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婚約破棄により自由になった聖女と自滅した愚かな王子  作者: 神無月蓮晃
【第一章マリアとランス】
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婚約破棄

今回は発端となった婚約破棄の話です。

ベルン王国第一王子ランスは王立高等学院の卒業パーティーでドンク子爵令嬢のフレアを侍らせていた。

「また子爵令嬢を侍らせているわよ」

「王族として恥ずかしくないのか」

周囲の令嬢や子息が小声でランスを非難した。

「第一王子ランスの名において宣言する。私は聖女マリアとの婚約を破棄する」

愚かにも聖女マリアとの婚約破棄を宣言した。

「聖女マリアとの婚約破棄ですって」

「ランス殿下は正気なのか」

令嬢や子息が騒ぎだして、蔑む視線を向けた。

「婚約破棄の理由は真実の愛に目覚めたからだ。私はドンク子爵家令嬢フレア嬢を新たな婚約者とする」

ランスは周囲の状況に気が付かず、更に愚かな宣言をした。

「畏まりました。婚約破棄を受け入れます」

マリアはあっさりと婚約破棄を受け入れた。

元々ランスとの婚約は政略的な意味合いが強くて、気乗りしなかった。

我が儘で、女にだらしなく、素行も悪い。

前々から苦々しく思っていたが、私からは婚約破棄を言い出せなかった。

この愚行は正に渡りに船だった。

「それでは失礼します」

【転移】

マリアはパーティー会場から神殿の自室に転移した。


「ランス殿下から婚約破棄されました。これは明らかに契約違反ですので、エメル聖国に帰国します」

神官達に婚約破棄されたので、エメル聖国に帰国すると伝えた。

「聖女マリア、お待ち下さい」

「貴女が居なかったら、結界の維持が出来ません」

ベルン王国は魔物の侵入を防ぐ為に結界が張られていて、維持するには膨大な魔力を持つ聖女の祈りが必要だった。

マリアは結界の維持を懇願されて、エメル聖国からベルン王国に派遣されていたのだ。

婚約も派遣の条件の一つだったのに、一方的に破棄された。

明らかに契約違反だった。

マリアが帰国したら、結界の維持が出来ない。

神官達は必死で制止した。

「ランス殿下がどうにかされるでしょう」

【転移】

神官達の制止を振り切って、私物と共にエメル聖国の大神殿に転移した。


「聖女マリアが婚約破棄に激昂して、エメル聖国に帰国されてしまった」

「何という事だ」

「結界の維持が出来なくなってしまい、魔物が侵入してくる」

「我が国はもう終わりだ」

マリアの帰国が報告されて、王宮はパニックになってしまった。

「直ちにエメル聖国に謝罪の使者を向かわせろ」

謝罪の使者が急いでエメル聖国に向かった。


「この愚か者。何て事をしたのだ」

ランスは国王から激しい叱責を浴びた。

「父上?」

しかしランスは叱責の意味が分からず、呆然とするだけだった。

「聖女マリアが居なくなったら、結界の維持が出来なくなるのだぞ」

「お言葉ですが、結界など存在しません」

ランスは愚かにも結界の存在を否定した。

結界によって魔物の侵入を防いでいる事を疑っているのだ。

「お前がそこまで愚かだったとは思わなかった。もう良い。暫く謹慎しておれ」

遂に国王から謹慎を言い渡されてしまった。


「セイラ様、申し訳ございません。私は婚約破棄をされてしまいました」

大聖女セイラ様に謝罪と帰国の理由を報告した。

「婚約破棄の理由を説明しなさい」

「ランス殿下が真実の愛に目覚めたそうです」

セイラ様に婚約破棄の理由を説明した。

「‥‥‥‥」

セイラが余りの馬鹿馬鹿しさに呆然となってしまった。

「分かりました。下がってよろしい」

「失礼致します」

謁見室を退出して、自室に戻った。


「お帰りなさい」

「お久し振りです」

「お逢いしたかったです」

「皆、久し振りね。元気だった」

見習い聖女の少女達が部屋を訪ねて来て、ようやく落ち込んでいた気分が軽くなった。

厳格な王家教育から解放されて、自由になったのだと実感した。

次回は婚約破棄の後始末の話の予定です。

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