まずは、現状をなんとかしなきゃね
問に、リコは大きく息を吐き出して答えた。
「それは、今話すことではないです。
まずは、盗聴の件をなんとかしましょうか。
そして、それを片付けて、未来を確認します。
変わったか否かを。
ずっと、そうやって来ましたから」
アーサーとアリスが視線を交わす。
アーサーは、リコへ視線を戻し頷く。
「わかった。
それで、どうやって盗聴している者を見つける??」
鑑定のプロを使っても、いまだ盗聴の痕跡を見つけられていない。
時間の問題だとは思う。
しかし、出来ることなら早く見つけて対処してしまいたい。
リコはパチンと指を鳴らし、魔法を解いた。
そして、携帯端末を取り出すと、
「こういうのが得意な人に、リモートで協力してもらいます」
母へ連絡をとった。
しばらくして、母が出た。
事情をざっくりと説明する。
王子が盗聴の被害にあって困っているから、盗聴器、もしくはそれ系の魔法の痕跡を見つけて欲しい、と頼む。
そうして返ってきた反応が、
『えー、リコったら王都に遊びに行ってるの??
言ってくれたら車出したのに!』
これである。
ちなみに、母は今日は休みらしい。
「お仕事だよ。
さっきも言ったでしょ?
殿下が困ってるの、協力してくれない?」
『いいわよー。
この前、リンがご迷惑をかけたしね。
それに王都の観光スポットとか、いろいろ親切におしえてもらえたから。
じゃあ、映像に切り替えて部屋の中をみせてくれる??
あ、その前にアーサー様にご挨拶しないとね』
相変わらずの義母(候補)のマイペースさに、アーサーは別の苦笑をするしかなかった。
アーサーにもだが、アリスのことも母は知っていたので2人に挨拶をする。
そして、早速仕事にとりかかったのだが。
『んー??
……とくになんにもないわよ?』
あの特殊な指の組み方をして、リモートで執務室の中をくまなくみてもらったが、なにも見つからなかった。
「え、ほんと??」
『嘘言っても仕方ないでしょ』
たしかにその通りだ。
母が嘘をつく理由がない。
「母さんでもお手上げかぁ」
『そうねぇ。
もう一度部屋の中を映してくれる??
アーサー様とアリスさんも映っていいから』
もう一度、今度は母の指示通り二人を映しつつ部屋の中を見せる。
『あ、なるほどー。
そういうことか。
わかったわよ、盗聴器の魔法の場所』
「え、どこ??」
『アーサー様のお召し物』
バッと、リコとアリスがアーサーを見る。
アーサーは意外な指摘に目を丸くしている。
灯台もと暗し、というやつだ。
「なるほど、たしかに服は盲点だった」
事前に、王族が着用する服は、彼らを害する細工が施されていないかの確認はされる。
しかし、盗聴の魔法は直接害するものではない。
だから見落とされた可能性は高い。
毒針でも無ければ攻撃魔法でもない。
さらに思い込みもあった。
執務室になにか細工をされているだろう、という思い込みだ。
しかし、である。
魔法でも、市販されている盗聴器でも魔法技術、魔力が多少なりとも使われている。
誰かしら気づきそうなものだ。
しかし、誰も気づかなかった。
これはどういう事なのか。
『私が見た限りだと、左手首のとこのカフスボタンと、ネクタイピンが怪しいかなぁ』
指摘を受けて、それらを取り外す。
そして、床に落として踏みつけてみた。
『あらあらあら~』
簡単にカフスボタンとネクタイピンは壊れ、なにかの部品が飛び出したのだった。
アリスがそれらを回収し、執務室を出ていく。
それを見送ってから、アーサーはリコとその母へ礼を述べた。
「助かりました。御協力ありがとうございます」
『いえ……いいんですよ』
妙な間を置いて、母が返した。
そして続けて、
『あの、アーサー様。
もしかしたらリンとリコが盛大にご迷惑をかけるかと思います。
その時は、私を呼んでください。
2人にゲンコツを食らわせますので』
「はあ?」
アーサーは意味がわからず、そう返す。
リコは異議があったので、しっかり言い返した。
「母さん、それリンだけだから。
私はそういうことしないから、大丈夫だよ」
『……まぁ、そういうことにしておきましょうか。
お仕事ってことなら、しばらく帰ってこないの??
あ、エスト君もいるからデートもするのかな??』
「そういうのは思ってても口にしないでよ」
少なくともリコにとって、エストとの関係はそんなものではない。
『それと』
「まだなにかあるの??」
『ちゃんとリンにも大切なことは話しなさい』
時折、母はなにもかもを見透かしているかのような事を口にする。
リコの能力のことは知らないはずなのに。
そして、リコと違って未来が見えているわけでもないはずなのに。
『それじゃ、帰ってくる時は連絡してねー。
ご飯の準備があるから』
母はそうして通信を切ったのだった。




