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【俺氏】聖女紋が発現して、王子の花嫁候補になった件【男なのに】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
二章

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花嫁候補と神託

執務室に入室して、リコがすぐに行ったのは特殊な結界を張ることだった。

指をパチンと鳴らす。

それだけで、この執務室は外界から隔離された。

会話すら今は盗聴できない。

しかし、それだと敵に怪しまれるので他にもいろいろ偽装工作を行っている。


「すごいな」


執務室で待っていた部屋の主は、素直にそう口にした。


「こんなの朝飯前ですよ。

それより本題に入りましょう、殿下。

会話を誰かに聞かれる心配はありません」


なんて事ないようにリコは言う。

部屋には、アーサー、リコ、そしてアリスの三人のみだ。

リコは弟が置かれている状況を詳しく知ることができた。


「なるほど、話にはきいていましたが。

かなりタチの悪いネズミが城に紛れ込んでる、というわけですか。

まぁ、予想はしていましたけど」


「動いても先回りされてるのが現状だ。

やっとネズミを捕まえたかと思っても、実はトカゲの尻尾だったというオチだ」


「なんというか、お疲れ様です。

しかし、プロでも見つけられないとなると、そのネズミ達を捕まえるのは骨が折れそうですね」


「すでに折れまくって、複雑骨折しているところだ」


ここでアリスが口を挟んだ。


「狙われているのはリンさんでほぼ間違いありません。

すでに何度か食事に毒が仕込まれていました。

無効化できるとはいえ、無視はできません」


「でしょうね。

もしかしたら、無効化できない毒かもしれないですし。

弟が精神汚染されていたことを考えると、そういう毒の開発に成功していても不思議ではないです。

でも、何故そこまでして弟を狙うのか。

次期大聖女候補として有力だからでしょうか??

それとも、他に理由があるとか??」


ほかの理由。

それにリコは心当たりがあった。

本来の流れでは、おそらくリンは敵と内通していた可能性がある。

何故、リンがそんなことをしてしまったのかはわからない。

でも、今になってそう考えてみると色々腑に落ちる点があるのだ。


革命が起きた時、仮にも目の前にいる王子なら逃げられたはずだ。

情報は常に集まっていただろうし。

けれど、それをする暇もなく城は陥落。

一部の者しか知らない秘密通路まで筒抜けとなっていた。


もともとの未来でもリンは王子とそこそこ上手くやっていたのだ。

王子だけではない。

ほかの聖女紋持ちとも、最初こそ確執はあったものの少しずつ打ち解けていったのだ。


でも革命は起きた。

魔法の無効化、紋章持ちの無効化も成された。

これらは紋章持ちが情報を提供しなければ、そしてなんならその身体を提供して情報を与えなければあんなに早く技術的に使い物になるわけはないのだ。


極秘情報に触れていて、なおかつこの国に忠誠もへったくれも感じていない。

つまり、裏切ることに抵抗が比較的ない存在は、リコの考える限りリンしかいないのだ。


「他の理由、か」


アーサーが呟く。

リンだけは、異質なのだ。

そう今回も、これまでの無かったことになった流れの中でも……。

そこでリコは、はたと気づいた。

なんで今更こんなことに気づいたのか。

どうして今までそこに気づかなかったのか。


なぜ、見落としてしまっていたのか????


「なんでリンが花嫁候補に選ばれたの??」


それは自分自身への問いかけだった。

アーサーとアリスがその言葉を聞き、視線を交わし合う。


アリスが思わずリコへ聞いた。


「知らない、のですか??

いえ、そんなわけありませんよね?

説明があったはずですけど」


「あ、いえ、知ってるんです。

知ってるんですけど……」


どうにもリコの歯切れが悪くなる。

リンが花嫁候補となったのは、ここ城だか王都だか、とにかくここにいる神官が神託を受けたからだ。


つまり、神から指示されたわけだ。

では、その神とはどの神だ??


女神だと、そう信じていた。

ずっと、リコはそう信じていた。

リコだけじゃない。

神託を受けた神官も、アーサーも、アリスも、ここにはいないリリスも。

そして、きっとメリアも。


リンが花嫁候補として指定された神託が、この世界を見守り続けている女神からのものだと、誰も彼もがきっと疑っていなかったはずだ。


けど、リコは知っている。

神託をする存在が、女神だけではないと知っている。

【真聖女教】のゴタゴタの発端時。

メリアはリンにだけ、お告げをした。

しかしあの時、大神官と大聖女にもお告げ、神託があったのだ。

後日、リコがメリアへ確認したら大神官と大聖女にはお告げをしていないことがわかった。


そして、他ならないメリアが言っていたのだ。


神を騙る存在について、メリアは言及していた。

その存在こそ、


「まさか、邪神が関わってる??」


思わず呟いてしまった。


「邪神??」


アーサーが聞き咎める。

アリスもリコを凝視する。


「……リコさん、貴女は私たちの知らない情報をお持ちなのですか??」


「あ、いや」


どうしたものか。

どう答えたものか。

リコは迷った。

本当のことを言ったところで信じてもらえるとは思えない。

あの未来のことをはなしたところで、それはすでに無くなってしまったのだ。


『私が話します』


ここで四人目が、リコへ告げてきた。

四人目、初代聖女メリアである。

奇しくも、その声はアーサーとアリスにも聴こえていたようだ。


『そちらの、アリスという少女はおそらく私の姿が見えるかと。

いえ、二人とも声が聴こえているようなので、おそらく王子様の方も見えるでしょう』


言いつつ、メリアがその姿をみせる。

アーサーとアリスは、驚きで言葉を失ってしまった。

しっかりとその姿が見えているのだ。



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