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話が遡ります。
女神フェルテシナ。
火・水・地・雷の四種の精霊を生み、国に繁栄をもたらした。その国こそが私たちが暮らしているフォルス王国だ。
精霊の力は大半は貴族となるが、平民にも受け継がれている。受け継がれたものは魔法が使えるようになる。
そういった者たちを集めた学園が王立フォルス学園だ。15歳を堺に魔力の量が急激に上がるため、魔力が暴走しないよう魔力操作を学ぶ。国の繁栄に繋がるため、講義は無償で受けられる。寮もあるので、すぐに学園にも行ける。
アレン殿下は17歳、エミリアは16歳、アレン殿下は今年卒業予定だ。
新しい学年が始まってたから一ヶ月。二人は中庭を神妙な顔つきで歩いていた。
「殿下……あの方はいったいどうゆうつもりなのですか?」
「はぁ……私に聞かれてもわからぬ」
二人が話しているのは編入してきた聖女についてだ。聖女とは女神フェルテシナの加護を多く受け継ぎ、光魔法が使える者をさす。
教会の孤児院にいたフェリシアと言う少女が、傷付いた者を癒す光魔法を使ったと報告があった。
瞳の色が聖女の証である金色に輝き、光魔法を扱う。国王陛下、教会により聖女と認定され、彼女はフェルテシナの夫とされるバロッカスの姓を受けた。勢力争いのことを考え、身請けは教会が、護衛は王宮がすることとなった。
学園においては王太子であるアレン殿下と、年が同じで婚約者でもあるエミリアが聖女を気にかかるようにと王命が下された。
「王命ですものね…」
「王命だな…」
このように悩んでいるのはフェリシアの行動が原因だった。
編入初日、聖女との顔合わせのため学長室へと呼ばれた。もちろん二人揃ってだ。
扉を軽くノックし、許可を得て入室する。
「し「きゃーーー!本物のレン様だぁぁぁぁ!!」っ!?」
声をかけるより先に女の人の声が響き渡った。
アレンの透き通るような青い瞳が大きく開かれが、すぐにいつもの表情に戻った。
「んんっ、バロッカス殿」
学長が咳払いをする。普通であれば許可なく愛称で呼び、先に声をかけることはしない。不敬罪を問われるためだ。学長を焦ったが、アレンが首を軽く振り微笑んだため、ほっとした様子をみせた。
「ヤバいなにその微笑み、かっこいいんだけどぉ」
「はは、ありがとう。君が聖女であるフェリシア・バロッカス嬢だね、私はこの国の王太子であるアレン・フォルクス、そして隣にいるのが「レン様!是非フェリシアと呼んでください!」……」
殿下の話をさえぎるとは…彼女には礼儀や作法から学んだ方が良いのではないか、と口を出しそうになったがアレンが何も言わないため、エミリアもにこにこと笑顔を張り付けた。
「隣にいる婚約者のため、名前呼びは控えよう。彼女はエミリア・カスターニャ公爵令嬢だ。君とは同い年であるから、わからないことがあれば彼女を頼ってほしい」
「エミリア・カスターニャですわ。気軽にエミリアとお呼びください」
フェリシアはちらっとこっちを見て、あー宜しく…と言うとまたすぐアレンへ熱を帯びた視線を戻した。
学長室を退出し、学園を案内することになった。
フェリシアはアレンの腕に自分腕を絡めたまま歩いた。レン様、レン様と呼ぶフェリシアに対し、アレンもじゃっかんだが苛立っているのをエミリアは感じた。しかし聖女を無下に扱うことは出来ず、笑顔で乗り切っているようだ。
エミリアも気軽に愛称を呼ぶフェリシアに対し、モヤモヤとした気持ちを抱えてしまった。
翌日からも、ことあるごとに殿下の前に現れては話しかけ、腕を組んだりしている。それとなく注意をすれば
「エミリア様ひどい!私はレン様が頼りなのに!」
と泣き喚くため半ば呆れていた。
周りもうわぁ~……という反応なので、いくら聖女でもこのままではいけないだろうと、二人で悩んでいる状況だ。
「昨日も転んだのを私のせいにされたのですが……」
「君がそういったことをしないのは知っている」
「ありがとうございます」
ほっとし、エミリアはアレンにむかって微笑んだ。
「………では、また明日」
「はい」
男子寮と女子寮は左右の端と端に建てられているため、アレンとはここで別れる。
エミリアも女子寮へ向かおうとしたが、後ろから声をかけられた。
「あなた転生者でしょ」
なるべく早めに完結させる予定です。