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「聖女様、大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうサラ」
教室をでたエミリアは、サラに連れられ医務室に向かっていた。
「たいしたことはないのだけれど」
「だめです!しっかり休んでいただかないと……」
「ふふ、サラは心配性ね」
「………魔法の方は最近いかがですか?」
「魔法ね………」
魔法をコントロールするための学園なので、もちろん魔法を使った授業がある。
しかしエミリアは魔力は感じるが魔法が使えなくなってしまっていた。専門医からは原因不明と言われている。
「ごめんなさい、すぐに治療が行えないわね」
「謝ることではないです!きっとまた使えるようになりますよ」
「そうね………」
「聖女様、もしよろしければ」
サラが言いかけたところで後ろから声をかけられた。
「お待ちなさい」
「カリーナ…」
振り返ると親友であるカリーナが他の令嬢を連れて立っていた。
「あなた!カリーナ様に対して失礼よ!」
「呼び捨てにするなんてありえないわ!謝りなさい!」
「っ……申し訳ありません」
「……バロッカス様に話があるの、ついてきてくださる?」
「わかりました」
「ま、待ってください!聖女様は体調が悪いのであとにしていただけないでしょうか」
「なーにあなた?平民が口を挟むなんて何考えてるのかしら?」
「ええほんとに、教育が必要かしら?」
他の令嬢たちは高圧的な態度をとっていた。サラに対しては今にも何かしそうな感じがし、エミリアは彼女を隠すように前に出た。
「失礼いたしました、私は大丈夫ですのでお話をお聞きいたします」
「聖女様!」
「サラ大丈夫よ」
「心配でしたらあなたもついてきていただいても構いませんわ、さあ、こちらへ」
カリーナたちに付いていくと、人気の少ない東屋に着いた。
「最近の噂をご存知かしら?」
「はい」
「どうお考えで?」
「………エミリア様には申し訳ないと思っております」
「そう思うなら殿下から離れなさいよ!」
「そうよそうよ!噂のせいでエミリア様がどれだけ気落ちしてると思っているの!」
「ですがアレン様には王命だと」
「アレン様?!生意気に名前でお呼びするなんて!!」
「王命っていうのも嘘なんじゃないの?」
「そうかもしれないわね、殿下と一緒にいたいために嘘までおっしゃるなんて!」
「殿下も可哀想!きっとこの平民に騙されているのだわ!」
「…………」
取り巻きが騒いでいるが、先程からカリーナは黙ったままだった。
「………殿下がおっしゃったことを嘘だと言うのですか?」
「は?」
「先程の発言は殿下に対して失礼だと思わないのですか?」
「あなた先程から何を」
「殿下は皆の前で公言されました、それを嘘だとおっしゃるのですか?」
教室でも発言していたが、アレンは全生徒に聖女の監視役を任命されたこと、それに伴い下級生の授業をともに受けるが気にせず勉学に励むこと、目にとまったものは城のものに報告する等しっかりと通達をしていた。
「そ、それは!きっと貴女に唆されたに決まってますわ!」
「エミリア様に対して失礼な態度をとっていましたもの!信用なんてできませんわ!」
「ベタベタと殿下に付き纏っていらっしゃいましたし、もしかして身体を使ったのでは?」
「きっとそうよ!何か魔法を使ったかもしれないわ!」
「そのせいで殿下も正常に判断できなくなっているのでは?」
「いい加減になさい!!」
「「「っ!!!」」」
エミリアの一括に令嬢たちは驚き固まった。
「私のことはいくらおっしゃっても構いません、ですが殿下に対するその発言はいったいなんなのですか!」
「……」
カリーナはじっとエミリアを見つめていた。
「殿下を嘘つき呼ばわりした挙げ句、女に騙された??そのような方にみえますか?王族なのですよ?魔法耐性もついているに決まっているでしょう?もちろん魔法など使っていませんが!殿下に対して侮辱をするような発言をされたのに気づいてまして??」
「っ…………」
令嬢たちは血の気がさっと引いた。王族に対しての発言で失言があれば侮辱罪も適用される。まず社交界では弾きものにされるだろう。
聖女を攻撃するのに必死だった令嬢たちは、自分たちの発言がアレンを侮辱しているようなものだと今気付いたのだった。
「アレン様はそのような方でないわ、この国を継ぐ素晴らしき王太子よ!発言を謝罪しなさい!」
「なんで………」
「?」
「なんで貴女にそんなこと言われなきゃならないのよ!!!」
一人の令嬢がエミリアに火球を見せつけた。
「あなた何を」
「今魔法使えないのでしょう?当たったらきっと痛いでしょうね?ね?貴女が何も言わなければ済むわ」
「………アレン様に対する発言は許せません」
「貴女!!!さっきから!生意気なのよ!!!!!」
「およしなさい!!!!」
カリーナが叫んだが既に火球はエミリアに向かって飛んでいた。
「っ!!!」
カリーナは慌てて土の壁を作ろうとした。が、それよりも早く土の壁がエミリアを守っていた。
「聖女様!大丈夫ですか?!」
サラが発動させた魔法だった。
「サラ!ありがとう」
「無事で何よりです!…これが貴族のやりかたですか?!」
「な、なによ!平民のくせに!!」
令嬢が手を振りかざしたときだった。
「なにをしている!!」
アレンの登場に皆が驚きを隠せなかった。早足にエミリアとサラの前を守るように立ち塞がった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
20話以内には納める予定です。