夜会に出席する聖女
今回は夜会に出席する聖女の話です。
王宮での夜会に招待された。
欠席しようとしたが、神官長に出席して欲しいと懇願された。
仕方なく出席したのだが、欠席するべきだった。
会場に入ろうとしたら、子息達に取り囲まれた。
「聖女マリア、私がエスコートします」
「何を言っているんだ。エスコートするのは私だ」
「違う。私だ」
そして私のエスコート役を巡って、言い争いを始めてしまった。
「全員黙れ。聖女マリアをエスコートするのは私だ」
何故か元婚約者のランスが現れて、非常識にもエスコート役を申し出た。
どうしてランスが招待されているのよ。
この馬鹿のエスコートだけは絶対に嫌よ。
「お断りします」
「何だと。王子の誘いを断るとは、不敬だぞ」
「貴方は既に王子ではありません」
「その通りだ」
「子爵家の入婿は引っ込んでいろ」
「恥知らずが」
「本当に見苦しいわね」
周囲の子息や令嬢達がランスを非難した。
「貴様達、うるさいぞ」
ランスが大声で叫んだ。
「何を騒いでいるんだ。彼女をエスコートするのは私だ」
スピア殿下までもエスコート役を申し出た。
子息達は落胆の表情になって、エスコート役を諦めた。
しかしランスは諦めないみたいだ。
この馬鹿よりも腹黒王子の方がマシだ。
「スピア殿下、エスコートをお願い致します」
仕方なく腹黒王子を指名した。
「喜んでお受け致します」
「ふざけるな。弟の癖に引っ込んでいろ」
「子爵家の入婿の癖に不敬だな。貴様こそ引っ込んでいろ」
「何だと」
二人は一触即発の状態になった。
「衛兵、この愚か者を会場から叩き出せ」
「何をする。離せ」
衛兵達がランスを拘束して、会場から連れ出した。
おそらく地下牢に監禁されるだろう。
「私と踊ってくれますか」
「喜んで」
私達はダンスを踊った。
国王と王妃がその様子を笑顔で見守っている。
どうやら国王達の策略に嵌められたみたいだ。
ランスが騒ぎが起こすのを見越して、招待したのだろう。
その後が大変だった。
次々と子息達からダンスに誘われて、踊り疲れてしまった。
「そこまでよ。彼女は踊り疲れていますわ」
アロー王女が子息達から引き離してくれた。
「ありがとう。助かったわ」
「お疲れさま。災難でしたね」
アロー王女から労いの言葉を掛けてもらった。
「美味しい」
ようやく宮廷料理を堪能する事が出来た。
夜会の終了後に国王の執務室に呼び出された。
「見事なダンスだったな」
「二人共、とても息が合っていたわよ」
国王達はどうしても私達を婚約させたいらしい。
「お褒め頂いて、光栄でございます」
一応感謝の言葉を伝えた。
「スピアとの婚約を再考してくれないか」
「それが良いわ」
「スピア殿下との婚約はお断りした筈です」
国王達が戯れ言を吐いたが、速攻で拒否した。
「夜も更けてきたので、そろそろ失礼致します」
早々に退出する事にした。
「アロー王女、国王陛下達にスピア殿下との婚約を諦めるように進言して下さい」
「無理です」
速攻で拒否された。
もう王族に振り回されるのは、我慢出来ない。
これ以上ストレスが溜まると、胃潰瘍になりかねない。
何かしらの手を打たなければならない。
「そうだ。休息日を完全自由にしてもらえば、聖国への帰国が可能よ。神官長と国王に直談判しよう」
「休息日の完全自由化を要求します」
善は急げと神官長に直談判して、強引に許可させた。
後は国王だけだ。
「畜生。こんな事で諦めてたまるか。必ずマリアを私の物にしてやる」
その頃ランスは地下牢の中で、ますます欲望を募らせていた。
「休息日の完全自由化を要求します」
国王の執務室に押しかけて、国王にも直談判した。
最初は渋っていたが、最後には許可した。
これで休息日に見習い聖女達に会える。
彼女達に癒されて、ストレスが解消される。
休息日が待ち遠しい。
次回は自滅する愚かな王子の話①です。