大聖女御息女の婚約破棄
今回は大聖女御息女の婚約破棄の話です。
「私は偽聖女ライラとの婚約を破棄する。そして真の聖女であるトロイ男爵家令嬢アニスを新たな婚約者にする」
マリン帝国第二皇子カイリは皇立魔法学院の卒業パーティーで聖女ライラを偽物呼ばわりして、婚約破棄すると宣言した。
しかもアニスを自分の隣に侍らせて、アニスが真の聖女だと主張した。
「ライラ様を偽聖女と罵るなんて、カイリ殿下は狂われたのか」
「ライラ様はエメル聖国から派遣されている正式な聖女よ」
「しかも大聖女様の御息女よ」
「そのライラ様との婚約を破棄するなんて、正気じゃない」
「エメル聖国が黙っていないぞ」
「それどころじゃない。破門されてしまう」
周囲の子息や令嬢がカイリを非難した
「私を偽聖女呼ばわりして、婚約破棄をすると言われるのですか」
ライラが醒めた視線を向けて、問い詰めた。
「そうだ。貴様は偽聖女だ。アニスこそ真の聖女だ」
「そうです。私が真の聖女です」
「分かりました。婚約破棄を受け入れます」
ライラはあっさりと婚約破棄を受け入れた。
元々カイリとの婚約は外交的なものだった。
カイリは怠け者で、頭が悪く、成績も最下位に近かった。
前々から婚約破棄したいと思っていたが、私からは婚約破棄を言い出せなかったので、この愚行は有り難かった。
「それでは失礼致します」
【転移】
ライラは神殿の自室に転移して、荷物を整理した。
【転移】
そして私物と共にエメル聖国の大神殿に転移した。
「カイリ殿下から偽聖女の汚名を着せられて、婚約破棄を言い渡されました」
大聖女セイラ様に婚約破棄された事を報告した。
「ライラは私の娘であり、正式に認定された聖女です。そのライラに偽聖女の汚名を着せるなんて、絶対に許せません。マリン帝国を破門します」
セイラは激昂して、マリン帝国の破門を決定した。
エメル聖国は世界中全ての人々から崇拝されている女神エメル様を祀る宗教国家だ。
破門されたら、周辺国から国交を断絶されるのは必至だ。
マリン帝国の破滅は確定した。
「この馬鹿者。ライラ様を偽聖女と罵るなんて、何という愚かな事をしたのだ」
カイリは皇帝から激しい叱責を浴びた。
「父上?」
しかしカイリは叱責の理由が分からず、呆然とするだけだった。
「大聖女様を怒らせたら、我が国は破門させられるのだぞ」
「お言葉ですが、その心配いりません。ライラは本当に偽聖女です。絶対に破門にはなりません」
カイリは愚かにも偽聖女だと言い張った。
「大馬鹿者。ライラ様は大聖女様の御息女なんだ。もう良い。暫く地下牢で反省しておれ」
皇帝から反省を言い渡されて、地下牢に監禁されてしまった。
「まさか本当に卒業パーティーで婚約破棄するとはな。余りにも愚かで、想定外だった」
あの平民の愚か者は間違い無く処罰されるだろう。
やっと目障りな奴を排除出来た。
今回の婚約破棄騒動は宰相が仕組んだ事だった。
平民の血が流れているカイリを嫌っていた。
表向きは第二皇子の派閥に属していたが、実は第一皇子の支持者だった。
アニスが膨大な魔力を有しているのは事実だから、真の聖女だと紹介した。
ライラが偽聖女だと嘘を吹き込んだ事は証拠が無いから、問題にはならないだろう。
「カイリ殿下は皇籍剥奪と離宮への幽閉にすべきです。アニス嬢は修道院送りが良いでしょう」
皇帝にカイリとアニスの処罰内容を進言した。
これだけ厳しい処罰にすれば、エメル聖国は矛を納めるだろう。
しかし宰相の考えは甘かった。
絶対に破門まではされないと思っていた。
「お前達の処罰が決まった。お前は皇籍剥奪と離宮への幽閉とする。アニス嬢は北のアバシリ修道院送りだ」
「父上、悪い冗談ですよね」
「黙れ。これは既に決定した事だ」
カイリは離宮に幽閉された
「修道院送りなんて、嫌よ」
アニス嬢はこの国で一番戒律が厳しいとされる、アバシリ修道院送りになった。
数日後エメル聖国からの破門宣告がマリン帝国に通達された。
他国にも通達されて、マリン帝国は周辺国から国交を断絶される事になる。
次回は夜会に出席する聖女の話の予定です。