第5話『100万フォロワーの転校生』
翌朝。
春の太陽がゆっくりと昇り、校舎の窓に柔らかな光を落としていた。
満開の桜並木の下を、生徒たちが笑いながら通学している。
校門前ではいつもよりざわついた空気が漂っていた。
「なあ聞いた?」
「何?」
「今日転校生来るらしい」
「え、まじ?」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
その中を歩きながら、春宮ユウトは少し疲れた顔をしていた。
「……眠い」
隣を歩くミアが笑う。
「昨日ずっと編集してたもんね」
「仕方ないよ」
「カイトとの勝負始まったし」
ユウトはため息をつく。
「まだ動画投稿してないのにプレッシャーすごい」
ミアはスマホを見ながら言う。
「ちなみに」
「何?」
「昨日の動画」
画面を見せる。
再生数。
1,280,000再生。
ユウトは目を見開いた。
「120万!?」
ミアは嬉しそうに笑う。
「初の100万超え!」
ユウトも思わず笑った。
「すごいよ」
「いや君の編集」
「違うって」
二人は笑いながら校門をくぐった。
そのとき――
校門前の生徒たちが急にざわついた。
「え?」
「誰あれ」
「めっちゃ可愛い…」
「モデル?」
ユウトも思わず視線を向ける。
校門の前に一台の黒い車が止まっていた。
ドアが開く。
そこから降りてきたのは――
一人の少女。
長い黒髪。
透き通るような白い肌。
落ち着いた雰囲気の美少女だった。
制服姿なのに、まるで芸能人のようなオーラがある。
生徒たちがざわつく。
「誰?」
「転校生?」
ミアが小さくつぶやく。
「……あ」
ユウトが聞く。
「知ってるの?」
ミアは驚いた顔をしていた。
「まさか…」
ユウトが言う。
「え?」
ミアがスマホを取り出す。
動画アプリを開く。
そして画面を見せた。
そこには一人の配信者。
チャンネル名。
月城ルナ
フォロワー数。
1,030,000人。
ユウトが固まる。
「100万!?」
ミアは小さく言った。
「トップ配信者」
そのとき。
黒髪の少女――月城ルナが校門をくぐった。
生徒たちの視線が一斉に集まる。
そしてルナは――
まっすぐミアの前に立った。
「久しぶり」
ミアが驚く。
「ルナ…」
ユウトが言う。
「知り合い?」
ミアは少し困った顔で言った。
「昔」
「配信イベントで会ったことある」
ルナは静かな声で言う。
「その時」
「負けた」
ミアが言う。
「え?」
ルナはユウトを見た。
鋭い視線。
「あなたが編集者?」
ユウトが慌てる。
「え、違…」
ミアが割って入る。
「違うよ」
ルナは少し笑った。
「そう」
そのとき。
学校のチャイムが鳴る。
キーンコーンカーンコーン。
生徒たちが教室へ向かう。
ルナは歩き出す前に言った。
「楽しみ」
ミアが聞く。
「何が?」
ルナは振り返る。
そして言った。
「この学校」
「配信者多い」
ユウトとミアを見る。
「つまり」
「面白い動画作れる」
ミアが笑う。
「挑戦状?」
ルナは少し微笑む。
「かも」
そして教室へ向かって歩いていった。
ユウトは固まったまま。
「……100万フォロワー」
ミアが小さく笑う。
「やばいね」
ユウトが言う。
「カイトだけじゃないじゃん」
ミアは空を見上げる。
桜の花びらが風に舞う。
「学園配信バトル」
「一気にレベル上がったね」
ユウトは深呼吸した。
「でも」
ミアが聞く。
「何?」
ユウトは笑った。
「面白くなってきた」
ミアも笑う。
「でしょ」
そのとき。
ユウトのスマホが震えた。
通知。
動画アプリ。
カイトの新動画。
タイトル。
『ミアへ。配信バトル開始』
再生数。
投稿10分で
5万再生。
ユウトが言う。
「本気だ」
ミアは笑った。
「いいね」
そして言う。
「じゃあ」
ユウトを見る。
「私たちも」
「最強の動画作ろう」
ユウトは頷いた。
「うん」
しかし――
その会話を
廊下の向こうから
月城ルナが静かに見ていた。
そして小さくつぶやく。
「ミア」
「今回は」
「負けない」
学園配信戦争。
フォロワー100万の転校生
の登場で
物語は
さらに大きく動き始めた。
(第6話へ続く)




