ギリ人助け
【奈落の霊廟】からの帰り道。 俺の足取りはミュージカルの役者の様に軽かった。 リュックの中には第10階層のボス【ミノタウロス】の巨大な高純度魔石。 ソロでの中層へ遂に(楽に)到達
俺はギルドのカウンターへ向かいドサリと戦利品を置いた。
「……買取を頼む」
「はい。……っ!?」
受付嬢が顔を顰めた。 カウンターに置かれた「折れた「狂牛の角」。それは中堅パーティが苦労の末に持ち帰るかどうかの代物だ。
「これは…ミノタウロスの……!?お一人で?」
「ああ。運が良かっただけだ」
ギルド内が一瞬静まり返った。
「おいマジかよ…」「ソロでミノ!?」「本当かよ…」「アイツだろ?例の二刀流の…」
ヒソヒソ話が聞こえてくる。 「例の二刀流」とは剣士と魔法使いの一人二役、つまり大谷選手の様な「ユニコーン」と呼ばれる類の話だ。 まぁ、俺の場合は完全に笑い物にされている部類のアレだけどね。
しかしソロでの10階層踏破はなくも無い話で、かなり入念に装備を整え、罠や武器をしっかり準備していけばどうにかなる相手だ。ただ、それなら臨時パーティーを組んで討伐した方が何倍も安くて安全に済む話なので誰もやらない。
物好き野郎がネタでやる様な事が「10階層ソロチャレンジ」の扱いだ。ま、大谷選手も当初メジャーに行った時は鼻で笑われてた訳だし、彼もこんな気持ちだったんだろうか?思わぬ所で故郷の英雄との共通点を見出してしまい、思わず笑ってしまう。
(大谷選手と共通の悩み…ぷぷっ)
余りの滑稽さに自分で言って自分で笑ってしまう。ツボに入ってしまい、しばらくはずっと笑いを堪える変な感じが続いてしまい、側から見ればソロミノタウロス討伐後に1人ニヤけている隠キャにしか見えないだろう。
***
夜。俺はいつもの酒場で一人祝杯を挙げていた。 高級なエールと厚切りのステーキ。 ソロ飯は気楽でいい。……はずだった。
「ちょっといいか?」
顔を上げるとそこには3人組のパーティーがいて、恐らくリーダー格の剣士風の男に声をかけられた。
「……俺に何か用か?(勧誘? 壺売り?)」
「いや、さっきギルドで見かけてさ、普通ソロミノチャレンジは大々的に宣伝してから倍率決めてやるイベントなのに…アンタ本気で上目指してんだろ?」
馴れ馴れしく俺の隣に座りエールを頼み出した。隣は大柄の寡黙な戦士風の大男で同じく席に着く。
俺の「陰キャセンサー」が警報を鳴らすが、それ以上に「男としての本能」が理性をハッキングしてしまっている事象が起きている。
同じ様に椅子に腰掛け話しかけて来たのは装備から見て恐らくクレリックだろう。戦闘用に仕立て上げられた礼服にメイス、金髪、碧眼、巨乳。
その佇まいからは敬虔な信徒だと伺える。首元まで隠し肌の露出を極力抑え、色気や女を奥へ押し殺し隠すためのデザイン。その身を全て神に捧げた証である。しかし、その戒律もこの巨乳は抑えきれなかった様で、声高らかな胸の主張を許してしまっている。
【我、ここに有り】と。
「私達もそこそこ自信があるんですけど……どうしても相性が悪くて詰まってるんです」
「つつつ詰まってる!?」
ガン見していたので思わず失言を発してしまった。
「はい。第9階層の【アイアン・タートル】。……物理が効きにくい厄介な魔物で」
僧侶の子が困ったように眉を下げて俺を見つめる。 なるほど。第9階層のあの亀か。 あいつは防御が異常に高い。魔法職がいないパーティでは「詰み」に近い相手だ。
「そこで相談なんですけど……私達の『臨時パーティ』に入ってくれないですか? 火力が足りなくて困っていたんです」
「アンタみたいな強い人が手伝ってくれたらいけると思うんだ!頼むよ!」
どうやらスッポト加入の依頼らしい。彼らは前衛二人がクレリックのバフでヒャッハーする脳筋スタイルのようだが、この世界では脳筋スタイルが9割を占める。ウィザードは非常に希少で獲得倍率の高い超人気職だ。
まぁ、彼らの気持ちは分かるが実はあまり気乗りしない…出来上がっている3人の輪に入るなんてのは、俺にとっては非常に高難易度、エクストラハードモードのクエストだ。ぶっちゃけ無理ゲーだ。
「あ~・・・すまないが他を当たって…」
「お願いいたします!」
彼女は必死の懇願に俺の腕を掴み、はずみでおおきなおっぱいが当たっている事に気が付いていない。他を当たってほしかったのにこんなモノを当てられている。
「あ〜…いや、あ〜」
「お願いします!どうかお力を貸してください!」
圧。揉まずとも質量を解らせるその圧はミノタウロスの比ではない。俺のフォノンですらその質量の全てを測る事が出来ないであろう。デカい、柔らかい。もはやそれ以外の情報が入って来ない、いや入る余地が無い。
「報酬の分配なんだが見ての通りウチにはウィザードがいない。だからアンタが要になる。今回は半分取って貰っていい」
違うんだよなぁ、お金の問題じゃ無いんだよ。
「いや、悪いが遠慮しておく」
「6:4!いや7:3でもいい!」
「あ、いや…」
「……8:2? 」
普通、前衛と後衛なら5:5、あるいは危険手当で前衛が多くもらうのが相場だ。8:2ではいくらなんでも俺が搾取しすぎだろう。しかしそれでも俺は首を横に振る。
これは9:1でも俺が受けないのを理解してくれたのか、そこからは彼らも口を閉ざす。気まずい空気の中、俺は最後のエールを流し込み席を立とうとした時、クレリックの子が俺の腕にギュッとしがみつき青い瞳で懇願してきた。
「お願いします……私…何でもしますから!」
ナンデモシマス。
それは魔法の言葉。可愛い巨乳の子がこの詠唱を唱えると、たちまち全ての男は思考能力を失い、代わりにシコい能力が高まる。
「ちょっ、おいマリア!それはいくらなんでも…」
「そうだぞマリア、それはダメだ」
剣士と戦士の2人が俺のおっぱい…マリアを諭そうとしている。なんだコイツら敵か? おん?
「もう2年もあの亀に足止めされてるのよ?ミノタウロスなら倒せるのに。相性だけで2年も時間を無駄にしているのよ?」
実は10階層の踏破はギャラに大きな差が出る。さらに踏破の際はギルドが発行する正式なライセンスが与えられるので、そこで初めて一端のプロとして認められる。地球で言えば中卒と大卒の差より大きい。実際彼らも亀をクリア出来たらその後のミノタウロスまで行けるんだろう。彼女はそこまでしてこの壁を乗り越えたいらしい。
しかそ、そんな事を他所に、野暮な男2人が俺におっぱいを揉ませないように必死に頑張っている。公私混同する2人、チームの為に身を投げうる女。
長い議論の末、どうやら話し合いは女に軍配が上がった様だ。恨めしい顔で俺を睨め付ける2人の男達。
知らんがな。別に俺が頼んで無いし、と言うか頼まれてるし。とは言え恨まれるのもイヤなので断るためにさらに条件を付けた。
【マリアを一晩好きにしていい+銀貨3枚】
拳を握り締め顔を真っ赤にしてプルプルしている男2人。どうやら激おこらしい。
しかしマリアは俺の掌に銀貨2枚を置き、可愛い瞳で懇願して来た。
「今はこれしか…その分、私が頑張るのでどうかコレでお願いします」
ありのままを言うぜ?
金髪碧眼巨乳の女の子にお金を渡されてエロい事をしてくれとお願いされているんだが俺も何を言っているのか解らない。
が、やる事は決まっている。俺の決意とアソコは今、同じくらいに固い。




