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【俺氏】聖女紋が発現して、王子の花嫁候補になった件【男なのに】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
二章

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リンとリリスと族長

※※※


「それで、リコとはどういう人物なんだ??」


「私も知りたいです!」


リンの家としては大きすぎる屋敷。

その一室にて、リリスと族長エストがお茶をしつつ聞いてきた。

何故、この二人がいるのかというと、リリスはあまりにも暇すぎて許可をもらって来てしまったのだ。

エストも似たような理由である。

そもそも王都に他に知り合いがいないのだ。


「はい??」


「家族から見て、どういう人物なのかと思ってな」


「はあ……。

ワンパンでドラゴン倒せる、姉、ですけど」


「それだけ、か??」


「はい?

えーと、頭がいいです。

あとは」


「先読み、未来を知る能力があったりしないか??」


リンが続けるより先に、そうエストに問われる。


「え」


それは、いつかの会話でタクトに指摘されたことだった。


「そうなんですか??」


リリスが、エストとリンを交互に見る。

エストはリンの返答を待っている。


「いや、たぶん無いと思います。

むしろ、なんでそんなふうに思うんですか??」


タクトはリコの言動から推察していたが、エストの前ではそんな言動はしていなかったはずである。


「あ、いや……。

知っているからだな。

知り合いにいるんだ。

リコのようなタイプが」


「……むしろ、貴方から見て姉ちゃんってどうみえてるんですか?」


しばし、エストは考えた。

そして、


「君にこれを言うのはどうかと思うが。

いまにも溺死してしまいそうなほど苦しそうに見える」


「姉ちゃんが??」


「御母堂とも君とも違う、彼女は、なにかを抱えているように見えるんだ」


エストは言葉を選びつつ、そう告げる。


「あー、なんかわかります。

リンさんにそういうところ似てますね。

纏う空気、とでも言うんですか。

ほら、山の事件のあとのリンさんと雰囲気が同じでしたよ」


「そうかなぁ」


「リンさんのお母様は、とても明るい方ですが。

お姉様のリコさんは、こう少し物憂げな印象がありました」


リンは驚いた。

そんな印象とは真逆だからだ。

いつだって率先してドラゴンを殴りに行って、畑泥達もボコボコにして縛り上げている。

リンの知らないことを知っていて、自信満々なのが、彼から見たリコだ。

物憂げなんて、リコには一番遠い言葉である。


「物憂げ、か」


リリスの言葉を受けて、そう呟いたのはエストだった。


「やっぱり未来の花嫁さんのことは気になりますか??」


リリスは明け透けに、もっというとズケズケと聞いている。

エストはリリスを見て、それからリンを見た。

苦笑する。


「まぁ、そうだな。

仲良くやっていきたいからな。

君の、リンの代わりのような形になってしまっているから、その印象も払拭したいところだ」


「まぁ、そうですよねぇ。

誰かの代わり、なんて年頃の女の子からしたら嫌ですもん」


こういうのはやはり女の子の方が、スルスルと会話が進むらしい。

リリスはぐいぐいと会話を進めようとしている。

【代わり】という言葉に、エストは内心苦笑するしか無かった。


――いいですよ。同じ顔で代わりなら違和感ないでしょうし――


リコと話をした時に、エストはそう言われていた。

これは、リンとリリスは知らないことである。

さらにリコの言葉は続いた。

まるで人形のように出来のいい笑顔をはりつけて、リコは言葉を続けたのだ。


――人は変わりますから。エストさんに他に好きな人ができることだってあるでしょ。

それに、私は最初貴方が惚れた弟とは別人です。

私は弟と顔が同じで、能力もほぼ同じ、そして生殖機能のある人間のメスです。

聖女紋がないだけですね。

そうして割り切ってますので、貴方もそう割り切ってくださるなら別に問題ないですよ――


十五歳の少女が口にするには、あまりにも冷めている言葉だった。

瞳も冷えきっていた。

なにか地獄を経験してきた者の目だ。

しかし、リンから話を聞く限りリコがそんな地獄を経験したことはないとわかる。


ならどこで経験したのか?


あまり良くない未来を見たか、あるいは、実際にその未来に行ったことがあるのか。

リンとリコの先祖は、つまるところ初代勇者にまで遡ることができる。

そして、この勇者だが。

人間たちの記録ではいつの間にか消えているらしいが、時間に干渉する能力を保持していたとされている。

エストの里にある図書館にはその事が記録された書物が残っていた。


人間たちの間で消えていたのは記録だけではない。

その能力自体も、今まで誰も受け継いではいなかったらしい。

初代聖女の再来といわれる能力を持ったリンですら、そんな能力はない。

あったら、リンの性格からして自己申告しているはずだ。


しかし、その姉にはもしかしたら、紋章こそ無いものの初代勇者と同じ能力が継承されているのかもしれないということ。


そして、この考えがもしも当たっているのなら、代わりなんてことは言っていられなくなる。

彼女の価値は、それこそ計り知れなくなる。

なにせ、勇者はその力を使って魔王を倒し、世界を救ったのだから。


誰もが彼女のことを欲しがるだろう。

そして、彼女はそれを淡々と受け入れるに違いない。

彼女の目にはどう扱われようが、どうでもいいと書いてあるかのようだった。

あの目が、忘れられない。


まるで、助けてと訴えて泣いているように見えたのだ。

でも、誰もそのことに気づいていない。

リンですら、気づいていないのだ。


「嫌、か」


無意識にエストからそんな言葉がもれる。

リコが望み通りの扱いを受けるとする。

それを考えただけで、エストも少しだけ嫌な気持ちになってしまう。

いつか叶うなら、人形のような作り物めいたものではない、リコの笑顔を見てみたいと思ってしまった。


※※※


同時刻。

アーサーとアリスは、絶句してリコを見ていた。

メリアから全て聞いたのだ。

これまでのこと。

現在では否定され無くなってしまった未来のこと。


そして、邪神のことを。


「なるほど、だから、か」


アーサーはどこか得心がいったという風に、リコを見た。

アリスは、神妙な顔つきをしている。


「……王都が襲撃された際、だから誰よりも早く動くことができた。

理由をつけてリンさん達を匿ったんですね。」


アリスに言われ、リコは頷いた。


「そして、死ぬ運命だった王族と花嫁候補たちのことも救ってくれていた、と」


アーサーの言葉が続いた。


「私は、弟を救いたかっただけです。

貴方たちの命はついでです」


突き放すように、リコは返した。

リンとも母親とも違う、冷たい表情だ。


「ついで、か」


アーサーもさすがに苦笑いしかできない。


「でも、救ってもらったのは事実だ」


アーサーはちらり、とことの成り行きを見守っているメリアを見た。

それから視線をリコに戻す。


「それで、これからの先の未来はどうなっている??」


「……」


「こうしてここにいる、ということは。

ただ来ただけ、というわけではないだろう。

こんなことになっているんだ。

当然、君は未来をまた見に行ったはずだ。

どうなっているか、確認したくなるはずだからな。

君はリンの未来を幸福なものにしたいと願っている。

だから動いている。

そして、君と俺たちは利害が一致しているはずだ。

君は俺のことをずっと値踏みしているだろう。

使える人間かどうか。

ずっと見定めようとしている。

安心してほしい。

少なくとも、俺は君を敵に回すことはしない。

むしろ味方になってほしいくらいなんだ。

信じてほしい。


その上で……今度の未来はどうだったか、教えてくれないか??」

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― 新着の感想 ―
族長さん…。ちゃんとリコさんのことを見抜いてくれたんですねぇ…。 まあ、我々読者は彼女がドライなのは知っているけど実際に言葉で聞いたらこの物言いは絶句するし、そら勘繰ると言うもの。 族長さんは最初の(…
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