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第三章 サブリミナル

階段をひとっ飛びで駆け上がり、三階を見て回る。三年生は全員帰ったことを確認すると、グラウンドにも誰もいないことを確認する。


「こっちもいないぞ」


村瀬がこっちに顔を突き出し、報告する。


「わかった、四階へいこう」

「おう」


二人はまたしても、違う組織で習った走り方とそれについていけるだけの強靭な筋力を駆使して廊下を疾走する。若干拓海が速い気もするが、そこは組織の力の差を表している。けっして、二人の体に差はない。すでに常人の域を飛びぬけているのだから。今彼らは残っている生徒に熱心な教師よろしく下校を促している。だが、まだ残っている生徒は見つかっていない。教師は?そんなもん知らん。何とかなるだろ。

四階へと渡る階段を一歩で踊り場まで到達し、踊り場から一番上まで助走なしに二歩で飛び越える。ひと飛びで六段抜かしの計算だ。

四階へと足を乗せた二人は、またしても廊下を駆け抜ける。だけど、音を一切だしていない。驚くほど無音の空間で、彼らは膝と足裏をクッションの様に扱っている。だから、だろう。

1❘Cから出ようとしていた山田と藤田は音を立てずに走って来るクラスメイトを見てギョッとした声を上げる。


「ぬゎあ、どうしたの武っちゃん。なんなの?」

「村瀬までどうしたんだよ。忘れものか?」


山田と藤田がこちらに声をかけてくる。まだ残ってたのか、こいつ等。


「おまえら、さっさと帰れ!」


俺が叫ぶのより早く村瀬が減速しながら、二人を一喝する。こいつ、多分自分の組織が攻めてきた事によって責任を感じているんだろう。


「なんだよ、つれないなー。あ、そうだ、二人ともおいしい目に合わない?」

「そうそう、そんな怖い顔しないでさ。山田が行列のできないけど出来るかも知れない位にはおいしいラーメンを作っているラーメン屋知ってるんだって。今から行くんだけど二人もどう?タクシーのっていこうぜ。タクシー代、俺奢るから。ここから二時間だし」


さすが、アホの山田。どんな店知ってるんだよ・・・じゃなくって。


「悪い、今日はパスだ。さ、さっさと帰った。下校時間過ぎてるぞ」

「えー、武っちゃんノリわる・・・」

「帰れつってんだよ・・・」


穏やかーに脳細胞がゼリーで出来ている奴を諭していたら、いきなり村瀬がゼリー男の胸ぐらをつかむ。そし脅迫。


「わ、わかったよ。帰るよ、タンメン食って帰るよ・・・」

「な、な、マクトナルトで使えるフライドポテトただ券やるから、許してくれ、な。金、無いし。」


どうやら、二人のラーメン男は村瀬が自分等を喝アゲしようとしてると勘違いしたらしい。オタスケーとかい言いながら、階段を駆け去って行った。やがて、バタバタと言う音が聞こえなくなった時、拓海は床に落ちたポテトのただ券を拾い上げる。


「いいのかよ、お前。あいつらと接しにくくなるぞ」

「・・・「裏」から抜け出した暁には鼻から溢れ出て来るほどおごるから大丈夫だ。ポテト」


フ、と小さく笑いあい、また居残り捜索を続ける。


だが、帰りのホームルームが終わった二時間後で、人はいなかった。


『奴らがここに到着するまで二分もないわ。だから速く外に、』


通信士の話を最後まで聞かずに、二人は階段を飛び降りる。


だが、この時二人は気付かなかった。


いっそ、待ってましたと言わんばかりにナイスなタイミングで教室から出てきた帰宅部二人は、ラーメン屋に誘うためだけに二時間も教室にこもっているだろうか。

それに、ポテトただ券位しか、持ってないやつがどうして二時間もかかる場所にあるラーメン屋までの交通費をおごれる?


「裏」の連中は校長たちとの話を盗み聞きしていたのにどうして、それ以上の情報を知らない二人を狙わなければならない?



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