ヤベェ団体のとこに行けって言われた( ̄▽ ̄;)
朝。
リンは、いつも通り目が覚めた。
しばらくぼうっとしていると、その女性は現れた。
「あ、お姉さん。
おはようございます」
リンが挨拶をすると、ニコリとその女性は微笑んだ。
物心ついた頃から見えている、【綺麗なお姉さん】である。
スレでは、女神ではないか、と言われている存在だ。
――おはようございます、リン――
リンの脳内へその優しい声が届き、響く。
「…………」
きっとまた何か予言とか助言めいたことを言うに違いない。
そう考えて、リンはお姉さんの言葉を待った。
お姉さんは微笑みを消すと、キリッとした顔になる。
――勇者とともに、北へ向かいなさい。そこで貴方の力を必要とする者たちが待っています――
「北でなにか良くないことが起きているってことですか??
それで困っている人達がいる??」
【力を必要とする者がいる】、というのは困っている人達をさしている。
リンの確認に、お姉さんは頷いた。
そして、消えてしまう。
「ふむ」
リンはベッドから降りると、手早く身支度を整える。
それから、守護騎士と警備さんのために朝食を準備する。
パワーアップできる賄い付きとあって、リンの家の警備は実は人気だったりする。
先日の魔族襲撃でのやらかしもあったからか、警備員という名の監視員が増えた。
人件費が増えて大変だろうことは、リンにも理解できる。
そろそろ城のあの物置部屋に戻ってもいいような気もする。
なにげに程よく狭くて、実家の秘密基地のようで落ち着くのだ。
まさに実家のような安心感というやつだ。
リンが先に朝食を済ませる。
すると、住み込みの守護騎士タクトが姿を現した。
そこからは交代で、夜勤明けの警備さんたちもやってくる。
労いと感謝を伝えて、給仕をしつつ彼らとなんてことない雑談を交わした。
この家には給仕をしてくれる人はいない。
リンが自分でなんでもできてしまうからだ。
一応、王宮としては探してはいるらしいが、身元の保証諸々、信頼信用の出来る人物となると中々見つからないらしい。
なにせ、リンはこれまでの功績からほぼ次代の大聖女と決定しているようなものだ。
男なので、王子と結婚はしないが。
相応の地位というか役職を作るらしい、というところまで話は進んでいた。
リンからしたらいい迷惑である。
しかしそれを伝えることはない。
揉めるのは明らかだからだ。
それなら、流されるままでもいいかな、という考えに至った。
ある程度の自由は保証してくれるらしい。
どうせやりたいことも、なりたいものもないのだから。
見つかる気もしない。
無理やり見つける気もない。
見つかったらいいなー、程度である。
「そういえば、朝から軍の関係者がバタついてるみたいですけど、なにかありました??」
警備さんの一人が、タクトへそう聞いた。
「そうなのか??
管轄が違うから、なにも知らないが」
組織としてのトップは同じだが、部署が違う。
部署が違うので、双方から連絡がないと内部でなにが起きているのか全くわからない。
その会話を他所に、リンはネット記事を漁りだす。
北方面で何か起きていれば、速報があったはずだ。
(これか??)
いくつか、記事を見つけることができた。
(人喰いドラゴンの被害。無差別攻撃魔法乱射殺傷事件……)
どれもたしかに大変なニュースばかりだ。
しかし、ドラゴン関連は現地の冒険者ギルドや農業ギルドに狩猟ギルドが対応するだろう。
無差別殺傷事件の方も、痛ましい事件ではあるが、やはりこちらも現地の捜査当局や回復魔法や治癒魔法を使えるものが対応するだろう。
なによりも、聖女紋持ちも派遣されている、と記事にはあった。
リンからすれば、大先輩にあたる人たちが仕事をしているはずである。
北、という方角だけでは範囲が広すぎる。
ほかにめぼしい記事は無かった。
しかし、お姉さんがわざわざ伝えにきてくれたのだ。
何かが北で起こっているのは、たしかである。
特定班にでも頼んで調べてもらおうか。
そう考えた時だった。
王宮からメッセージが届いた。
中身を確認する。
至急、登城してほしい旨が記載されていた。
※※※
1:リン
なんか、神託で北にある山に行くことになった件
でも、俺が行くの皆が渋ってるんだ
北の山ってなんかあるの????
2:名無しの異種族
おや、男の聖女のスレ主じゃん
3:名無しの異種族
北の山?
4:名無しの異種族
北の方にある山って、結構たくさんあるけど
どれ????
5:リン
【龍神の山】って名前のとこ
6:名無しの異種族
あー、あの一番デカイ山か
7:名無しの異種族
そこへスレ主が行くように神託があった
でも、渋ってる人達がいる、と
8:名無しの異種族
誰が渋ってるんだ??
9:リン
王子様と、薔薇ジャムさんと、聖女Aと
ほかにも何人か、聖女紋持ちが反対してるというか
あ、ちなみに勇者とともに向かうようにって神託だったらしい
10:名無しの異種族
なんで渋ってるんだ??
11:リン
俺が聞きたい
神託受けた大神官と大聖女は、複雑そうな顔してる
けど、渋ってはいない
12:リン
俺、そこ行っちゃいけないんだろうか?
お姉さんからも、そこに行くように言われてるんだけど
13:名無しの異種族
問い質せばいいじゃん
14:リン
問い正そうとしたら、王子様と薔薇ジャムさんが大神官相手に口論になってて
15:名無しの異種族
って、現在進行形かいwww
16:名無しの異種族
お姉さんって、女神様??
女神様からも、そこ行けって言われてるの??
17:リン
(*´・д`)-д-)))ソゥソゥ
18:名無しの異種族
根回しされとるwww
19:リン
なんか、困ってる人達がいるからとか言われた
20:名無しの異種族
なるほど
21:考察厨
あー、それはな?
その【龍神の山】って、今は男子禁制なんだわ
22:名無しの異種族
けど神託で名指しされてるなら、別に問題ないんじゃね??
23:考察厨
で、さらに言うなら【真聖女教】っていう
まぁ、なんていうか、とても熱心な宗教団体が占領しててな
24:名無しの異種族
え、あの??
25:名無しの異種族
あぁ、あの、熱心な
26:名無しの異種族
だいぶ、言葉を選んでるな
27:リン
なんとなーく、問題のあるグループっぽいな
28:名無しの異種族
宗教団体をグループとか言うなwww
29:名無しの異種族
リンは【真聖女教】について知らないの?
30:リン
(( 'ω' 三 'ω' ))
全然知らない
31:名無しの異種族
端的に言うと、過激な団体かな
32:名無しの異種族
カルトだろ
カルト
33:名無しの異種族
元々、別のカルト宗教の団体だったんだけど
こう、人死の出る行動起こして解体されて
その後継団体として名称を変えてな
今の団体になったんだ
34:名無しの異種族
人死には大聖女様達が蘇生してくれたから
なんとかなったけどな
35:名無しの異種族
元々の宗教団体は、やらかしたことがヤバすぎて
所属してた人らもその後、白い目で見られることになった
36:名無しの異種族
基本的に、宗教の自由は認められてるから
後継団体とはいえ、問題行動さえ起こさなければ存在は許されてる
37:名無しの異種族
名前変えても、過激な考えはそのままっぽいのがなぁ
38:名無しの異種族
リンを関わらせたくないってのは、たしかにわかる
39:名無しの異種族
最悪殺されかねないし
40:リン
え、まってまって
その、えーっと、元々の団体の人達何仕出かしたの??
41:名無しの異種族
ガチで知らないのか
42:名無しの異種族
まぁ、仕方ないよ
もう四十年も前のことだから
43:名無しの異種族
とある貧民街で活動中だった
聖女紋持ちたちの連続殺人が起きたんだ
紋章持ちたちは、すべて紛い物で権力の象徴で、それを正すことが使命だとかなんとかわけわかんないことが教義だったらしい
その教義に従って、守護騎士たちの目を掻い潜り
、殺しに殺しまくったんだ
44:名無しの異種族
その殺害手口は、模倣犯が出てくる可能性も考慮されて
どんなものだったかは、俺たち一般人には知らされていない
45:名無しの異種族
最終的に、当時の若手からベテランまで五十人くらいが犠牲になったんだったかな
なかには、発見が遅れて蘇生できない人もいたらしい
46:名無しの異種族
被害者は蘇生させても、殺害前の記憶が混乱してて
中々犯人が捕まらなくてな
どうも薬物が使われてたんじゃないか、とも言われてる
47:名無しの異種族
でも、ついに犯人たちは尻尾を出した
こともあろうに、大聖女様を暗殺しようとしたんだ
で、それを阻止されて捕まった
そのあとのざっくりした経緯は、検索すると出てくるから
自分で調べなー
宗教団体としては、最悪な末路の一つも含まれてるが
まぁ、リンなら見ても大丈夫だろ
48:リン
了解
49:リン
あ、こっちも話まとまった
行くことになった
50:名無しの異種族
結局行くんかいっ!
Σ\(゜Д゜;)