再派遣される聖女
今回は再派遣される聖女の話です。
「真実の愛とかいう愚かな理由で一方的に婚約破棄しておいて、新たな聖女を派遣して欲しいと言うのですか。ずいぶん身勝手な話ですね」
ベルン王国から使者が来訪して、新たな聖女を派遣して欲しいと依頼してきた。
エメル聖国も舐められたものです。
「無理を言っているのは重々承知しております。どうか聖女様を派遣して下さい。お願い致します、出来れば聖女マリア様を再派遣してもらえませんか」
「明日までにマリア本人の意志を確認しておきますので、今日はお引き取り下さい」
鬱陶しいので、出直してくれと追い払った。
「ベルン王国から聖女を派遣して欲しいとの依頼がありました。再び赴く意志はありますか」
セイラ様から聖女の派遣依頼があったと伝えられた。
「お断りします」
速攻で拒否した。
一方的に婚約破棄しておいて、本当に図々しい。
セイラ様には申し訳ないけれど、二度とあんな国に赴くもんですか。
「分かりました。下がってよろしい」
「失礼致します」
謁見室を退出したら、見習い聖女達が居た。
「ベルン王国から使者が来訪したと聞きました」
「どんなお話だったのですか」
「教えて下さい」
「聖女の派遣依頼よ」
聖女の派遣依頼だと答えた。
「一方的に婚約破棄した癖に派遣依頼してくるなんて、絶対に許せません」
「図々しいにも程があります」
「断固として拒否しましょう」
「速攻で拒否したわよ。それよりお茶でもしない」
彼女達をお茶に誘い、楽しく雑談をした。
「マリアは再派遣を拒否しました。ですから見習い聖女を派遣します」
見習い聖女を派遣すると使者に伝えた。
「見習い聖女様ですか」
「ご不満ですか。それなら派遣の話は無かった事にします」
「誤解です。不満はありません。ただ聖女マリア様を再派遣してもらえるのなら、今までの三倍の派遣料をお支払いしても構わないと、指示されています」
「三倍の派遣料ですか。分かりました。再度確認します」
セイラは三倍の派遣料に心が揺れて、再度確認すると約束した。
どうしたらマリアを説得出来るかしら。
マリアが可愛がっている見習い聖女を利用しましょう。
「ミル、フレル、シャベルの三人をベルン王国に派遣します」
「あの三人を派遣するのですか」
ミル、フレル、シャベルは私が特に可愛がっている見習い聖女だ。
女にだらしないランスのいる国になんか派遣させられない。
「三人の代わりに私が赴きます。但し婚約の条件は契約から除外して下さい」
私が赴くけど、婚約の条件は契約から除外してくれと伝えた。
「分かりました。婚約の条件は契約から除外します」
セイラ様の策略に嵌められた気がするが、そんな些細な事はどうでも良い。
「どうして再派遣を受け入れたのですか」
「拒否されたのではないのですか」
「酷いですよ」
「三人共、落ち着いてよ。私が赴かないと、貴女達が派遣されるのよ。あの国には女にだらしない王子が居るの。そんな危険な国に貴女達を行かせられない」
三人に事情を説明した。
「私達の為にすみません」
「我が儘を言って、ごめんなさい」
「寂しいけれど我慢します」
三人は泣きながらも、何とか納得してくれた。
「マリアが再派遣に同意しました」
「ありがとうございます」
「但し婚約の条件は契約から除外してもらいます」
「それは困ります」
「これは決定事項です。反論は認めません」
セイラは使者を睨み付けて、承諾を迫った。
「分かりました」
使者は威圧感に怯えて、承諾した。
「使者は婚約の除外を承諾しました」
「分かりました。直ちにベルン王国に赴きます」
ベルン王国への再派遣にはなったが、取り敢えず厳格な王家教育からは解放された。
【転移】
ベルン王国の神殿に転移した。
次回から王族との再会の話の予定です。