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05.




 その後は大変だった。そしてとても苦い出来事となってしまった。


 まず、あのお化け屋敷を出た私を待っていた人たちの中に、何故かあの神社で遭遇したおじさんが居た。

 あのおじさん、お化け屋敷のエキストラでもなければスタッフでもなく、本当に神社の神主さんだったらしい。


『すまなかったな、嬢ちゃん。まさか五時間も隠されてるとは思わなかったんだわ』


 そう云って、神主さんは私に頭を下げてきた。

 私はお化け屋敷に入って以降、なんと五時間も行方不明になっていたのだという。

 しかもそれだけでなく、私が歩いて来た道はお化け屋敷のセットではなく存在する場所で、あの神社も本物の山神様が祀られている神社なのだという。

 そう、お化け屋敷のあの設定は、神社のある村で実際に起きた事件と、今も尚行われている神事だった。

 集まっていた遊園地のスタッフの人に、実際のお化け屋敷内の写真を見せてもらったけれど、本当に違っていた。写真に写っていたのは、私が出てくる時に見たもので、それ以前の光景ではなかった。


 神主さん曰く、神隠しとはちょっと違うらしい。

 神様じゃない者が引きずり込もうとしていたので神隠しとは言えないけれど、完全に関わっていない訳でもないので表現が難しいらしい。

 その神隠しに近い状況だったのは、私に原因の半分があるらしい。けれど、あの白いモノに狙われていたのは、人間の故意だった。


セイラが私を呪っていた

遊園地を選んだのも、あのお化け屋敷に入る事を誘導したのも、全部私に災いが降りかかれば良いと思ってのことだった


 それを知ったのは、お化け屋敷騒動から三ヶ月経った頃、セイラが亡くなってからだ。


そう、セイラが亡くなった

亡くなったのは、私を呪うために訪れていた、墓地。それもあの白いモノの亡骸が埋まっている場所だった


 セイラは自身より私が良い思いするのが嫌だったのだという。良い思いというのは、誰かに好意的に接せられたり、周囲に人がいること。それで疎外したりしても、私が何も気に留めない事にも腹が立っていたらしい……『許してほしい』と、メグミに泣きながら打ち明けられた。


何故泣きながらだったのか

それはメグミも半分共犯者だからだ


 メグミが知ったのは、遊園地に行く企画を立てていた時だという。

『メグミだって、大学の入試で抜かされたこと、根に持ってるんでしょ?』という言葉に乗ったのだと、電話越しで告白された。

 何でも、メグミは私より成績が良いことを内心自慢に思っていたらしい。それが入試で抜かされた事が面白くなかったんだそうだ。そんな告白はいらなかった。

 でもメグミは、自分があの白いモノを目撃したことで恐怖心が勝って、中止を訴えたのだという。それがあの、順番待ちの中、セイラとメグミがギスギスしていた原因だった。


 身近な人にそこまで恨まれていた事に、暫く凹んだ。終わり方もスッキリしなかったから、余計凹んだ。


 それで、何で私に許しを請うていたかというと、何でもあの白いモノの声とともに、セイラの声も聞こえるのだそう。

 何で私が許せば解決すると思ったのだろうと聞いてみれば、私は伴侶殿に気に入られたかららしい。それはあの騒動の時、神主さんから教えてもらった事だ。だから私が許せば神様も許してくれて、助けてくれるんじゃないか、という事らしい。


 因みに、神隠しの原因の半分は、その神に気に入られた事だと、神主さんに云われた。

 山神様的には、『我が伴侶が気に入った者だ。きっと伴侶にとって良き話し相手になるだろう』という、何とも軽い気持ちで引き込もうとしていたらしい。

 それを止めたのが伴侶殿で、またあの白いモノを追い払ったのも伴侶殿だという。

 伴侶殿は私が『山神様と末永くお幸せに』と願った事が嬉しかった、とのこと。


 そんな踏んだり蹴ったりな状況だった私は、メグミの懇願に『ごめん、それは無理』と返した。

 無理というのは、私が許せるかどうかじゃなくて、神様の問題。


『お嬢ちゃん、今後色々あるかと思うが、それは相手の自業自得だ。仮に嬢ちゃんが許したところで、お気に入りを害そうとした者を神様は許さねぇ。それも一度ならず何度も害そうとした奴なんざぁ許す価値もねぇからな。そもそも、自分たちの行いでそうなったにも関わらず、相手に許してもらって、あまつさえ嬢ちゃんから神様に取り入ってくれなんてお願いされても聞くなよ? ま、聞いたところでそれは神様は関係ないがな』そう神主さんは云っていた。


 それをメグミに話しても、メグミは『いいから神様に許してくれるようにお願いしてよ!』と一点張り。終いには怒鳴り散らして云いたいだけ言い残して着信拒否にされた。そもそも、その悩ませに来てる相手って神様じゃないじゃん、という私の言葉はついぞ届かなかった。


 マドカとは、社会人になった今でも連絡を取り合っている。

 そして社会人となった私は、就職した会社での配属先が決まった。


あの、騒動の起きた遊園地の近くだった。


『お嬢ちゃん、伴侶殿に逃がしてもらったんだろ? その恩を無駄にすんじゃねぇぞ。良いか、帰る時に何か聞こえても、絶対振り返るなよ。地元に帰ってからも同じだ。何か聞こえても絶対振り返るな。今回は助かったが、次はわからねぇからな』


 そんな神主さんの言葉を心に刻みながら、私は帰り道はさっさと帰る事にしている。途中何か呼ばれた気がする事もないけれど、今の所は無事に過ごしている。


 声の相手が女性のものになった事は、あまり考えたくはない。



読んで下さりありがとうございました!

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