13
「アレン様………なぜここに……」
「すまない、君を守ると言ったのに」
アレンは力が抜け座り込んでいるエミリアに合わせるようにしゃがみ、頬に手を添えた。
「怪我はないか?」
「はいっ、サラが守ってくれました」
「よかった……サラ嬢、感謝する」
「い、いえ!」
「して?この状況は一体どういうことか説明してもらえるな?」
「ひぃっ」
アレンが再び令嬢たちに向き合い説明を求めた。エミリアには後ろ姿しかみえなかったが令嬢たちの青ざめた顔や、アレンの纏う空気から怒っていることは分かった。
「わ、私は何もっ!」
「ほぉ?それはまことか?虚偽だった場合私を欺いたことになるがわかっているな?」
「あ、あ…………」
「何かにぶつかる音が聞こえたがあれは土の壁に火球がぶつかる音とよく似ている、私もよく訓練でやっているからな
私が火の魔法を得意としていることは知っているであろう?あの音はなかなかの火球の強さだったろうな………人にむけてはいけないような」
「も、申し訳…っ……申し訳ありませんっ」
「そなたの判断か?」
「……エミリア様にっ」
「ちょっと!!」
「他の者は黙っていてもらおうか?」
アレンは先程よりも冷え冷えとした空気を纏っているようにみえた。
「私の婚約者の名前が聞こえたようだが……気のせいか?」
「それはっ」
「エミリア様から牽制するように言われたのです」
「どういうことだ、カリーナ嬢」
「殿下の周りで勘違いしてるものがいるからどうにかならないかと」
「なるほどな、して火球を投げつけたと…………カリーナ嬢、そなたはなぜここにいる?」
「……………」
「そなたの魔法はなんのためにある?」
「アレン様!」
今にも罰しそうな勢いだったところをエミリアが止めに入った。
「なんだ?」
「その、クロッカス様は私を守ろうとしてくださいました!」
「えっ」
カリーナは驚いた顔をした。
「そちらの令嬢に声をかけ、魔法を展開しようとなさってました」
「……その魔法が攻撃でなかったと言えるのか?」
「………クロッカス様はそんなことなさいません、私にはわかります」
「君はそんなにもカリーナ嬢と親しかったか?」
「あ!えっと、その……!授業は一緒ですし、よくみかけていますし??クロッカス様は優しい方なのでそんなことはしないかと!」
しまった、エミリアじゃなかった!!とエミリアはわたわたしながら説明をした。大事な友達なのだ、誰よりもカリーナを信頼はしていたし、そんなことで彼女を咎められてほしくなかった。
「はぁ………だそうだカリーナ嬢」
「………ありがとうございます」
「い、いえ!差し出がましことを言って申し訳ありませんでした」
「他のものだが」
「アレン様!それも私が軽率な行動をしていたせいで、エミリア様を不安にさせたのだと思います!なのでエミリア様のことを思って行動した彼女たちに罪はないかと!」
「君に火球を投げてきたのだぞ?!それでも罪がないと!??」
「そ、それは、ほら、当たってませんし?サラが守ってくれましたし?」
「「「聖女様………」」」
彼女たちもいわば被害者ではないとエミリアは思っていた。慕っているものが憂病んでいるのだ、なんとかしようと思って行動するのは全てが悪いことではないと。
「アレン様が納得されないようでしたら孤児院でのお手伝いなどどうでしょう?令嬢には大変なことかと思いますし、様々な者に手を差し伸べるのは貴族として模範にもなってきます、それを彼女たちに学んでいただいてもいいかと」
「………罰らしくない罰だが君がそこまで言うならいいだろう、後に詳細を伝える、今日は皆謹慎を言い渡す」
頭を垂れるように令嬢たちは下がっていった。
「カリーナ嬢、後で話があるの」
「かしこまりました」
カリーナもその場をあとにした。
「殿下、あの」
「ああ、別に咎めたりしないから安心しろ、それよりも呼び方が戻ってる」
「やはり軽率な行動がこの自体を招いたので……」
「君は何も悪くない、それに名前を呼んでもらえなくなったら私は拗ねるぞ」
「はい!?」
「拗ねて全てのことに手がつかなくなるかもしれないな、そうなれば君のせいだな」
「そ、それは理不尽すぎでは!?」
「名前で呼んでくれないのか?」
「うっ………」
碧眼の瞳でみつめられ、エミリアは必死に考えた。考えたがいい案などでてこない。
最近の殿下は意地悪だわ!!
エミリアはアレンが半分ふざけていっているのは分かっていた。不貞腐れるようで、少し意地悪な顔はいつものアレンと違って、またエミリアをときめかせるには十分だった。
ずっと見つめられ、顔に熱がこもってきてるのはすぐに分かった。
「………アレン様」
「アレン」
「そこは譲りません!」
アレン と呼ぶのは自分の体を取り戻してからがいい。そこだけは何故だか譲れなかった。
「そなたは本当に可愛いな」
「へ?!」
アレンに可愛いと言われドキドキしてしまった。たまには言われていたがそんな感情のこもった言葉で言われてしまうと顔を真っ赤にさせるなという方が無理だ。
か、かわいい?!で、でもエミリア!今はエミリアではのよ!さっきも同じ間違いをしたでしょ!
しょんぼりしてしまうのは確かだったが、可愛いという言葉に素直に喜んでしまっている自分の方が上だった。
「サラ嬢、守ってくれて本当に感謝する」
「は!そ、そうよ!サラ!本当にありがとう!あなたが居なければ私は」
「気になさらないでください、あなたに助けていただいた命、守れるのだったらなんでもします」
「それは大袈裟なような…サラ?怪我をしたの?」
よく見るとサラの顔には傷があった。
「ちょっと衝撃で飛んできた石に…けど大したことはないので大丈夫ですよ」
それよりも聖女様を守れて本当に良かったです!と喜ぶサラを見てチクチクと罪悪感が増した。
私はあなたを助けた本物の聖女ではない、性格はどうあれサラを助けのはフェリシアだ。それに
「ごめんなさい、魔法が使えれば……」
「あ、そのことなのですが!」
「?」
「先程お話しようかと思ってたことで、聖女様、一度教会へ行ってみてはいかがでしょうか?」
「教会へ?」
「お祈りをするように司祭様から言われてましたし、もしかしたら女神様がなにか助けてくれるかもしれません!」
「それは……」
「いいのではないか?」
「アレン様」
「最近悩んでいただろう?治らずとも何かきっかけはあるかもしれない」
「それはそうかもしれないですが…」
「なにか理由があるのか?」
「………いえ」
「なら行きましょう!司祭様も待ってますし!実は聖女様が祈りに来るようにと急かされてまして……」
「……サラ、私はどれだけ行ってなかったかしら?」
「学園に入園されてからは全くだったと……」
国の繁栄のため、聖女は祈りを捧げる、これは誰もが知っていることであった。
「行きましょう!」
「では明日は休みだし、明日いくことにしよう」
「そうですね………ってアレン様も御一緒にですか?」
「監視役だしな」
たしかに休日でも出かけようとすればアレンも一緒に行動していた。どれだけ信用ないんだー!と思っていたところだった。
「では明日も宜しくお願い致します」
「ああ、次こそは守るから安心しろ」
「…………宜しくお願い致します」
「聖女様!私も頑張ります!」
「ふふ、ありがとう」
頼もしすぎる二人であった。
ブックマークに記録しますか?
▶はい
▷いいえ
記録してくださっている方本当にありがとうございます!最近知りました、すみません(´ . . `)