルトに向かって投げつけた。
すると配管とボルトの隙間に上手く通り先端をキャッチすると同時にドアは倒れ中に数え切れないほどのゾンビが入ってきた。
一樹は後ろを振り返ると窓に足をかけ外に飛び出すとシーツを掴んだまま宙吊りになりなんとか足を壁にかけ配管まで手が届きまた上へと登り始めた。