4 (エミリア視点)
薄れた意識が覚醒していく。突き飛ばされて倒れたはずが、身体がどこも痛くなかった。
おかしいな…
「……え?」
突き出された手。いつもの自分の腕ではない。更には目の前に自分が倒れているではないか。
「な、なにが……声がっ!」
「あはははははは!!」
目の前に倒れた自分が高笑いしている。
「やった……成功したわ!」
「あなたもしかして……」
「私はフェリシアよ!エミリア、私とあなたは入れ替わったのよ」
口角を上げてニヤッと笑う。これぞ悪役令嬢では?
いや、そんなことよりも……
「なにをふざけたことを…!早く元に戻しなさい!」
「せっかく入れ替わったのに戻るわけないでしょ?はぁ……これで私がレン様の婚約者……」
「レン様って……あなた何回呼び方を注意をすれば……」
「今はそんなことどうでもいいんじゃない?私がエミリアなんだから」
「っ………殿下に報告するわ」
「あー無駄無駄。だって入れ替わりのことは伝えれなくしてるもの」
「嘘………」
「ほんとはね、あなたのこと殺そうと思ったのよ?でも同じ転生者として可哀想だなって。私優しいからさ?」
「何を言ってるの……」
「ふふふ。でもあなたの気持ちを軽くするために罰を与えようかなって。だって申し訳ないでしょ?ヒロインの私を差し置いて幸せになってるなんて」
もはやこの女が何を言ってるのか理解が出来ない。
「だからね?私とレン様が幸せになる姿を見てて?私がレン様の隣にいるのが相応しいってちゃんとわかるはずだから」
「っ………」
喉がひゅっとなり、声がでない。
私じゃない私が幸せになる姿?
アレン殿下の隣にいるのは私ではない?
「あはははは!いいわ、いいわよその顔!レン様のこと本当に好きだったのね!そりゃそうよね、ゲームのエミリアもレン様に物凄く執着してたのもの」
「……あなたみたいな人を悪役令嬢っていうでしょうね」
「はぁ?負け惜しみってやつ?みじめねぇ…」
「返して……私の居場所を………
私からアレンをとらないで!!!」
感情が溢れ、ずっと呼びたかった名を叫んだ。
「……何をしている」
「!!」
背後からアレン殿下の声がした。
いつもの癖で直ぐにカーテシーをとってしまったが、先ほど会ったばっかりだった。
「エミリアが危ないと聞いたが……これはいったいどうゆうことだ?」
「殿下、これは…っ!!」
話そうと思ったが声がでない。心臓のあたりが苦しい……
はくはくする私を見て、殿下はますます眉間に皺を寄せた。
「レン様ぁぁ~!」
甘ったるい声をだした自分の姿が横を過ぎる。そして殿下の胸元に飛び込んだのだ。
「ぐすっ、私怖かったですわ、フェリシアさんがいきなり突き飛ばしてきましたの」
「ちがっ!」
「本当なのか、バロッカス嬢」
否定をし、弁解しようとしたが殿下の鋭い眼光に身体が固まってしまった。
こんな冷たい表情みたことなかった……
「殿下、これには理由が」
やっとの思いで口にしようとしたが、先ほどと同じく心臓がぎゅっと掴まれたように痛い。苦しい、でも言わなきゃ……言ったところで理解されるのかしら?
「…後日沙汰を下す。バロッカス嬢は自室にて謹慎を命ずる」
「そんなっ」
「いくぞエミリア」
「はい!」
殿下の腕にぎゅっと抱きついたフェリシアは、そのまま立ち去った。
二人の姿が遠退いていく。追いかけなきゃと思いながらも身体は全く動かなかった。
追いかけたところでどうなるの?
またあの冷たい目を向けられてしまうの?
エミリアは絶望のまましばらく立ち尽くしていたのだ……




