7 (アレン視点)
入れ替わったときに遡ります
エミリアを寮まで届けたあとアレンは考えていた。
何かおかしい……
いつものエミリアならば、あんなに取り乱したり、体を預けてくることもない。それにバロッカス嬢のカーテシー、あれはまるで……
綺麗な姿で挨拶をするいつものエミリアを浮かべた。
一度王宮へ戻るとするか
そう考えるやいなや、さっそく学園に許可を取り、すぐに王宮へと戻った。
国王への挨拶もそこそこに、ある場所へと向かった。
「皇太子殿下!いつこちらへお戻りに」
「ついさっきだ、…聞きたいのだが、ここへ入った者は最近いるか?」
辿り着いたのは王宮にある図書室だった。奥にある部屋、そこに用があった。
「いえ、最近は………」
「私に嘘をついたらどうなるか分かって応えているのか?」
「し、失礼いたしましたっ!最近ですと聖女様がこちらに…」
「王家の者以外をいれたというのか?」
「陛下がご病気かもしれないと聖女様が聞いたそうで…知識を得るためにと………」
「はぁ……それは事実なのか?確認もせずに通したということはないだろうな?」
「っ…………」
「……次はないと思え」
「はいっ…!ありがとうございます!!」
「今から中にはいる、私がでるまでここに誰もいれるでない」
「はっ!」
中に入ると薄暗く、嫌な空気が漂っていた。禁術の魔法を調べるためここへ来たが果たして答えは合っているのか……と考えているとどこからか声がした。
「なんだ?最近やけに人がくるな」
「!?」
「この前の奴じゃないな……この感じ王族か?」
「貴様は誰だっ!」
「おいおい、名乗るなら先に言うのが筋じゃないのか?ひとまずこの本開いてくれ」
ぱぁーと一冊の本が赤く光だした。怪しく思ったが何か手がかりになればと思い本を手に取った。本を開くと中から黒い服の少年が現れた。
「金髪に碧眼、まさしく王族だな、若いから王子さまってとこか?」
「悪魔……か?」
「お、流石に存在は知ってるか」
「本当にいるとは…なぜでてきた?」
「んー?なんか憎しみの感情が感じられたから?」
いくら表面を取り繕っても内面を読まれているなら隠しても仕方ない。
「ああ……私の考えが事実ならばな」
「あー?もしかして入れ替わったのがお前の大事な奴だったとか??」
「やはりか、契約したのか?」
「まぁな、水色の髪に金色の瞳…聖女ってやつだろ?名前は知らないけどそいつとな」
怒りがふつふつと沸いてきた。自分への態度はまだ許せるが、エミリアに対しては絶対に許さない。あの時確信を持って、本当のエミリアに手を差し伸べていれば……まさか本当に禁術を使っているとは流石に思わなかった。
「お前なら元に戻せるのか?」
「俺様はベルフェ!お前じゃない」
「名前まであるのか」
「当たり前だろ?ちなみに俺じゃあ元に戻せない。入れ替わりの術は使用者が使わないと」
「なら無理矢理にでも」
「出来るのか?仮にも大事なやつの身体なんだろ?」
「ぐっ…」
「…名前教えてくれるなら協力してやってもいいぜ?」
「私か?」
「違う違う、王子さまじゃなくて聖女ってやつのだよ」
「ああ、名前を知らなかったんだったな……どうやって契約を?」
「え、なに、皆名前で契約するって知ってんの?まぁ名前じゃなくても出来るんだよね。魂でさ」
「魂……?」
「そう、魂と契約するとより強力な力を得られる、代償も魂だけどね」
「はっ、悪魔に魂を売ったのか」
「まぁーそういうこと!本人は気付いてないけどね。偽名使ってるし、俺のこと騙せたと思ってるんじゃない?」
目の前の悪魔は愉快そうに笑っている。つまり術が解かれたときバロッカス嬢の魂は悪魔のモノになるということ、それを本人は知らないということか。偽名を使っているとベルフェが知っていると知らずに…。
「可哀想になっちゃった?」
「いや、私にはエミリアがいればいいからな」
「ふーお熱いねー」
「彼女の名前はフェリシア・バロッカス。それで、私は何をすればいい」
「簡単だろ?フェリシアはあんたがエミリアってやつを好きだから入れ替わったんだ」
「ああ…ちなみに私の名前はアレンだ」
「え、なに、王子さまも俺と契約しちゃう?」
「違う、名乗られたら名乗るのが筋だろ?」
「はは!あんた……アレンは面白いな」
「ベルフェには負ける。つまり今度は逆をやれと?」
「そう、フェリシアの姿をしたエミリアに惚れたことにすればいい。そしたらきっとまた術を使うはずだ、自分には術の跳ね返りが来ないと思ってるしな。エミリアには協力してもらうのか?」
「いや、エミリアに危険な真似はさせたくない。それにバロッカス嬢が他にも術を使ってくるかもしれないからな、私もエミリアも気付いていなということにした方がいいだろう」
「下手なことはするなってことか…いいのか?エミリアからしたらアレンが他の女に惚れたって思うんだぞ?嫉妬するだろ」
「嫉妬か……エミリアが私のことを慕ってくれていたならばな」
「違うのか?」
「いや、慕ってくれてはいると思うんだが距離感がな」
「アレンは気持ちをちゃんと伝えてるのかよ?」
「………」
「そりゃだめだな。黙ってて伝わるなんて思うなよ?そんなんじゃ愛想尽かされるに決まってる」
「悪魔のくせに何を言って……」
「悪魔だから人間のいざこざが分かるんだよ。なんなら俺様が恋愛についてアドバイスしてもいいんだぜ!」
悪魔に教えを乞うとは……しかしエミリアに愛想は尽かされたくない。心は決まっていた。
「………その分でエミリアを呼び捨てにしたことをなかったことにしてやろう」
「いや、心狭くね?!」
こうして、協力者および師匠がアレンにできたのだった。