リコと綺麗なお姉さんの、楽しい暗躍生活
「場所は特定したから、あとはあんた達を送るだけ」
と、リコは言ってのけた。
「送るって……魔法が使えないのに?」
「王都には入れないってだけで、その周囲ならまだ大丈夫だから」
またも断言する。
その様子に、ずっと違和感を抱いていた守護騎士のタクトが疑問を投げる。
「どうして、そこまでわかるんですか?」
リコはタクトを見返す。
リンと同じ顔で、でも、彼とは違う笑顔を向けながら自信満々に彼女は答えた。
「頑張って調べたから!」
サムズアップもついてきた。
いやいや、おかしいだろう。
とか。
この短時間に?
とか。
さらに疑問が出てくるが、リコは問答無用と言わんばかりに、
「さぁ、ほら、はやく準備して!
転移させてあげるから!」
そう急かしてくる。
元々、持ってきた荷物はほぼ無かった。
自分の祖母含め、村人達の体調はリンの魔法で完全に回復させることが出来たからだ。
そんなこんなで、帰宅した時よりもバタバタでリン達は、王都へ出戻ることとなったのだった。
リコが転移の魔法陣を、空中に指を滑らせて描く。
描きつつ、
「転移直後に、もしかしたら勘づかれて襲撃されるかもだけど、そこは自分たちでなんとかしてね」
「姉ちゃんも来ればいいのに」
姉がいれば、相手がまぞくといえど百人力どころか一騎当千の働きをしてくれるに違いない。
「あのねぇ、私がここから消えたら。
誰が村のお年寄りのめんどう見るの?
もしかしたら、また体調不良者が出るかもでしょ。
そしたら、もう一度あんたに来てもらわなきゃいけない。
連絡係よ、連絡係」
魔法陣を描き終わる。
リンとタクトが光に包まれ、転移し、その姿が消えた。
直後、
――行きましたか――
リコへそう言葉が投げかけられる。
いつの間にか、彼女の横に女性が立っていた。
リンが、【綺麗なお姉さん】と呼称する存在だ。
「行ったよー」
――大丈夫でしょうか?――
「さて、どうだろう?
でも、今回はとても上手くいってるから。
きっと大丈夫だよ」
言いつつ、疲れた笑いをリコは浮かべた。
「メリア婆ちゃんも大変だねぇ、暗躍」
――人聞きがわるいですね――
綺麗なお姉さんこと、初代聖女はムッとして言い返す。
そう、彼女は女神ではない。
初代聖女の魂が、形を成したものだ。
その姿は、リンにしか見えない、はずだった。
しかし、リコにもしっかり見えている。
メリアとの血の繋がりもあるのだろう。
くわえて母親の胎内にいるときに、リンの持つ聖女紋の影響を受けていたからだろう、とリコは考えていた。
初代聖女メリア。
伝説と、歴史に名を残す、偉人である。
――貴女だって共犯じゃないですか、リコ――
「違いない」
ククク、と楽しそうにリコは笑った。
「裏で暗躍ってのも楽しいからねぇ」
正直、不安もある。
あるけれど、それは気にしたって仕方ないことだ。