自滅した愚かな王子①
今回は自滅した愚かな王子の話①です。
「お引き取り下さい」
「フレアに会いに来ただけだ」
「旦那様からランス様を本宅に入れるなと指示されています」
「‥‥‥」
翌日になって、地下牢から解放された。
フレアに会いに本宅に行ったら、執事に門前払いされてしまった。
おそらく夜会での醜態が知られてしまったのだろう。
冷遇どころか厄介者扱いだった。
「酒でも飲むか」
酒場で自棄酒を飲んだ。
しかし悔しさのせいで、少しも酔えなかった。
飲み過ぎて、意識が朦朧としてしまった。
道端で眠ってしまい、目覚めたら朝になっていた。
別宅に戻ったら、見習い執事から蔑むような視線を向けられた。
「カジノでも行くか」
憂さ晴らしにカジノに行った。
しかしポーカーで負け続け、ルーレットでもハズレ続けた。
最後には所持金を使い果たしてしまい、不貞腐れて、別宅に戻った。
「カジノで負けて、所持金を使い果たしましたね。カジノへの出入りを禁止します」
カジノで負けた事が見習い執事にバレて、カジノへの出入りを禁止されてしまった。
何をしても上手くいかない。
ストレスが溜まって、胃が痛くなってきた。
胃潰瘍かもしれないので、治療院で検査をしてもらった。
「胃潰瘍ですね。長期の治療が必要です」
やはり胃潰瘍で、長期の治療が必要だと告げられた。
当然その間は禁酒禁煙しなければならない。
絶望的な気分になってしまった。
「娼館にでも行くか」
娼館で馴染みの娼婦を抱いた。
「娼館に行きましたね。夜間の外出を禁止します。もし破ったら、カジノで負けた事と娼館に行った事をフレアお嬢様と旦那様に報告します」
娼婦を抱きに娼館に行った事も見習い執事にバレて、夜間の外出を禁止されてしまった。
もし破ったら、カジノで負けた事と娼館に行った事をフレアと義父に報告すると言われた。
酒も博打も女も禁止されて、全ての楽しみを奪われてしまった。
「マリア様、お久し振り」
「ライラ様?」
ライラがマリアを訪ねてきた。
「貴女も婚約破棄されたと聞いて、心配していたのよ。しかも再派遣されたって話だから、尚更心配になったのよ。それで我慢出来なくて、会いにきたのよ。でも落ち込んでいると思ったのに、元気そうで安心したわ」
「ライラ様も婚約破棄されたのですか」
ライラ様も婚約破棄されたとは初耳だった。
「そうよ。マリン帝国の馬鹿皇子に婚約破棄されたのよ。噂ではあの馬鹿は皇籍を剥奪されて、離宮に幽閉されたみたい。それだけじゃ無いわよ。セイラ様が激昂されて、マリン帝国を破門したのよ。そして周辺国から国交を断絶されたのよ」
「そうなんですか。私を婚約破棄した愚か者は王籍を剥奪されて、子爵家に婿入りしただけです」
ずいぶん処罰に差があると思った。
ライラ様はセイラ様の御息女だから、差があるのは当たり前か。
「私は偽聖女扱いされたのよ」
「私は真実の愛とかいう戯れ言を聞かされました」
「あの馬鹿は怠け者で、頭が悪いのよ。成績も最下位に近かったのよ」
「あの愚か者は我が儘で、女にだらしなくて、素行も悪かったですよ。
いつの間にか元婚約者の欠点の暴露合戦になっていた。
「カイリ皇子は何の根拠があって、ライラ様を偽聖女と断定したり、アニス嬢を真の聖女と認定したのでしょう」
「確かに何らかの理由がある筈よね。本人達に確認の必要がありそうね。破門の解除を条件に二人の引き渡しを要求しましょう」
マリアの疑問を聞いて、ライラはカイリとアニスに確認すると決めた。
次回は破滅した馬鹿な宰相の話の予定です。