第4話 『最強ライバル宣言』
屋上の空は、昼下がりの青さを深く広げていた。
春の風がフェンスを揺らし、遠くの街並みがゆらゆらと陽炎のように揺れている。
校庭では体育の授業が行われていて、生徒たちの声が小さく響いていた。
そんな穏やかな風景の中――
屋上の空気だけが、張りつめていた。
黒瀬カイトが腕を組みながら言う。
「やっぱりな」
春宮ユウトは言葉を失っていた。
「……」
ミアが少しだけ笑う。
「何のこと?」
カイトはため息をつく。
「ごまかすの下手だな」
そしてユウトを指差した。
「昨日図書室で見た」
ユウトの背中に冷たい汗が流れる。
ミアが言う。
「見たって?」
カイトは淡々と言った。
「動画編集してただろ」
ユウトは黙ったまま。
ミアは一瞬だけ考えた。
そして――
「……バレちゃったか」
あっさり言った。
ユウトが驚く。
「ミア!?」
ミアは肩をすくめた。
「配信者には隠せないよね」
カイトは笑う。
「だよな」
そしてユウトを見る。
「名前は?」
ユウトは少し戸惑いながら答える。
「……春宮ユウト」
「へえ」
カイトは興味深そうに言った。
「お前、編集うまいな」
ユウトは驚いた。
「え?」
「昨日の動画」
「テンポもカットも完璧」
「正直びっくりした」
ユウトは少し照れる。
「ありがとうございます」
ミアが横から言う。
「でしょ?」
「私が見つけたんだから」
カイトは笑った。
「なるほど」
そして急に真剣な顔になる。
「でもさ」
ミアが首をかしげる。
「何?」
カイトはスマホを見せた。
画面にはミアの動画。
再生数。
82万再生。
ミアが言う。
「もうそんなに?」
ユウトも驚いた。
「すごい…」
カイトは言った。
「このままだと」
「100万いくぞ」
ミアはニヤッと笑う。
「いくよ」
カイトは少し笑った。
「面白い」
そして言う。
「じゃあさ」
ユウトとミアを見る。
「勝負しない?」
ユウトは目を丸くする。
「勝負?」
ミアは楽しそうに言った。
「いいね」
ユウトが慌てる。
「ちょっと待って」
「何の勝負?」
カイトはスマホをポケットにしまう。
「動画」
「え?」
「配信者なんだから」
「再生数勝負」
ミアが言う。
「面白そう」
ユウトはまだ混乱している。
「え、本気?」
カイトは笑った。
「もちろん」
そして言った。
「一週間」
ミアが腕を組む。
「一週間?」
「そう」
「その間に投稿した動画」
「再生数が多い方の勝ち」
ミアは笑った。
「いいよ」
ユウトが言う。
「早い!」
ミアはユウトを見る。
「怖い?」
「怖いっていうか…」
カイトは言う。
「ちなみに俺」
「フォロワー20万」
ミアが笑う。
「知ってる」
カイトは続ける。
「そして」
「最近の動画」
スマホを見せる。
80万再生。
ユウトは驚いた。
「すごい」
カイトは言った。
「つまり」
「俺もバズってる」
ミアは楽しそうだった。
「いいね」
「燃える」
ユウトが言う。
「でも負けたら?」
カイトはニヤッと笑う。
「負けたら」
ミアを指差す。
「編集者公開」
ユウトが固まる。
「え!?」
ミアが言う。
「なるほど」
カイトは続ける。
「つまり」
「ユウトの存在」
「学校中にバレる」
ユウトは青ざめた。
「それは…」
ミアは少し考える。
そして言った。
「いいよ」
ユウトが叫ぶ。
「よくない!」
ミアは笑う。
「大丈夫」
「勝てばいい」
カイトが言う。
「じゃあ決まり」
そして手を差し出した。
「配信者バトル」
ミアはその手を握る。
「受けて立つ」
二人の目がぶつかる。
屋上に強い風が吹いた。
桜の花びらが舞い上がる。
そしてカイトは去り際に言った。
「ユウト」
ユウトが振り向く。
「はい」
カイトはニヤッと笑う。
「お前」
「面白い動画作れよ」
「本気で来い」
そう言って屋上を出ていった。
扉が閉まる。
静寂。
ミアが言う。
「面白くなってきたね」
ユウトは頭を抱える。
「大変なことになった」
ミアはスマホを見る。
「ちなみに」
ユウトが聞く。
「何?」
ミアは画面を見せる。
再生数。
97万再生。
ユウトが叫ぶ。
「もうすぐ100万!?」
ミアは笑った。
「最初の動画でね」
そして言う。
「次の動画」
「絶対100万超える」
ユウトは深呼吸した。
「分かった」
ミアが笑う。
「やる気出た?」
ユウトは頷く。
「勝とう」
ミアは拳を握る。
「目標」
ユウトが言う。
「うん?」
ミアはニヤッと笑う。
「100万再生超え。」
学園配信バトルが
今
始まった。
しかし――
その戦いには
まだ誰も知らない
最強の敵が現れようとしていた。
(第5話へ続く)




