王族と再会する聖女
今回は王族と再会する聖女の話です。
「国王陛下、王妃様、お久し振りでございます。ご壮健で何よりです」
神殿に転移後、直ちに王宮に赴いて、国王と王妃に謁見した。
「そなたも元気そうだな」
「貴女が戻るのを待っていましたよ」
二人共、機嫌が良さそうだった。
私は機嫌が悪いけどね。
「ランスが婚約破棄などという愚行を犯して、申し訳なかった。改めて第四王子スピアとの婚約をして欲しいのだが、承諾してくれぬか」
「お断りします。婚約の条件は契約から除外された筈です」
速攻で拒否した。
あの腹黒王子との婚約なんて、絶対にお断りよ。
「そこを曲げて、承諾してくれ」
本当にしつこいわね。
鬱陶しいから、少し脅しを掛けよう。
「これは明らかに契約違反です。直ちに帰国します」
「待ってくれ。今の発言は撤回する。無理を言って、悪かった」
国王は焦って、発言の撤回をした。
相変わらず優柔不断な国王だった。
「残念だわ」
王妃が小声で何かを呟いている。
どうやら落胆したみたいだ。
似た者夫婦だと思った。
「聖女マリア、お久し振りです」
「スピア殿下、お久し振りでございます。ご壮健で何よりです」
スピア殿下に謁見したのだが、本当は腹黒王子とは謁見したくなかった。
「ところで私との婚約を拒否されたと聞いたが、再考してもらえないか」
早速婚約についての話になった。
これだから謁見したくなかったのよ。
「お断りします。絶対に王族との婚約はしません」
絶対に婚約しないと宣言した。
「分かった」
流石の腹黒王子も落胆したようだ。
「話は変わるが、兄の処罰の事は聞いたのか」
「聞いていません」
「兄は王籍剥奪されて、ドンク子爵家に婿入りした」
ランス殿下が王籍剥奪されて、婿入りした。
初耳だった。
「私には関係ありません。興味も無いです」
私には関係無いので、適当に返答した。
スピア殿下が私を観察するかのように凝視している。
全身に悪寒が走った。
この腹黒王子は要注意だと、改めて思った。
「聖女マリアが再派遣されただと」
マリアが再派遣されたと聞いて、とても驚いた。
まさか戻って来るとは、思わなかった。
これはヨリを戻すチャンスかもしれない。
ランスが邪悪な笑みを浮かべた。
「よく戻ってくれた。聖女が二人居れば、結界の維持は問題無い」
「「「ありがとうございます」」」
「聖女が二人?二人って、どういう意味ですか」
神官長と神官達に再派遣を感謝されたが、看過出来ない発言があったので、神官長を問い詰めた。
「実は貴女が居ない間に結界を維持出来る者を探したら、アロー王女が膨大な魔力を有している事が判明したのです。そして聖女認定をして、結界の維持をしてもらっています」
どうやらアロー王女が聖女認定されたらしい。
「よく戻ってくれました。一緒に結界を維持しましょう」
アロー王女にも感謝されて、一緒に結界を維持しようと言われた。
私が戻る必要は無かった気がする。
「アロー王女、相談があります。聖女が二人に増えたのですから、休息日も二倍にしてもらいましょう」
「素晴らしい名案です」
アロー王女に休息日を増やす要求をしようと提案したら、彼女も同意してくれた。
神官長や国王に直談判して、十日に一日の休息日を五日に一日の休息日にする事を認めさせた。
代わりにアロー王女の隣室にされてしまった。
どうやら私達を仲良くさせる魂胆らしい。
だけど仲良くなり過ぎても、知らないわよ。
次回は大聖女御令嬢の婚約破棄の話の予定です。