初日に塩対応されたメイドの家族を助ける話、あと会議の話
1:スレ主
急募、屋敷を抜け出す方法
2:名無しの異種族
ん?
3:名無しの異種族
どしたどした??
4:スレ主
あ、書き忘れてた
俺氏、男の聖女、本人
5:名無しの異種族
おや、あのポーション作成者様か
6:名無しの異種族
どした??
7:名無しの異種族
つーか、いい加減本名で書き込みしてもいいんでないか??
実名報道されてんじゃん
8:スレ主
いや、なんとなく
9:リン
まぁ、いっか
じゃ、スレ主改め、本名で
10:リン
ちぃと、用事が出来て屋敷を出たいんだけど
連日のもろもろで、外出が規制されてて
警備さんが家から出してくれない件
11:名無しの異種族
守護騎士は?
12:名無しの異種族
守護騎士を護衛につければいいんじゃねーの??
もしや、まだいないの??
13:リン
守護騎士の代わりに、王子様と王女様の護衛騎士がそれぞれ派遣されてきてる
でも、この人たちも外に出ちゃダメって
14:名無しの異種族
守護騎士じゃないのか
15:リン
守護騎士の選定に時間がかかってるっぽい
ほら、妨害工作いろいろあったから
ほかの貴族とかの息がかかってない人選ばなきゃいけないらしくて、難航してるんだってさ
16:名無しの異種族
それで、その2人の直属の護衛がついた、と
17:リン
今日のポーションのノルマは作り終えたし
農業ギルドに卸すやつは、人が派遣されてきて持っていったし
自分で動くことが減っててさー
だから、散歩に行きたかったんだけど
まだちょっと難しいらしい
18:特定班
そりゃ、難しいだろう
なんかスレ主のまわり、スレ主の知らないところで結構ゴタついてんだぞ
19:リン
そうなの??
20:特定班
屋敷の中にまではさすがにはいってきてないっぽいけど
他の聖女紋持ち貴族からのスパイや、他国からのスパイが周辺探ってる
21:リン
スパイかぁ
全然気づかなかった
22:配信者
最近、公園にきてなかったの
それが理由かぁ
てっきりポーション作りでゴタゴタしてるのかとばっかり
23:リン
ポーション作りは、屋敷が大きいことで
設備整えて工場っぽくしたから、全然間に合ってる
24:名無しの異種族
相変わらず一人で作ってるの??
25:リン
まぁ、一応
でも慣れてくるとつまんないな
たまには外出たい
庭には出れるけど、動き回りたい
もと野生児だから、ジッとしてるの性に合ってないんだよ
26:リン
端的に言うと、そろそろドラゴンでもサイクロプスでもいいから
殴って討伐したい
体動かしたい
27:名無しの異種族
いや、聖女活動で外出られるだろ
28:リン
いや、最近はあんまり雑用的なの回ってこなくなった
この前なんて、冒険者ギルドでけが人がたくさん出たらしいけど
呼ばれなかったし
29:名無しの異種族
妨害工作、の可能性は低いか
30:名無しの異種族
貴族の聖女紋持ちと同じ扱いされとるぞ、それ
31:リン
(‐д`‐ll)オェ
なんで??
32:名無しの異種族
そりゃ、お前
ほかの聖女紋持ちにも活躍の場を与えないと不公平だろ
バズってから、スレ主の人気ヤベーし
33:名無しの異種族
動画サイトだと、最初の人気投票のランキング予想してる人いるしな
ちなみに、全員が全員スレ主は一位と予想してる
34:リン
何度も言うけど、一位になったところで
俺は一年で実家に帰るんだけどなぁ
何をそんなに期待してるんだろ
35:名無しの異種族
質のいいポーションの提供
36:名無しの異種族
いざと言う時のための、回復&蘇生要員
37:名無しの異種族
ま、いろいろだろ
38:名無しの異種族
王都内なら、守護騎士なしでも動けたのになぁ
39:リン
>>38
ほんとそれな( ´-ω-)σ
ぶっちゃけ、二日くらい前まで全然平気だったんだぞ
40:名無しの異種族
え
41:名無しの異種族
じゃあ、なんで突然?
42:特定班
あ、あー、はいはい
そういうことね
43:名無しの異種族
なんか知ってるんか?
特定班??
44:特定班
石投げられたからだろ
45:名無しの異種族
はい?
46:名無しの異種族
石??
47:特定班
(*´・д`)-д-)))ソゥソゥ
48:特定班
スレ主は知らないみたいだけど
スレ主に対して行われた妨害工作
それに協力した管理部署の連中も何人か逮捕されたり、解雇されたりしたんだ
そいつらの家族がスレ主のこと逆恨みして、2日前たまたま街中で見かけたスレ主へ、石を投げた
49:リン
あー、あったな、そういえばそんなこと
当たらなかったけど
50:名無しの異種族
石って、当たり所悪いと死ぬやつ
51:名無しの異種族
クズな奴の家族もクズだったか
52:リン
まぁ、死んでないし
怪我はすぐ治せるから
そんな気にするようなことでもなかったし
そもそも当たらなかったし
53:名無しの異種族
怒れよ、もっとこう、怒れよ
スレ主( ̄▽ ̄;)
54:名無しの異種族
そうそう
他の人にもそういうことするかもしれないだろ
だから怒った方がいいとおもう
55:リン
たしかに、危ないなーとは思ったから
注意しようとしたんだけど
する前に、護衛の人達が取り押さえてどっか連れてかれたんだよね
56:名無しの異種族
怖い怖いカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ
57:名無しの異種族
スレ主の考え方も怖いけど
連れて行かれたってのも、ちと怖いな
58:リン
あ
59:名無しの異種族
どした?
60:リン
久しぶりに見た
綺麗なお姉さんだ
61:名無しの異種族
え?
62:名無しの異種族
え、女神様、でたの??
63:名無しの異種族
女神様、なんか言ってる??
64:リン
来る者を拒まずに、手を差し伸べなさい
だってさ
65:名無しの異種族
人助けしろ、ってことか
66:名無しの異種族
元々拒んでないのに、なんなんだそれ??
67:スレ主
さぁ??
あ、なんか外が騒がしい
警備さん達が誰かと言い争ってる
68:名無しの異種族
なんだなんだ?
69:名無しの異種族
厄介ごとか??
70:スレ主
様子見てくる
71:名無しの異種族
おう、いてらー
72:名無しの異種族
てらー
73:名無しの異種族
ちゃんと報告来いよー
――――――――
――――
――……
185:リン
王都に来てすぐ、俺が立てた掲示板あったじゃん?
186:名無しの異種族
あ、スレ主だ
187:名無しの異種族
一番はじめの掲示板がどうしたんだ??
いま関係あるの??
188:リン
その掲示板で、めっちゃ塩対応してきたメイド、いたじゃん?
189:名無しの異種族
いたな
190:特定班
いたなー
191:リン
そのメイドに泣きつかれた
192:名無しの異種族
はい??
193:名無しの異種族
なんで??
194:リン
この前のスタンピードの後始末で一緒になった聖女Aが連れてきたんだ
俺が顔出したら、メイドは玄関先で地面に頭擦り付けて泣いてさ
顔ぐちゃぐちゃにしながら
ごめんなさい、助けてって繰り返されたんだ
195:リン
なんかこの人、この前のゴタゴタで解雇されてたらしいんだ
196:名無しの異種族
ふぅん?
197:名無しの異種族
それで??
198:名無しの異種族
路頭に迷って泣きついてきたとか??
199:リン
外でそんな風に泣かれても近所迷惑だし
警備さんたちも、通報する手前だったし
メイドはなにか尋常じゃなさそうだし
ってことで、家に入れて詳しく話きいたんだよ
200:名無しの異種族
お人好しだなぁ
201:名無しの異種族
それでメイドの事情って??
202:リン
家族が死にそうなんだって
不治の病ってやつで、もう聖女の力でしか癒せないだったか治せないだったか
とにかくそういう状況なんだって
203:名無しの異種族
へぇ、そんなの他の聖女紋持ちに泣きつけば良かったのにな
それこそ聖女Aが一緒なら、彼女に癒してもらえばよかったのにな
なんでスレ主なんだ??
204:名無しの異種族
(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-
205:リン
その辺のことについては、聖女Aが教えてくれた
まず、メイドは黒バラ令嬢さんを頼ったらしい
でも、解雇されてて取り合うことすらされなかった
それは他の聖女紋持ちも同じ
206:名無しの異種族
解雇されたのによく王宮に入れたな
207:リン
いや、聖女活動してるとこに凸したらしい
208:名無しの異種族
あー、なるほど
209:リン
でも守護騎士たちに取り押さえられたりして
取り合ってもらえなかったらしい
210:名無しの異種族
そりゃそうなるだろ
211:リン
それでもなんとか助けてもらおうと
メイドしてた時に、お世話した聖女紋持ち達を訪ね歩いた
でも、誰も経歴に傷がついたメイドを助けようとはしなかったらしい
212:名無しの異種族
自業自得じゃん
213:リン
そんな中、メイドは聖女Aにたどりついた
聖女Aも聖女活動中だったところを凸されたらしい
その時、ほかの聖女もいたけど
聖女A以外は冷たくあしらうだけだった
214:リン
聖女Aはメイドから話を聞くと、すぐに了承した
それで、守護騎士と一緒にメイドの家へ行った
メイドの家族を診て、聖女の力で治癒しようとしたけどダメだった
色々試してみたけどやっぱり、どうしても家族を癒すことはできなかった
それで、俺のことを紹介しようと考えて、家まで来たってわけ
215:名無しの異種族
聖女Aは、メイドがスレ主に対して塩対応してたこと知らなかったん?
216:リン
メイドが俺に頼るの遠慮した、とは聞いた
この辺は聖女Aがズバズバ話してくれた
217:リン
俺に塩対応してたことで、絶対仕返しで断られるって思ってたらしい
218:名無しの異種族
メイド、塩対応してた自覚あったんだな
219:名無しの異種族
いや、塩対応っていうか
嫌がらせだったろ
初日のことしか知らんが
220:リン
初日以外にも、俺とメイドは関わりあったよ
一応、俺の身の回りの世話係がこのメイドだったから
守護騎士と同じように、庶民出身者にもメイドが世話係として配属されることになってたらしいし
でも来る度に、まぁ、あんまりいい事は言われなかったし
俺と関わることがストレスになってたっぽいから、
「そんなに来たくないなら、別にいいよ。
自分のことは自分で出来るし」
って伝えたんだよ
そしたら、姉ちゃんみたいなブチ切れ方して本当に来なくなった
221:名無しの異種族
言い方
222:名無しの異種族
スレ主、それ、言い方も問題だと思う
223:名無しの異種族
姉ちゃんに対してもそんな言い方してたのか
もしかして、仲悪い??
224:名無しの異種族
兄弟姉妹の、真ん中は、気が強いからなぁ
というか喧嘩っパヤイことがある
気が強いんだけど、変なとこで肝っ玉が小さいもあるある
225:名無しの異種族
兄弟いないからわからん
226:リン
まぁ、ぶちぶち文句言われなくなって
気が楽になったから、お互いにとっては良かったと思う
227:名無しの異種族
でも、それメイドとしては職務放棄になるからな
解雇になったの、それも理由なんじゃねーの?
どんなに嫌だろうが仕事は仕事なんだから
与えられた仕事、報連相せずに放棄してたのがバレてクビになった、としたら合点がいく
228:名無しの異種族
だとしたら、メイドの自業自得だな
229:名無しの異種族
インガオホー、ともいう
230:名無しの異種族
因果応報な因果応報
231:名無しの異種族
家族はその巻き添えくらうのか
怖い怖い
232:リン
家族が助かるならなんでもするって言われてもなぁ
233:名無しの異種族
女神様からの指示はたしかにあるが
断るだろ、これ
234:名無しの異種族
自分に対して嫌なことしてきた奴、助けるメリットもないもんな
ましてや、これは割り振られた聖女活動、つまり仕事でもなんでもない
235:名無しの異種族
つーか、断った方がいい
自分の行いが自分に返ってきた、それだけだ
236:名無しの異種族
俺だったら
絶対助けない
やったことは、嫌がらせとかそういうのの延長だろうけど、なんでそんな嫌なことしてきた人助けなきゃいけないのかわからん
自分がした行いがどういったものだったのか、わからせてやるにはいい機会だと思う
237:リン
あ、そうか
条件つければいいのか
そうしよう
238:名無しの異種族
ん?
239:リン
よし、話はまとまった
とりあえず、メイドの家族見に行ってみる
240:名無しの異種族
助けるんかい!
241:リン
助けられるかどうかわからないから
ダメだった時に、クレームつけないって約束してもらった
242:名無しの異種族
口約束?
243:リン
うん
244:名無しの異種族
口約束はやめとけ
せめて契約書にしろ
口約束は反故にされるぞ
245:リン
同じこと、聖女Aの守護騎士にも言われた
つーてもなぁ、そんな書類用意したことないし
246:配信者
あ、ならさ
ドローン貸そうか?
んで、一部始終を生配信するとか
これなら、不特定多数が証人になる
そのメイドとやらが了承すれば、だけど
247:名無しの異種族
王宮の許可も必要じゃないか??
248:リン
えー、別にそこまでする必要ないよ
ただ見て、仮に俺が何も出来なかったとしても
文句言われなきゃそれでいいから
249:リン
あと、よくよく考えれば
口約束を反故にされたところで、その後は基本接点持つこともないだろうし
うん、口約束でいいや
んじゃ、ちょっくらメイドの家族みてくる
(・ω・)ノシ
250:名無しの異種族
まぁ、本人が良いっていうならいいけどさ
――――――――
――――
――……
641:リン
終わったー
642:名無しの異種族
あ!戻ってきた!
643:リン
メイドの家族の不治の病
不治の病じゃなかった件
644:名無しの異種族
え、そうなの?
645:名無しの異種族
ちゃんと癒せたのか?
646:名無しの異種族
治せたん??
647:リン
王女さまと同じだった
648:名無しの異種族
え、それって??
649:名無しの異種族
呪いだった??
650:リン
俺がメイドの家に行くと、10歳くらいの男の子がベッドに寝かされてた
メイドの親は、何年か前に亡くなっていまは姉弟の二人で暮らしてきたんだってさ
で、今年の初めに弟が倒れた
医者や神官に診てもらったけど原因は不明
ポーションを与えて経過観察するも、どんどん衰弱していったらしい
その矢先に仕事をクビになった
このままだと死ぬかもしれないって考えたメイドは、聖女紋持ち達を頼ることにする
結果は説明したとおり
651:リン
それで俺にまで頭を下げたってわけだった
652:名無しの異種族
ま、大神官や大聖女にすら癒せない呪いが、体調不良の原因だったとしたら
その辺の医者になんとかできたわけないもんな
653:名無しの異種族
じゃ、やっぱり目玉的なのが見えたの?
654:リン
(*´・д`)-д-)))ソゥソゥ
全く同じだった
王都って、怖いなぁ
655:名無しの異種族
どうやって呪い解いたんだ?
またナイフ使ったの?
656:リン
包丁借りた
あとは、王女様の時と一緒
657:名無しの異種族
魔法複数使ったのか
658:名無しの異種族
それはそれとして
よく屋敷出られたな
警備、しぶらなかったんか??
659:リン
聖女Aの守護騎士が話をつけてくれた
なんか、身分証みたいなのを警備さんたちに見せて
めっちゃ驚かれてたけど、でも許可された
660:考察厨
身分証?
守護騎士の??
661:リン
うん
俺はちゃんと見てないけど
662:名無しの異種族
守護騎士って、ほかの騎士とは制服とかが違うから
それでわかるはずだけどなぁ
わざわざ身分証みせるほどか??
663:名無しの異種族
でも、スレ主のいまの屋敷に来た時は入らせてもらえなかったんだろ?
なのに、なんで連れ出す時には身分証見せたんだ??
664:考察厨
警備が驚いてたってのも引っかかるな
別に、見た目で守護騎士ってわかるのに
なんで身分証見せただけで驚いたのか
普通、確認なだけだからそこまで驚かないだろ
もしかしたら、守護騎士の中でも偉い人なのかもしれないな
それなら身分証みせたら、警備員が驚いたってのも納得出来る
665:リン
とりあえず、メイドの家をあとにして
メイドはまた土下座してた
別にいいんだけどなー
俺はクレームさえこなけりゃそれで
帰りに聖女Aが、どうせならお茶でもしていこうって、提案したから
今、喫茶店に来てる
とりあえず、今日はこの辺で落ちるわ
(・ω・)ノシ
※※※
数日後。
王宮内、王女の私室。
そこに聖女Aとスレ民から勝手に呼称されている、聖女紋持ちの少女がいた。
対するは、この部屋の主である王女だ。
「それでそれで??」
王女が無邪気に話の続きを催促する。
「彼は姫さまを救った時と同じように、男の子を救いました。
めでたしめでたし」
聖女Aは優しく微笑んで、話を終えた。
スレ主ことリンとお茶をしてそのままの足で、ここに来たのだ。
さすがに疲れていたが、それでも疲れを感じさせないようつとめている。
「アリス!お話ありがとう!!
やはりあの方は素晴らしい方だわ!」
と、王女は満面の笑みである。
王女は自分を救ってくれた彼、リンに対して敬愛や感謝とはまたちがった感情を抱いていた。
世間一般的にいうところの、恋である。
ちなみに、アリスというのは聖女Aの名前である。
「あ、そうだ!
私がお礼にと贈ったお菓子についてはなにか言っていた?」
「とても美味しかったと言っていましたね。
故郷のご家族にも送りたい、と言っていたので店を教えました」
「よかった!!
そ、それなら、その、あの。
お付き合いされている方がいる、とか、慕っている方がいるとかは??」
「そんな話はしなかったですねぇ。
気になるなら、姫さまから呼び出してお聞きすればいいじゃないですか」
それだけの権力は持っている。
「そ、そうですけど。
そうなんですけど!
でも、もしも恋人がいたりしたら、泣いちゃいそうで」
そんなことで泣くなよ、と聖女Aことアリスは思ったが口にはしなかった。
「だって、あんな気高い人に選ばれるような女性ってことですよ?
とても素晴らしい方に決まっています!」
王女はリンに命を救って貰った時から、彼のことをやたら美化している。
当人はどこにでもいる、男子高校生だ。
多少、お人好しが過ぎるが。
「世間には略奪愛というものがありまして、いたっ」
と、アリスの話があらぬ方向に向かいかける。
すくなくとも、12歳の恋に恋する女の子に聞かせるには爛れ過ぎた話だ。
それを、控えていた護衛の騎士が彼女の頭を軽く小突いて止めさせる。
王女を助けた時、真っ先に感謝した女騎士である。
「姫さまになんて話をするんだ」
本当なら、真っ先にお目付け役の守護騎士が注意するのだが、アリスの守護騎士は席を外している。
それはともかく、王女は見てわかる通りリンに恋をしている。
このことを、大聖女は知っている。
これは、チャンスといえばチャンスだろう。
彼の血を王家へ取り入れる、チャンス。
問題は、リンが色恋沙汰に興味のないニブチンっぽいところだ。
アリスの婚約者がそのタイプなので、彼女は詳しいのである。
(神のみぞ知る、かなぁ)
と、アリスはこの先の王女と男子高校生の恋愛について、内心で呟いた。
王女が恋愛面で苦労するのは目に見えているので、とりあえず、頑張れとしか思えなかった。
※※※
同時刻。
王宮内の地下大聖堂。
その奥にある、祈りの間。
大聖女のみ、入ることが許されている神聖な場所だ。
その場所で、老女がひとり膝を着いて祈りを捧げている。
ほかならない、大聖女である。
大聖女は、この国をこうして守り続けている。
聖女紋を持つ者の中でも、国民によって選ばれた者だけが、ここで国のために祈ることができる。
それが国の安寧と平和へ繋がるのである。
聖女紋持ちの魔力は特別だ。
祈りとともに、その特別な魔力をささげる。
ささげられた魔力は、地脈を通って国中へ流れる。
すると、瘴気は消え、モンスターの凶暴さも消えるのだ。
王都や各領にある主要都市の結界の維持も兼ねている。
初代聖女の祈りからはじまった、この仕事。
これがなければ、この国がここまで栄えることも無かった。
いまだ、機械化できていない仕事でもある。
機械に魔力を注ぐことはできても、機械が地脈に魔力を注ぐことはできないのだ。
「…………」
大聖女は祈りを終えると、立ち上がる。
そして、右手の甲を見た。
皺のなかに、それでも存在を主張する百合の紋章がある。
大聖女は、祈りの間を出る。
そこには、大聖女の守護騎士達がいた。
王家や国ではなく、大聖女にだけ忠誠を誓った守護騎士達だ。
彼らに囲まれ、大聖女は大聖堂へ移動する。
そこには、今回選ばれ連れてこられた聖女紋持ち達と、その担当守護騎士を監視し、行動を報告する役目をおった者たちが揃っていた。
何人かは事前に報告があった通り、代理人を立てている。
その中心に、大聖女の孫であり、この国の王子がいる。
一同を見渡して、大聖女はゆっくりとおごそかに口を開いた。
「それでは、最初の選定会議をはじめましょう。
私の後継者であり、この国の守護者を決める会議をはじめましょう」