第三章 サブリミナル 2
校門から出てきた二人を迎えたのは校庭の前にホバリングしているあからさまな軍用の人員輸送ヘリだった。旋風が吹き荒れる中、村瀬と拓海は腰を落としつつ全速力で校門へと向かう。どうやら、彼らはこっちに気付いていないらしい。山に囲まれたこの高校は、ヘリをぶっとばしてても気づかれる事はそうそうない。
「やつら、ついに強硬手段に出たな」
「ああ、同じ身内だったと思うとゾッとする。」
「だが、これで奴らの足もとろう・・・」
に終わったな。と言おうとした拓海を遮るのは、右手に拳銃を持った一人のサングラス男。・・・・ではなく
『何やってるの、聖馬っ。なんで校長を連れだしてないのよ!』
へ?
『さっき言ったじゃない。奴らがここに到着するまで二分もない。だから速く外に校長と一緒に逃げて。こっちは増援送るから。って。』
さっきは焦って急いで一切話が頭に入ってこなかった。
『今からでは間に合わないかもしれないけれど、すぐに校長の所へ行って守ってあげて』
幸い、ヘリはまだ空中でホバリングしている最中。相手の戦闘員は未だ降りて・・・
バババババババババババ
突然、ヘリの内の一つが扉を開け放ち、中からでっかいガトリング砲が突き出され、豆まきの高速バージョンの様に銃弾がまき散らされた。当然何の加工もされてない一私立高校の窓なんかは呆気なく割れる。
「どうやら、時間は待ってくれないようだな」
「ああ」
ヘリからワイヤーが飛び出て、破れた四階の窓枠に引っかける。そこから何人もの黒い戦闘服を身にまとった男達がワイヤーに曲がったものを引っかけて滑って行くのと同時に、ヘリからサブマシンガンやらアサルトライフルやを持った男どもがはしごを使って下りてくるのを最後に、二人はもう一度校舎に飛びこんだ。
時は遡り、校長室。
二人の若者を部屋から閉め出した後、一人でお茶を入れ直した紫藤は彼らにウソをついた事を後悔していた。いや、もう彼らは偽の情報をとっくの昔につかんでいたのかもしれない。だが、もう今の紫藤には彼らを呼び戻すだけの時間と体力はない。
「フフ、私も老いたな。」
そこで、校長はバラバラバラというヘリコプターのプロペラ音が聞こえた。普通なら聞き流すが、彼には四台もの重厚な音を聞いたのだ。いささか不審に思い、窓に引かれたカーテンの隙間から外を望む。
そこには夕日をバックにした大型ヘリコプターが四基並んで飛んでいた。
始めてみる軍用ヘリに、顎が外れながらも本能がなせる行動は起こせた。簡単だ。元「裏」の研究員を豪語している紫藤は校長室にある本棚をあさり始めた。バラバラ、と分厚い本や辞書が床に落ちる。なにも、「軍用ヘリの落とし方」とか、「テレポートの仕方」を探している訳でもない。
ほとんどの本が床に投げ出された後、ようやく紫藤はお目当ての物を見つけた。そこにあるレバーを握り、思い切り引く。
ガコン
言ってはいけないあの人がいる超有名マジックファンタジー映画「張り手のポン太」通称、張りポ太よろしく、近くの壁が、開く。その中には一カ月生活することができる物資と武器を入れた六畳半ほどの小部屋が現れた。なんという不思議。これが魔法なのね。
そんな気持ちとは正反対な焦り具合で中に入り、壁を閉める。真っ暗な小部屋の中、手探りで探り当てた照明をつけるのひもを引く。
同時に、携帯から愛娘の番号を探り当て、電話をする。いまごろ家に帰っているはずだ。
トルルルル、トルルルル
ツッ
繋がった。
「もしもし、パパだ。いいか、よく聞け。まず、家から離れ・・・」
『ん、この年でまだパパだなんて呼んでたのか?さっきまであんなに強気だったのによー』
電話に出てきたのは愛娘とは全く違う音域の低い男性のトーン。それだけで紫藤は全てを悟った。
「・・・娘に代わってくれ」
『なんて言った?聞こえないな~』
「頼む、このとおりだ。変わってくれ」
『この通りってどの通りだよ。テレビ電話じゃないんだよ。まったく笑わせたり泣かせたりと面白い父親だな』
「娘には何もしてないだろうな」
『この通りぴんぴんしてるぜ。拳銃を突きつけただけであっけなく丸めこむ事が出来たよ。』
「お前の方こそどの通りだ。」
『おっと、いいのか。そんな口を聞いても。いまからこいつをこいつの母親のもとへ逝かせたっていいんだぜ。』
カチャと拳銃を突きつける音とんむ~というくぐもった声。間違えようもない愛娘の声だが口にテープでも張られてるらしい。
「やめろ!手は出すな。分かった。要求はいくらでも飲む。だから、殺さないでやってくれェ・・・」
最後は懇願だった。恥もプライドもとっくの昔にぶっこわれている。
『いいだろう。俺の部下が今そっちに向かっているはずだ。校長室で待ってろ。何をされても大人しくしてろよ。そして、お前の家で集合だ。それから、人気のない場所へ行く。』
そこで電話は哄笑と共に断ち切られた。同時に銃弾がばらまかれる音とガラスが割れる音が相次ぐ。壁を一枚挟んだだけの職員室から残っている教師陣の悲鳴が聞こえる。だが、もう紫藤にはどうでもよかった。最愛の妻に加え、娘までなくすとなるともう自分には残すものが無い。生きる糧を失うのと同じだ。そう思うと涙がこみ上げてくる。
やがて、ドアが開く音がした。やつらはもうここまで来たのか。そう思い、じっと息をひそめる。ここにいる限り、ばれる事はないだろう。どうせ、娘と会うためには出ていかなければならないが、せめてもの抵抗だ。
でも、その抵抗はあっけなく違う方向に鎮圧されてしまう。
見慣れた校長室が先程と変わらぬ状態で現存している。だが、そこに立っているのはいく人もの屈強な男たちではなく、立った二人の青年だった。
校長室に飛び入り、校長の姿を探す。だがそこには乱れ落ちた本があるだけであり、先程とはさほど変わっていなかった。本の乱れ具合からもう校長は、とも思ったのだが、そうでもないようだ。いまだに「裏」の戦闘員は上の階にいる。一階から二階に上がる俺達とは違い、奴等は四階から三階そして二階と来なくてはならないため時間が多くかかる。しかも戦闘員は四方八方を警戒しながらこちらに近づいてくるためノロノロと亀のようにしかこれない。だがこちらは警戒するべきものがないため、一二の三で目的地に着いてしまった。そもそも、あんな戦闘服を着ていて、ごつい銃を持っている時点で、特殊な訓練を受けた俺達とはパフォーマンス自体比べるべきではない。こちらは火力的には皆無だが。さすがの我々も生身で銃弾を連続で避けれる気はしない。一発二発なら避けれるけど。
「畜生、何処にいるんだ。奴等は着々とこっちに向かってきてんのに。」
「落ち着け拓海。俺これ、にたようなの見た事あるんだ。張りポ太で。「表」の人間だった時はよく見てたな」
名前だけでは聞いたことある映画の名前を出されて首をかしげる。何の関係が?
「表」の事については全く疎い拓海をよそに、村瀬は映画のワンシーンを正確に再生していた。
白いひげを床まで伸ばしたダンベルダブル校長を探していた主人公ポン太はダンベルダブル校長先生の部屋にたどり着いて、散乱したダンベルを見つけた。それを、持ち前の推理力でそれはダンベル棚から人為的に落とされた事を突き止め、棚にあったボタンを押したら、壁の中でダンベルを用いて筋トレするダンベルダブル校長を見つけた。
自分が大好きな映画のワンシーンに登場する主人公のような気分になって、村瀬は棚を覗きこむ。
あったあったと呟き、何かを引っ張った。
ガコン
音と同時に本棚の隣にある壁が動き、中から光が漏れる。そこにはダンベルを持った、いや違う。膝を折った状態でこちらをあんぐりした様子でこちらを見上げていた。だが、そんなもんにかまっている間もないのも事実だ。
「き、君達なんで」
「そんな事より早く、ここから逃げましょう。さぁ、速く。こちらの組織の応援も来てますので、」
「いや、いいんだ。もう私は逃げられない。娘が人質にとられた。今から我が家に集合して、それから人気のない場所に向かう。君たちは逃げてくれ」
「おい、拓海、速くしろ、やつら、三階の階段近くまで来ている。このまま降りてこられたら厄介だぞ」
「でも、僕たちは貴方を助けに・・・」
『逃げなさい、聖馬』
「でもっ」
「いいかい、拓海君。人を助けるのはいいことだ。だが、タイミングが大事。相手の為に自分の命を無駄にするんじゃ元も子もないからね。」
「・・・」
「拓海!あいつらもう二階を下りてきた!」
村瀬の視線の先には、ひと塊りになって警戒しながらこちらに向かって歩いてくる戦闘服集団。少し素人っぽさが残っているのは下っ端だからだろう。でも、奴等の持っている武器は厄介だ。
いまいましげに舌打ちをする拓海に校長は一度隠し部屋に入って、二つの黒光りしたものを拓海に押し付けてきた。よく見る前に、その正体が分かってしまった。渡されたのは拳銃。訓練で扱ったものより、重く感じるのは校長に託された思いの分だろうか。
「私みたいなおいぼれが乱射するより効率的に扱ってくれるはずだ。これで、身を守って、そして、我々を助ける思いで握ってくれ。
装弾数は一丁十発。」
そう言って、いきなり肩を思いっきり押された。突然力強く押されたため、反応することができずに何歩も下がって村瀬に体をぶつけて二人して廊下に出てしまう。当然黒ずくめの戦闘集団に存在をばれてしまう。
いたぞ、おい、撃つな、追って拘束しろ。そういって彼らは三手に分かれる。一つは当然拓海たちを追う方。二つ目は職員室の占拠。三つ目は校長室への進攻。
「やばい、行くぞ拓海」
せかされるまま、拓海は村瀬と共に走る。
「チクショウ」
俺達を追う班の一人が村瀬の足に向けてサブマシンガンを構える。ヤバイと思い、拓海は村瀬に向かって手を伸ばすが、徒労だった。
校長が、俺達と戦闘服集団を隔てるように壁となったのだ。
「おい、まだ一般人が残ってるぞ、誰か拘束しろ。」
「バカか。奴はターゲットだ。後、一般人に向けては発砲するなと言っただろう」
有りがたいものを見るように拓海は校長の背中を見る。その背中は広くて、全てを受け入れるような寛容さを物語っている。彼は立派な父親だった。
一階に降りたのはいいものの、この先の対応の仕方が分からない。そこへ救いの手を差し伸べる声があった。
『増援は学校の外で待機させてるわ。さっきの話を聞いていた限り、今は迂闊に動かず、敵が移動するときに後をつけなさい』
「そうだ足を確保するんだ」
「えっ」
拓海は通信士の意見を横取りする。
「確か、捕まった後に校長の家に強制帰宅させられて、娘と一緒に人気のない場所に移動するって話だったよな。だから、身をひそめていて、奴等が動いたときに俺達もすぐに動けるように足を確保しなきゃいけないんだ」
他人の意見を平気で力説する。悔しい気もしないが、著作権がばれなければ別にいい。
「でも、相手はヘリだぞ。どんな足を確保するんだよ。車は大通りしか走れないし、免許ないから見つかったっら一発で豚小屋に放り込まれるぞ。」
そう言えばそうだ。相手はヘリなんだ。車じゃ柔軟な対応ができるはずがない。
「はしる、とか?」
「アホ、山田以上にアホ」
確かにバカな提案だと自覚があったが、この学校で初めてできた友達と同類にされたくない。
うーん、と二人揃えて首をかしげていると
『ヘリを奪えばいいんじゃない』
今回の襲撃作戦の輸送の要を握っている田中は、任務中にもかかわらず、バイク雑誌を眺めていた。戦闘部隊が、ターゲットを回収したらすぐにヘリを出せば問題ない。というか、周りのパイロットどもも暇つぶしに何かしているはずだ。なら自分もやって何が悪い。
といった理由で田中は今度の休みに買いに行くパーツを念入りに品定めしていた。
「このスプリングとか、欲しいな~。エッ?三万?ぼったくりじゃねーか」
そんなこんなで戦闘集団とは違って迷彩服を着たヘリ操縦員田中はバイク部品の物色をする。
いつでも戦闘員が帰ってこれるようにかけておいた梯子はまだプランと垂れ下がったままでいる。ワイヤーはとっくのとうに切り離している。地上で待機している戦闘部隊は、ヘリの護衛。と言う事で残しているが、実際何の役にも立っていない。世間話を繰り広げているのだ。四人のヘリ護衛は笑い合っている。
まぁいいか。どうせだれも攻めてこないんだし。こっちが攻めている側だし。
実のところ、この事件の裏に隠れている事実を彼らは知らない。だからこそ笑っていられたり、バイク雑誌を読めたのだ。
二人の人影がヘリに近づいてくることも気づかず。
バンバンバンバン
田中の近くで四つの銃声が連続する。
肩、腕、足、のどれかの位置一か所に銃弾を叩きこまれた戦闘員たちは、痛みで銃をあっけなく取り落とす。
「いてぇ、いてぇ」
急所を外して、彼らを打ったのは二人の制服着用の男子。走ってこのヘリの真下に来ると、あれよあれよと言う間に梯子を上ってきてしまう。
田中はあたふたと雑誌を置いたり、また手に取ったり、拳銃を抜いたり、また戻したり。そうこうした田中はあっというまにヘリ内に二人の男子生徒を乗せてしまう。
「ちょっと運転してもらうぜ」
片方がそんなセリフを吐いたが、操縦士には誰が誰だかわからない。
もう、東の空は藍と橙の攻防が始まっていた。
なんとかヘリは奪ったが・・・・
ここは人気のない森の上空。人質に取った田中とか言うパイロットは操縦かんを持って震えている。そんな彼の後頭部に銃を突きつけているのは村瀬だ。
「ここからじゃ、敵が移動したかなんて全く分からねえ」
もう高校は小指ほどにしか見えないほど小さくなっていた。
杉の樹海の上でホバリングするヘリ。
『こっちには衛星映像がある。問題ないよ』
じゃあ大丈夫だ。と拓海はヘリ内を物色する。
村瀬が一方的な世間話を田中と繰り広げていると、
「おまたせ」
そういって、二人の前に現れたのは先程の戦闘員。
「な、拓海拓海」
ヘリ内にもう一人残ってた。と慌てて相棒の名を呼ぶ村瀬だがその声にこたえたのは戦闘員だった。
「違う違う俺だよ」
そう言ってヘルメットを取り外した先にあった顔はまぎれもなく拓海のお顔。
安心した村瀬はほっと息を吐く。期待を裏切られた安田はハァと息を吐く。どんな期待かは言うまでもない。
「こうやって、変装して奴らに潜り込んだら結構スムーズに進んだりして。」
「おまえ・・・天才じゃね?」
『うん、拓海にしてはいい提案だ』
通信士のお墨付き。得意になってついエヘヘヘヘヘヘヘ。と自覚があるくらい気味悪く笑ってしまう。
「次、啓太着替えなよ。あっちにサブマシンガンとか置いてたし、拳銃の弾、装填しといて。弾倉は重いからいいや。持ってかない」
そういって、村瀬との役割を交換する。
やがて、向こうでガチャガチャと言う音が聞こえてきた。
『敵が動いた。校長を確保したらしい』
弛緩していたヘリ内に緊張が走る。拓海は読んでいたクソつまらないバイク雑誌を脇に置き、村瀬に声をかける。
「相手が動いたそうだ。敵は七時の方向っ」
「もう見えてます!」
田中がやけくそ気味にヘリの操縦幹を傾ける。全速力で進むヘリは、ぐんぐん奴らに近づいていく。
そこでやつらもこっちに気がついたようだ。
『大丈夫か田中。さっきはどうした?』
ヘリ内に無線の声が鳴り響く。
「山根っ。俺は・・・」
村瀬がすかざず田中の耳元にヘルメット越しの唇を寄せる。
「・・・俺は、ちょっと怪しい影を見つけたから追ってみた。大丈夫。戦闘部隊は回収したから」
低めのトーンで、田中の相棒と思われる山根に応答する。
「仕事熱心なやつだな。俺は到底まねできないよ。大変だったんだぜ。下で待機いしてた四人がいきなり撃たれて負傷してる。あいつら高校生に打たれたとか言ってるけど、まさかお前高校生の後を追ってたのか?」
「・・・ああ、だけど見失っちまった。」
「それにしても田中、なんかお前口調変わってんじゃないのか。昔はもっと気持ちの悪いしゃべり方だったぞ」
「・・・そ、そうか。」
「にしても、お前今日テンション低いな。何かあったわけ?」
「い、いや、何も」
「そっかぁー。あ、それとそれと」
このままこんな会話をつづけて、山根の調子に振り回され、二人は地上に降り立った時、片方はヘルメット越しに、もう片方は気持ち悪い顔をさらに醜悪にゆがめ、げっそり感を醸し出していた。
「諸君お疲れ様。」
そう言って、俺達は夜だというのにグラサンをかけたリーダー的な人の前におおざっぱに集まる。ここは、紫藤家の豪邸。家だけでも、かなり広いのに、さらにその十倍は備えているお庭が怖い。芝の上に着陸したヘリは、四台。ちなみにこの場に田中はいない。下痢の症状が出たという事にして庭に備え付きされているトイレに縛り付けてある。山根という人物には降り立った直後ヘリ内の無線で伝えておいた。
「これより、丸禿山に言ってターゲットの尋問を行う。」
リーダー的な人(以後グラサン)いわく、下っ端どもに基地内部を見せる事はいけないらしい。「闇」も同じだ。しかも、「表」の人間である紫藤校長と奈良汐織はもっといけないらしい。だから、山に行くのだ。そこは人があまりいない。ちなみに親子は感動の再会に涙の雨を流している。
『こちらの部隊は遠巻きに丸禿山に展開させて待機させるわ。部隊が突撃するときはその戦闘服を脱ぎなさい。巻き添えを食らうから。』
それを聞いて、拓海は村瀬にも伝え、心のメモ帳に書き記す。
グラサンが高らかに宣告する。
「よし、全員、礼!」
素直に頭を下げる二人。しかし、周りの起こす行動は違った。
なんと、全員が全員、ヘルメットを脱ぎ出したのだ。
慌てる二人。だが、冷静になるよう二人をたしなめる声があった。
『ヘルメットを脱ぎなさい。まだ、他の人たちに面は割れてないでしょ』
それもそうか、唯一俺達の顔を見れた戦闘部隊は負傷して、というか負傷させて、今はヘリ内で待機させている。
じゃあ問題ないやと、勢いよくヘルメットを脱いだ二人。そして、一同礼。
危なかった~と冷や汗をかくがグラサンが「ヘリに乗り込め」と言った瞬間に全てが一転する。ヘルメットをつけずに拓海は振り返る。
振り返った丁度その目線の先には二人のクラスメイトがいた。
片方はアホ。片方はポテトただ券。ただ、学校であった時とは違う服装。真っ黒の戦闘服。
しばし、見つめあう三人。
ずッぽとヘルメットを被った村瀬は、背後で石像になっている三人を見る。同時に石像の仲間入りを果たす。
そんな石を砕いたのはアホのとは思えない引きしまった表情をした山田。
「敵襲!!」
高らかに叫び、周りの戦闘服の歩みを止めさせる。藤田は肩にかけたサブマシンガンを拓海に向けて構える。
ありゃりゃ、と拓海は心でつぶやく。となりでは何を思ったのか自らヘルメットをとる村瀬。
ヘルメットを引き抜いたヌポッという音が妙に生生しく響いた。