第一章 ③
「ちょっとルースト、さぼってないで荷物運び手伝いなさいよ」
the、委員長系キャラと言わんばかりの説教とともにミンディアがやってきた。ほんとにこいつ性格以外いい方だと思うんだけどなー
そんな益体もないことを考えていたら、思いっきりにらまれた。なんだこいつ、思考が読めるのか!
ひええ、女の勘って恐ろしい
「いいじゃないか、少しぐらい感慨に浸ったって」
とりあえず言い方が気に食わないので、反発しておく
「みんなやってるのよあんただけさぼっていい道理はないでしょう」
馬車の方を見てみると、確かにロイとユの二人が、作業をしている。しかしちょうど今始めたようで、1,2個しか荷物が外に出ていない。というか、
「それを言うんだったら、おまえもやってねーじゃん」
「あんたを注意しに来たんで、まったく」
わが意を得たりと思ったのだが、きれいに受け流されてしまった。あきれたかのように、ミンディアがため息をつく
「はいはいやればいいんでしょ、番長さん」
見下したかのような態度に少しイラっと来たので、言い返してやった。ちなみに番長というあだ名は幼年学校の時に今とおんなじ態度で、周りから恐れられていたから(ロイ談)まあ結うてしまえば言うてしまえばなんてことないのだが、ミンディア本人は自分の今の性格を穏やかだと思っている(これまたロイ談)らしく、そのことを黒歴史と思っているそうな
だから、ちょっとした嫌がらせと思って言ってやったのだが…
「あん、今なんつったんかお前」
地獄の悪鬼を彷彿とさせるかの如きどす黒い声が放たれた。ほんと、そういうところが悪いと思うんだけどなあ。ちょっと待って、ミンディアの魔力が上昇していってるんだけど
「ちょっと待てい。何お前ナチュラルに魔術発動しようとしてんの」
「いっていいことと悪いことがあるでしょう!」
練り上げられた魔力によって髪を逆立てながら、そう叫ぶ。同時に3門もの魔法陣が無詠唱で構成された。ちなみにガランは既にロイたちの方にそーっと逃げていた
「死ぃぃぃぃねぇぇぇぇ」
そして放たれたのは握りこぶし位の火球、風の弾丸、氷のつららだ。その行く先は、もちろん俺だ。予測してはいたので、回避に成功する
ふと見てみると、元の位置には、クレーターが出来上がっていた。あかん、これいかんやつ
「落ち着け、今の完全に俺を殺す気だっただろ」
「う、る、さぁぁぁい」
そして再び構築される魔法陣。もちろんもれなく無詠唱。しかし、それをやすやすと見逃す俺ではない
「≪迸るは雷閃≫」
そう、こんなこともあろうと、いち早く詠唱していたのだ。もちろん傷つかないように手加減はした。さあ、どう出る。これで呪文を失敗すれば、そのすきに懐に潜り込める。避けようとしても同じだ。呪文消去しようとすれば、まあ1,2発被弾するだろうが、取り押さえれるだろう
しかし、現実はどれでもなかった
「フン、≪消去≫」
魔法陣を二つ消すと、無造作に指を振った。それだけで雷閃は、何事もなかったかのように消え去ってしまったのだ
「お前いつの間にそこまで早くできるようになったんだよ」
「...」
返事の代わりと言わんばかりに水球と、一瞬遅れて雷閃が放たれる
この組み合わせはダメだろ、マジで。仕方ない、水球を避けて、雷閃魔力障壁でどうにかしよう
そう考え、魔力障壁を展開して走り出す
「甘い、≪拡散≫」
ミンディアが唱えた追加の式句により、空中で水球が破裂した
やばい、やばい、やばい。もろにくらってしまった。このままだと障壁を突き破ってしまう
どうにか間に合ってくれー
そして雷閃が着弾した。しかし俺は無事だ。どうにかギリギリ障壁を二重耐えきることが出来た。これにはミンディアもびっくりだろう。慌てて再度魔法陣を展開しようとしている
だがもう遅い
今は近距離戦のレンジ、つまり俺の特異な間合いだ
さあ、反撃だ