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「あの、殿下」
「なんだ?」
「監視とはそんなに常に見張っているものなのですか?」
確かに一年前にも同じ講義を受けているのだから、殿下はきちんと聞かなくても覚えているはずだ。だけど講義中もじっと見られていたら気にならないわけがない。
エミリアはアレンの視線が気になってしょうがなかった。
「そんなものだ」
「え」
「そなたをきちんと見れば、魅力がわかるのであろう?」
「うっ」
その言葉は以前フェリシアが放った言葉だった。
「あまり見すぎては不躾になってしまうのでな、よければ礼儀作法もエミリアに学ぶと良い、彼女は優秀だからな」
とアレンは返したいたはずだが、今はどうだろう。
これは不躾の範囲にはならないの?監視ってこんなにみられるものなの??
好きな人にずっと見つめられる状況に嬉しくもあり、恥ずかしくもありエミリアは混乱していた。
「聖女様、大丈夫ですか?」
「ありがとうサラ、大丈夫…だと思うわ」
「具合が悪いのか?部屋まで送るぞ?」
「結構です!殿下、おふざけが過ぎますわ、口元を見れば分かりますのよ!」
「バレていたか」
「当たり前です!」
「あらあら、いつの間にそんなに仲良しになったんですの?」
「!!」
いつの間にかフェリシアが教室に戻り、近くに来ていた。
「戻ったか」
「レン様、いくら監視とはいえ距離が近すぎるのでは?」
先程の取り乱した姿と違い、淡々とした口調でフェリシアは応えた。いつものエミリアを真似していたのだ。
「しっかりと見ておかねば何をするかわからないからな」
「ですが殿下自らがなさらなくても」
「これは王命だからな」
アレンは少し大きな声で周りに聞こえるように話した。これで下手に監視について何か言うものがいなくなるだろうと思ったのだ。
「王命ですか?」
「自分の婚約者ぐらい自分で守れだそうだ」
「レン様…」
「君を守るためだ、分かってくれるな?」
フェリシアは顔を赤くし、うっとりとアレンを見つめた。
「分かりましたわ……聖女様、勘違いをなさらないでくださいね
それに先日の件、父から何も問われなかったことに感謝を」
「………はい、寛大な対処に感謝いたします」
フェリシアはにっこりと笑った。
「レン様、私も側にいてよろしいですか?守っていただくならお側にいたほうがよいかと」
「それはやめたほうが良いですわ、彼女はエミリア様を突き飛ばしたお方ですもの」
声をかけたのはエミリアと仲が良いカリーナだった
「殿下、お話の途中で申し訳ありません」
「いや、構わん、続けてくれ」
「エミリア様が近くにいるよりも離れていたほうが安全かと、もちろん私が側におります」
「そうだな、カリーナ嬢の意見に賛同だ。防御に長けた土魔法を得意としてるし、なによりカリーナ嬢の周りで何かあればあやつが来るか」
「はい、なのでエミリア様、離れたところに座りましょう」
「あ、え、ちょっと!」
「君の安全を考えた結果だ、カリーナ嬢が側にいれば大丈夫であろう、よろしく頼む」
「お任せを」
間髪いれず会話が進み、結論までが早かった。
「いきましょうエミリア様」
「分かりました…レン様!私との時間もとってくださいね!」
「ああ、善処しよう」
「嬉しいですわ!それでは失礼いたします」
こちらをチラッとみたフェリシアはカリーナに誘導され離れた席に座った。
ちなみに講義は自由席となっており、今は一番後ろの窓際の席にサラ、エミリア、アレンの順で座っていた。
「殿下、お父……カスターニャ公爵様は何も罪を問わなかったのですね」
「ああ、君の謹慎中に決まったことだ」
「そうですか」
「止めるのが大変だったがな………」
「殿下が止めてくださったのですか?」
「私が守ると言ってなんとか踏みとどまってもらった」
「それはその…ありがとうございます」
「私は……いや、きちんと守る、それだけは覚えておいてくれ」
「はい…」
自分のことではないと分かっているのに、アレンの熱く、何かを乞うような視線からエミリアは目が離せなかった。
「殿「アレーーーーーーーーン!!!!!!!!」っ?!」