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「はぁ……最高だわ」
男子は女子寮に入れないため、入り口でアレンと別れ、エミリアの部屋のベッドに寝転がったフェリシアは先ほどまでのことを思い出した。
「こんなに上手くいくなんて…あの悪魔には感謝しないとね」
エミリアとフェリシアが入れ替わる前、フェリシアは王宮にある図書室へと向かっていた。
あの女が悪いのよ、ヒロインの私に誰も振り向かないなんて!!
そんなことを思いながらもズガズガと目的地へと進む。図書室へはいり、奥にある禁書庫にむかおうとした。
「お待ち下さい聖女様、この先は王族以外立ち入り禁止となっています」
「お願い、どうしても行かないといけないの!実は陛下がもしかしたら病があるかもと先ほど聞いてしまって……陛下に関わる事だったらすぐに治せるよう知識を得たいんです!」
「し、しかし……」
「お願いします……ダメ……ですか?」
うるうるとした瞳で衛兵を見上げる。
見た目は可憐な少女だ、衛兵はドキッとしてしまった。
「わ、わかりました!何かあれば呼んでください」
「ありがとうございます!あ、この事は内緒でお願いします。陛下のことなのできっと内密の方が良いかと」
フェリシアは中に入り、扉をゆっくりと閉めた。
「さて……あれはどこにあるかな」
キョロキョロと何か探し始めた。
すると何処からか声が聞こえてきた。
「うえっ、嫌なにおいがする……でも中味は美味そうだなぁ、あんた何者だ?」
「きゃ!びっくりした……みーつけた」
ある一冊の本を開くと、黒い羽をはやし全身までも黒服でおおわれた少年があらわれた。
「なんだ?そんな驚いてないな?」
「あなた悪魔でしょ?」
「あれ、俺のこと知ってんの?」
「たしかベルフェだったかな?ねー私と契約してよ」
ニコッとフェリシアは悪魔に微笑んだ。ゲームの世界でのエミリアが悪魔を使役していたのを思い出したのだ。
「お前契約がどんなんだか知ってんのか?」
「もちろん」
「ふーん……じゃあ名前教えてよ」
「………サラよ」
悪魔との契約には名前を用いる。これはゲームをやっていたので知っていることだ。もちろん呪いが解かれてしまったら名前の主に返るということも知っていた。
エミリアでも良かったが公爵家の令嬢だ。呪いを調べられフェリシアが原因であるとバレたら罰せられると思ったため別の名にしたのだ。
「ほんとに?」
「ほんとよ!」
「ふーん……」
「疑うの?」
「いや…もしその名前が違ったら、その名前の子が死んじゃうって言っても本当って言えるのかなって」
「…当たり前じゃない、本名だもの」
「まぁいっか、手を前に出してみな」
「…はい」
「ほいじゃいくぞ?」
ベルフェはフェリシアの手に自分の手を合わせた。
「悪魔ベルフェの名において、この者の魂と契約を結ぶ」
辺りがどす黒い靄に覆われたと思ったがそれも一瞬のことだった。
「ほい、終了~」
「今のでほんとに契約できたの?」
「もちろーん!指輪ついてるだろ?それ一回魔力使う事に消えちゃうから、使ったって証拠が消えた方がいいだろ?」
「…悪魔なのに良心的ね」
「俺優しいもーん!力使うんだったらまた俺のとこにこなきゃだけどね。本持ってていってくれたらすぐだよ」
「それは無理よ。証拠持っているようなものだし嫌」
「ちぇー、んじゃまた来てくれよな」
「もう来ることなんてないと思うわ」
「それはどうかな……」
最期の言葉はフェリシアがすぐに部屋からでたため、本人には聞こえていなかった。
「あんたは失敗するよ、あぁ……魂を食べるのが楽しみだ」
フェリシアは悪魔の力を使ったのだった。