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早めに終わらせようと思うのに話が膨らんでいく………
脱線してるかもです。すみません。
大声をあげ、勢いよく教室に入ってきたのはエミリアの兄であるアルベルトだった。
「アルベルト騒々しい、一体なにがあった?」
「なにがあったじゃないだろ!こっちの授業にこないと思ったら聖女と授業うけてるって聞いてだな……!」
「言ってなかったか?」
「きいてねーーーわ!!」
「お兄様落ち着いてください!殿下の前ですのよ!」
「は?」
「あ」
いつものように慌ただしい兄を鎮めようとエミリアは声をかけてしまった。問題はお兄様と言ってしまったことだ。
「お兄様って、俺はお前の兄じゃねぇ!」
「えっと、その、エ、エミリア様のお兄様と言おうと!」
「なんだそりゃ!てかあんた、またうちの妹に何かしたそうだな…今度ばかりは許さねぇ、父上にも話してやる!」
「カスターニャ公爵にはもう伝えているぞ?」
「……は?!」
「なんなら許しももらっている。何も聞かされてないのか?」
「うそだろ!あの父上だぞ?」
「アルベルト様のことです、聞かされても納得いかないと聖女様に向かっていったと思いますわ」
声をかけたのは、先程フェリシアを連れて行ったカリーナだった。
「カリーナ!会いたかった!」
「公で抱きつこうとしないでください」
「公でなければいいんだな?」
「アルベルト様、黙っていてください」
昔は内気で発言も控えめだったカリーナだったが、エミリアとのお茶会をきっかけに変わっていった。
「こ、このたびはお招きいただきありがとうございますっ」
硬い表情でカスターニャ公爵家にやってきたのは、アルベルトの婚約者であるカリーナ・クロッカスだった。
アレンと会ったあと、脱悪役令嬢を目指した。
記憶を思い出してから屋敷に戻ると、使用人がみんなエミリアに気を使い、怯えていることがすぐにわかった。
癇癪をおこし、酷いときは解雇までしてしまう。そんな子絶対嫌だわ。エミリアも心のなかで凄く理解してしまった。
すごくいい子、悪いことなんてお嬢様がするはずないと思ってもらうため。まずは屋敷の者たちと良い関係を……。
エミリアは断罪がすごく怖かった。
絵本で読んだことがある。悪しきものには断罪を……!と書かれ悪者がぐさっと倒される……。
兄がふざけてエミリアの本に混ぜたらしいが、それはもう泣いた。そしてこっぴどく父と母にアルベルトは怒られたのだ。
断罪なんて嫌!アレン様と結婚できないのだって…
悩みに悩み、エミリアが相談したのはアルベルトだった。
「どういう心境の変化……まぁいい方向にいくならいいか」
「どうしたらいいのか…」
「使用人たちにはエミリアの行動が見れるから変わっていくのがわかるだろうけどな………問題は世間の評判だな」
「もしや………」
「ははは、まぁ良い噂はないな」
「ど、どうしたら………」
「まぁいきなり大きいとこだと難しいからお茶会招いて知っていけばいいんじゃないか?」
「お茶会……」
「カリーナ嬢と試しにどうだ?伯爵家だから公爵家のお誘いは断れないし、俺の婚約者だしな」
「それは私とのお茶会が断れるようなら断りたいと皆が思っている……ということでしょうか??」
「……はは、まぁ、頑張れ」
「……………」
という流れから本日を迎えたのだった。
あわよくば友だちに………
(友達はいいぞ!俺とアレンみたいにな!)
とドヤ顔で言った兄の顔を浮かび、エミリアは少しばかり腹がたった。それが顔に出たのか、カリーナはビクッとした。
「ひっ」
「は!も、申し訳ございません、少し考え事を……」
「はい………」
「そんな緊張しないでください、今日は女子会です!」
「じょ、じょしかい??」
「女の子同士楽しく話す、だめでしょうか」
「いえ、その…カスターニャ様とわ、私なんかがうまくしゃべれるかどうか………」
「どうぞエミリアと呼んでください」
「そんな恐れ多い!」
「同じ年の女の子と仲良くなりたいのです!お兄様の婚約者でもありますし」
「アルベルト様の婚約者………」
カリーナの顔は分かりやすいぐらい真っ赤だった。
「もしかして………お兄様を慕っておりますか?」
「っ!!」
もっと真っ赤になってしまった。
「あの兄を………顔をいいかと思いますがあの性格ですよ?」
「いえ、カスターニャ様よりは………」
「え?」
「あ、いえ!!!なんでもありません!!!」
意外と思ったとこを言うタイプだった。
「そ、その、アルベルト様は顔立ちも凄く整っていて………性格も強気なところが私にとっては良いといいますか………」
「バランスが良い??」
「そうです!私が内気なので……アルベルト様の何でも口に出来てしまうところはすごいと思ってます」
「お兄様の欠点が魅力的に………」
「ですが私といるとアルベルト様はつまらなそうで…申し訳なく思ってます」
「………申し訳なく思うなら変わらなければと私は思います」
「え?」
「先日殿下とお会いして……その………私も…………」
「…まぁ!なるほど!」
「私は今のままではダメだと思いました、なので変わろうと思っております。本日のお茶会もそのような目的でひらきました、その、申し訳ありません……」
「あ、いえ!謝らないでください!最初は怖かったですが今のカスターニャ様は凄く可愛らしいです!!」
「結構ズバッといいますのね」
「ひぇ!も、申し訳ありません…!」
「………あはは!カリーナ様とお呼びしても??」
「も、もちろんです!」
「私のこともどうぞエミリアと」
「……エミリア様!」
「嬉しいですわ、でもそんなに何でも言えてしまうのですからお兄様の前でも堂々としていればいいのに」
「それは、その………アルベルト様がかっこよすぎて、顔を見ると緊張してお話できなくて………」
「………だそうですわよ!お兄様!!」
「「えっ?!!」」
がさっと木の陰からあらわれたのはアルベルトだった
「よく分かったな」
「い、いつから」
「カリーナ様がお兄様を褒めてるあたりからですわね」
「ほとんど聞かれてるじゃないですか!!」
ちょいちょいとエミリアはカリーナを手招きした。そして耳元で
「恋する者同士、お互いに頑張りましょうね」
二人からは笑顔がこぼれた。
こうしてカリーナも変わっていき、今では誰にも怯えず、ビシッと言ってしまうカリーナが誕生した。
「殿下、このことは私からアルベルト様に伝えておきます、よろしいでしょうか?」
「ああ、好きにしろ」
「ま、待てアレン!聖女と一緒に授業を受ける気か!」
「まぁ監視役というやつだ、ほら、皆が注目している、とっとといけ」
「おいアレン!それが友達に対する態度か!」
「はいはい、行きますよアルベルト様」
「カリーナは誰の味方だ?!」
「エミリア様です」
「頼もしいな」
アルベルトの一騒動を、エミリアも、もちろんフェリシアもただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「…………」
「カリーナ様みてください、お兄様があなたの笑顔に見惚れてます」
「なっ!!!そ、そんなこと!!」
「そんなことないのですかお兄様?何でも言えるお兄様が素敵だとカリーナ様が言ってましたのに?」
「エミリア様!!」
「ふふ、お兄様には傲慢と言われたし、カリーナ様には怖いと言われたので、ちょっとした仕返しですわ」