リコの見た、新しい未来について
リコは、アーサーとアリスを見た。
「正直なことを言うと、前のように未来視ができなくなったんです」
リコは観念したかのように説明した。
「まず、これは説明させてください。
以前は、数年先の未来を見ることが出来ました。
でも、今は出来ないんです。
弟と貴方たち、王族の末路が変わったからなのか。
とにかく、前のようには未来を見ることができなくなったんです。
今は、時折断片の映像が頭の中に流れるんです。
でも、それがいつ起こる出来事なのかがわかりません」
『そうだったのですか?』
メリアの確認に、リコは頷く。
「そうだったの」
「でも、未来は見えてはいるわけですね。
どんな未来だったんですか??」
アリスが聞いてくる。
リコは一度目を伏せ、それから母の言葉を思い出す。
つい先程、母がアーサーへ言った言葉だ。
――リンとリコが盛大にご迷惑をかけるかと思います―
母の言葉は的をいている。
どうしてそこに繋がるのかはわからない。
でも、近い未来。
リコとリンは、アーサーへとんでもない迷惑をかけることになるのは事実なのだ。
そういう未来を、彼女は見たのだから。
「私が見た未来は二つです。
どちらかが、必ず訪れるのだと思います」
アーサーは黙ったまま、リコの言葉の続きを待つ。
リコは、近いうちに起こることを口にした。
「私が弟を殺します。
もしくは、弟が私を殺します」
あくまで淡々と、感情を含めずにリコは続けた。
「どうしてそうなるのかはわかりません。
ですが、これが私の見た未来です」
※※※
数時間後。
リンに与えられた屋敷、その一室にリコはいた。
リコがしばらく滞在する部屋だ。
フカフカのベッドが用意されている。
リンによれば、城から使いがきて用意していったのだという。
最悪な未来を教えたというのに。
アーサーとアリス、そしてメリアすらそんな未来を信じることはできないようだった。
特にメリアは信じられなかった。
リコが今まで精神をすり減らしてまで頑張ってきた理由が、リンだからだ。
だれも、信じてくれない。
そんなのすぐ想像できたのに。
『あ、あの、リコ……』
メリアがリコへ声をかけた時、リンがやってきた。
ノックのあと、リコからの返事を待ってから部屋にはいる。
そして、
「お姉さんに、ちょっと話したいことが。
伝えたいことがあるんだけど、いい?」
そう言ってきた。
リコにではなく、メリアに用があるらしい。
メリアが気遣わしげにリコを見た。
リコは、
「めっずらしい、お姉さんになんの用なの??」
いつもの調子である。
「悪いけど、姉ちゃんには言えない。
えと、グウェンダルって人の事なんだけど」
途端に、メリアの顔色が変わった。
「お姉さんにだけ、伝えたいんだ。
ちょっと俺の部屋に来てくれる??」
『……わかりました』
そうして二人がリコの部屋から去る。
リンの気配が遠くなっていくのを確認して、ようやくリコは盛大に息を吐き出した。
「もうヤダ。
あたまパンクしそう」
ガリガリと頭をかいて、さてどうするかと思考を巡らせる。
いい案は出ない。
当たり前だ。
ようやく、平和に平穏に、先のことを考えずに日々を過ごせると思ったのに、これである。
今までも、何度もこういうことはあった。
上手く行きそうになって、土壇場で地獄に叩き落とされる。
そんな事ばかりだった。
今回は己か弟、どちらかがどちらかを殺す未来みてしまった。
自暴自棄にもなろうというものだ。
「はぁ」
もう一度、ため息を吐き出す。
そして息を吸う。
何度かそれを繰り返した。
その時だった。
ひらめきは唐突に訪れた。
「あ、そっか、相談すればいいんだ」
何度も何度も、過去と未来を変えようとしたけれど上手くいかなかった。
でも、今回そんな今までと違う存在がいるのだ。
「あの人に、相談してみよう」
それは、アーサーでも、アリスでも、リリスでもない。
タクトでも無ければ、母でもない。
ゲントウでも無ければ、妹たちでも、祖父母でもない。
ましてや、エストでは断じてない。
リンには言えない。
たぶん、信じないからだ。
リコはその人物に連絡を取った。
映像通信だ。
数秒後、目的の人物の顔が目の前にあった。
その人物とは、
『おや、久しぶりだな。
元気そうだな。
特定班に聞いたぞ、王都に、リンのとこに遊びに来たんだって??』
考察厨である。




