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異世界でもぎりヤれるっちゃヤれる。(ギリとは言っていない)  作者: ひとよが


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ギリ仲間ゲット

「……はぁ」


冒険者御用達の酒場。俺はカウンターの隅でぬるくなったエールをチビチビと舐めていた。  周囲では一日の稼ぎを終えたパーティ連中がジョッキを打ち鳴らして馬鹿騒ぎをしている。  いつもなら何も気にならないが今日の俺にはその輪が少しだけ羨ましく思えた。


「ソロの限界、、、か……」


俺はテーブルに頬杖をついてさっきまでの【奈落の霊廟】での出来事を思い出していた。


         ***


(数時間前、ダンジョン第7階層)


第5階層までをかなり余裕を待って探索できるようになった俺は、その勢いでさらに下の階層へと足を踏み入れていた。  第7階層。そこは石造りの回廊が迷路のように入り組んだ「蟻の巣」のようなエリアだ。


「ギャギャギギ!!」


前方の通路から数十体の【ゴブリン・ソルジャー】が殺到してくる。  ただのゴブリンではない。統率の取れたダンジョンに住まう軍隊のような統制が取れた魔物だ。  だが俺に焦りはなかった。両腕の【竜手】で先頭の棍棒を受け止め、鞘から迸る【竜胆】で次々と首を落としていく。


しかし俺のソナーが「上空からの異常な数の反応」を捉えたのはその時だった。


「ブゥゥゥゥン……!」


天井の闇から湧き出したのは無数の【キラービー】の群れだった。  最悪のエンカウント。  上空からの遠距離攻撃と地上からの波状攻撃。キラービーは俺もゴブリンも見境なしに襲ってくる。しかしゴブリンます慣れているのか耐性があるのかキラービーを意に介さず俺を襲い続ける。だからアイツらゴブリンの顔はあんなにデコボコなのかと妙に納得した。


ソナーの全方位索敵は完璧に機能している。  右斜め上から毒針。左下から棍棒。背後から短剣。  全て見えている。……見えているが、


手が足りない。


「……ッ! 流体装甲エア・アーマー!」


俺は音圧で蜂の毒針を弾き飛ばし、左手でゴブリンを殴り飛ばし、右手の刀で三体目を斬る。  だが、四体目が俺の背中に飛びついてくるのが分かった。  【音速抜刀】を使えば前方は消し飛ぶが、撃ち終わった瞬間の隙に背中を刺される。  防ぎきれない。


「……クソッ。撤退だ!」


俺は鉄粉袋をばら撒き、強烈な【鉄粉塵爆発】を起こした。  通路を爆煙と崩落で塞ぎ、俺は命からがら這々の体でダンジョンを脱出したのだった。


         ***


で、現在酒場にてクダを巻いているところだ。

俺は竜皮の外套の背中についたゴブリンの爪痕(かすり傷だが)を撫でた。  一対一、あるいは少人数なら無敵だ。だが、この「数の暴力」の前では俺のロジックは物理的な手数の不足によって瓦解する。


「俺の死角……背中を守ってくれる『仲間』がいればなぁ」


俺は残ったエールを一気に飲み干し、その日は酒場を後にした。


翌日。  俺は気を取り直して冒険者ギルドの「パーティ募集掲示板」の前に立っていた。  斥候、盾役、魔法使い。様々な募集が貼られている。俺の索敵能力と攻撃力があれば、結構いろんなパーティから欲しがられるのでは無いかと勝手に期待が高まる。


「いやいや、パーティーに入るんじゃ無くて、仲間を入れる側で考えなければ」


どうせなら女の子が良いなぁ〜とか思いながら俺は数分間掲示板を睨んだ後、ため息をついて背を向けた。


「……やっぱり、しっくりこない」


他人の命の責任を負う重圧。俺の「スキル」をイチから説明する面倒臭さ。そして、いつか裏切られるかもしれないという猜疑心、そして何よりコミュニケーション能力が……考えれば考える程俺には無理だ。俺は根っからの「ソロ属性(陰キャ)」なのだ。


「パーティが無理なら装備でどうにかするしかないか」


俺は方針を転換しマルコ商会へと向かった。何かいい案はないか、あの工房長ボルグに相談するためだ。


          ***


「なるほど。背中を守る『盾』ですか」


商会の特別製造室。俺の要望を聞いたボルグは、モノクルを光らせて顎を撫でた。  


「ドラゴニアの素材で、背中を覆う追加装甲ならすぐに作れますが……やや不恰好と言いますか、ヒビキ様の機動力を殺すことになりますな」


「そうなんだよ。動きを阻害せず、かつ、背中を守れるような何かがあれば…」


「……ふむ」


ボルグは何かを思い出したように、作業台の奥から一つのガラス瓶を持ってきた。


「オーダーメイドの際、『わずかに余った』素材でございます。高価なものですので、お返ししようと思っていたのですが」


「これは?」


「刀の芯にお使いになった流体ですな。……【竜胆重液ドラゴニア・マーキュリー】。容量にして約100ミリリットル(コーヒーカップ一杯弱)。重量1.4キログラム」


俺はガラス瓶を受け取った。  黒銀色に濁った、ドロリとした見た目に反して異常に重い液体。  ガンテツの所で使い切ったと思っていたがわずかに残っていたのか。


「……1.4キログラム。液体。超音波伝導。そして、振動による瞬間硬化……」


俺の脳細胞が一気にショート回路を繋いだ。  人間の仲間が嫌なら、作ればいい。  俺の意思を理解し、絶対に裏切らず、背中を守ってくれる「相棒」を。


「……ボルグ、この部屋借りるぞ」


俺は瓶の蓋を開け、手のひらに重液をこぼした。  両腕の【竜手】を起動し、特殊な周波数のフォノンを放つ。  


【アコースティック・レビテーション(音響浮遊)】


俺の周囲の空気を音圧で固め、見えない「皿」を作る技術だ。


ドロリとした重液が俺の意思に呼応するように、フワリと空中に浮き上がった。  1.4キログラムの液体金属が無重力空間の水滴のように丸くなり、俺の周囲をゆっくりと旋回し始める。


「なっ……液体が、浮いている……!?」


職人たちが驚愕の声を上げる。  俺はニヤリと笑った。


「これはもしかしたら…ボルグ、そこの端材を俺に向かって投げてみてくれ」


そう言って俺はボルグに背中を向ける。俺が背後に意識ソナーを向け警戒する。


そしてボルグが言われた通りに俺の背中に向け端材を放り投げるた瞬間、浮遊していた黒銀の球体がシュンッと俺の背中へ移動した。 そして、瞬時に俺のフォノンに反応し俺の期待に応える。


 カィィン!!


液体が一瞬で硬化し、直径30センチほどの【鋼鉄の盾】へと変化した。  自由自在に変形し、空を飛び、俺の死角を守る防衛システム。ちゃんとソナーと連携させればもしかしたらオートガードも出来るかもしれない。


「なるほど…なるほど…」


俺は空中に浮かぶ黒銀色の液体を見つめながら可能性を総当たりする。右手には【竜胆】。両腕には【竜手】。  


そして周囲を浮遊する黒銀の相棒。


出来ることが多すぎる…そう、これは可能性の塊だ。次から次に試したいことが浮かび上がり、その数が多すぎて考えが纏まらない状態に陥ってしまう。俺はとりあえず商会を後にし、足早に森へ向かう。


気がつけば俺は走っていた。  人目のない森の奥深くまで一気に駆け抜け、ひらけた場所を見つけるとはやる気持ちを抑えきれずにフォノンを放つ。  再び、黒銀の液体がフワリと宙に浮いた。  直径7センチほどのテニスボール大の液体の球体。  ここからが本番だ。俺の頭の中に渦巻くアイデア(仮説)を、片っ端から検証していく。


「まずは同期テストだ。……来い!」


俺が背後の木をソナーで認識ロックオンした瞬間、黒い球体が音を置き去りにするスピードで背後へ回り込んだ。  早い。俺の思考(ソナーの反射)と完全にリンクしている。まるで俺の体の一部が切り離されて浮いているような感覚だ。これなら俺が前衛に集中していても勝手に背後へ回り込んで「盾」になってくれる。


「次は……面制圧だ」


第7階層で俺を追い詰めたのは、蜂とゴブリンの「群れ(面)」だった。刀という「点と線」の攻撃ではどうしても手数が足りなくなる。だが、こいつならどうだ。



 フォン……!


黒い球体が一瞬にして鋼鉄の細長いワイヤー状に変形した、高周波で振動させて木の枝を豆腐のように切断してみたり、遠くの茂みに飛ばしてそこを起点にソナーを放つ「遠隔レーダー(ドローン)」として使ってみたり。  液体を人型に伸ばして音波を反射させ、「もう一人の俺がいる」と誤認させるダミーを作って喋らせてみたり。


攻、防、索敵、攪乱。  俺の頭の中にあるロジックをこの液体金属は全て具現化してくれた。


日が沈み、月が昇る頃。  俺のわがままに付き合わされ荒れ果てた森の中央で、俺は満足げに息を吐いた。  俺の周囲を無形の黒銀色の球体がまるで犬が尻尾を振るようにフワフワと回っている。


「……お前、最高だな。マジで頼りになる」


思わず撫でようと手を伸ばすと、液体がひんやりと指にまとわりついた。  意思はないはずのただの液体金属。だが、今の俺にはこれが何よりも心強い相棒に思えた。  これは絶対名前が必要だ。


俺は月明かりに照らされる黒銀色の相棒を見つめながら考えを巡らす。  水の如く自在に形を変え、影の如く音もなく寄り添う従者。


「……【水影(みずかげ)】かな」


主人の安直なネーミングセンスに何一つ文句を言う事なく嬉しそうに俺の周りを浮遊している。


右手には竜を屠る刀、【竜胆(りんどう)】。  両腕には竜の【籠手】。  

そして傍らには最強の相棒【水影】。


俺はニヤリと笑い、街の方角を振り返った。


「待ってろよ、羽虫共。……明日は文字通りの『蜂の巣』にしてやる」


明日の第7階層。  懸念は無くなった。まるで限定ガチャで神引きしたような気分だ。この新しいチートを実戦投入したくてたまらない、陰キャゲーマーとしての狂暴なまでの高揚感が青天井で上昇中だ。

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