リコとアリス
翌日。
転移魔法で、リコは王都にやって来た。
さすがに城の真ん前まで転移するのはどうかと考えて、少し離れた場所にある広場に転移したのだが。
「あ、リン君。
1日で謹慎解けたの??
よかったね」
「リンさんだー。
ポーション頂戴、はい、これお金。
え、人違い??
まっさかー、面白い冗談だね。
今日はポーション持ってないって事ね。
じゃ、また今度」
「リンちゃん、ちょっと腰の具合が悪くて診てもらっていい??」
しこたま弟と間違われた。
いちいち訂正するのも面倒なので、弟として接しつつリコは城へ向かった。
腰の具合が悪い人には、治癒魔法をかけておいた。
城まで来たらきたで、門番はリコの顔を見るや。
「また脱走してるぞ!!!!」
「ダメじゃないですか!!
俺たちだって怒られるのに!!」
と、大騒ぎされてしまった。
(どんだけ脱走企ててるの、リン……)
その騒ぎを聞きつけて、まず現れたのはアリスである。
アリスも最初、リコを見て目を丸くした。
リンとまさに瓜二つだったからだ。
しかし、何気ない所作がリンと違うのですぐに別人と理解してくれた。
彼女が門番へ説明と紹介をしてくれ、城の中を案内してくれた。
「アーサー殿下から聞いています。
今回の説明の場には、私も同席するのであしからず」
「……アリスさんって、元暗部出身??」
ピタ、とアリスの表情が固まった。
「なぜ、そのように思われるのですか?」
「足音が小さすぎるから。
それと、全体的に気配が薄い。
周囲にいるのはアリスさんの部下だったりする?
一番ヤバそうなのは、そこの柱に立ってる騎士さんだけど」
と、アリスの守護騎士を視線で示す。
「……すごいですね。
そこまでわかるものですか?」
「アリスさんだって、すぐ私を私だと認識したでしょ?
それと同じことですよ」
観察眼だ。
特別なスキルでもなんでもない。
訓練すれば、誰にでも身につけられる技術である。
「でも、その反応からして暗部ではないかな。
勘違いさせるように誘導してるでしょ。
私の【暗部出身ですか?】って質問に、【はい】でも【いいえ】でもない答えを返してる。
普通なら勘違いするでしょうね」
アリスは戦慄に似た感情を覚える。
リンとも、リンの母とも、そしてリンと交流のあるゲントウとも違うタイプだ。
「アリスさん。
私はね弟の幸せを願ってるんですよ。
そして、貴女にそれを理解してもらいたいと考えた。
何故って、貴女は王子や王様、そしてこの国に忠誠を誓っているように感じるから。
それはつまり、将来、この国の守り手となる聖女紋持ち達に対してもそうだから」
一方、語るリコはアリスのことを知っていた。
何故なら彼女も、本来の未来では王族やリンと共に運命を共にしていたからだ。
処刑後、吊し上げられ、見世物にされ、石を投げられていた者たちの中に変わり果てた彼女の顔があった。
リコは、拷問と時間の経過で醜く腫れ上がり、一部腐りかけていた彼女の顔しか知らなかった。
本来、何を考えそしてあの結末を受け入れたのか、それは分からない。
わかるのは、彼女はこの国に忠誠を誓っていて、運命を共にすると腹を決めていることくらいだ。
「貴女は、覚悟を決めている人だ。
この国のために、働いている人だ。
それがわかるから、こうして話をしています。
これは、私が示せる誠意です。
私の考えを明透に話しているのは、貴女がそれだけすごい人だとわかるからです」
「買いかぶりすぎです。
私は、ただの聖女紋持ちでしかないです。
リンさんやリリス様には遠く及びません。
この国に忠誠を誓っていることは否定しませんが」
「人気投票では三位じゃないですか。
ポーション買いましたよ。
ほんの少し、気分を向上させる効果が付与されてましたね。
回復したあと、ほんの少しだけ気分を明るくする効果です」
アリスは少し微笑んだだけだった。
彼女は立ち止まる。
この国の王子、アーサーの執務室のまえだった。




